オピニオン


◆2024年4月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

日本経済の虚実

三好康昭

(1)株価の上昇

34、日経平均株価が史上最高値の4万円の大台を超えました。また、今年の春闘の大企業の平均賃上げ率は5.3%アップ。これを受け、日銀は319、10年以上続いた異次元の金融緩和政策を転換しました。こうしてみると、日本経済はコロナ禍から立ち直り、景気が回復しているかのように見えます。

(2)生活実感との乖離

しかし、わたしたちの生活の実際はどうでしょう。物価の上昇は止む気配がなく、実質賃金は今年2月まで23ヵ月連続して下落し、家計は消費を切り詰めています。年金は実質目減り。介護保険料などの負担ばかり増えています。株価の上昇とか賃金アップとかいっても、私たちの生活実感とはかけはなれています。

(3)日本経済の停滞

日本の実質経済成長率はここ20年の平均で0.7%でした。その結果GDPはドイツに抜かれ世界4位に後退。30年前には世界のGDPの18%を占めていましたが、今は4%です。日本の経済力はここ30年の間停滞したままです。

(4) 経済力は落ちているのになぜ株価が上がるのか

私は素人判断でこう考えます。第一に株価の高騰は人為的要因によるものです。株価を引き上げているのは外国人投資家の株買いですが、円安によって日本の銘柄は安くなり買いやすくなっています。さらに、日銀が株価を買い支えています。日銀のETFという投資信託の額は37兆円にのぼり、日銀は日本で最大の株主です。また、日銀の金融緩和によって余った資金が株の購入にまわり、株価を押し上げました。

第二に、企業は収益を社員よりも株主へ多く分配してきました。大企業は失われた30年の間、粗収益をまず内部留保に回しました。次に、株主に配当しました。これによって自社の株価は上がります。最後に残った部分を人件費に充てます。人件費は一番後回し、ここをカットすることが企業の生きのこり戦略になりました。その結果非正規雇用がどんどん増え、労働者への収益の分配率はここ20年で70%台から60%台に下がりました。こうして、賃金が上がらない一方、株価は上昇したのです。

今年、大企業の賃上げは高水準でした。政府・日銀・経団連の圧力を受け、大企業の経営者がこれまで内部留保に貯めていたお金を、いくらか人件費に回した結果です。今年の大幅な賃上げは、裏から言えば、これまでいかに労働者に分配してこなかったか、ということを示すものです。日本の賃金が長期にわたって伸び悩み、そのため個人消費が増えず、GDPが停滞したのはこのためです。今年の春闘は、政府や日銀など外圧による賃上げでした。来年の賃上げは、非正規労働者を含めた労働者自身の力によって労働分配率を高めていかなくてはならない、と思います。以上です。

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◆2024年3月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

抑止論は破綻する      

三好康昭

(1) 9条か安保条約か

戦後78年、日本は戦争をしなかったし、戦争に巻き込まれることもなかった。私たちは、憲法9条が戦争を放棄し非武装を宣言したから、平和が守られてきた、と考えています。ところが、憲法を変えようとしている人たちは、日米安全保障条約による米軍の軍事力によって戦争が避けられた、と主張する。現在は米軍に加えて自衛隊の力によって敵の攻撃意図を封じている、といいます。

敵と想定しているのは中国と北朝鮮です。この両国の軍事的脅威が高まっているので、こちらも負けずに軍事力を強化して抑止力を高めなくてはならない。自衛隊も政府もこの抑止論に立って、軍事力の大幅な増強に躍起になっています。

 

(2)抑止論は破綻する

果たして、軍事力を強化すれば日本の安全が保障されるのでしょうか。むしろ、軍事的緊張をたかめ、戦争を引きおこす要因となるのではないか。歴史を振り返れば、抑止論は失敗の連続でした。

太平洋戦争は日本がアメリカとの戦力バランスが崩れるのを恐れ、その前に先手をうってパールハーバーを攻撃したために起きました。

(3)なゼ、抑止論は失敗するのか

なぜ、抑止は破綻するのでしょうか。第一に、抑止論は敵国を想定します。その国に対する軍事的心理的な敵対心、敵愾心をどんどん煽ります。第二に、想定国も負けずに軍事力を強化するから、際限のない軍拡競争に陥ります。このゲームは相互の不信と緊張を極度に高め、やがて破綻し軍事的衝突になることを歴史が教えています。

抑止論が破綻するのは、敵国の軍事力しか眼中になく、敵国の意思に働きかけ相手の不信と警戒を取り除く対話と安心供与がないためです。

 

(4)9条は最大の安心供与

日本は憲法9条で軍隊を持たない、戦争はしない、と宣言しました。これ以上に相手国に安心・安全を与える保証はありません。戦後78年間、日本は敵国を持たなかった。この間平和が保たれたのは、安保条約があったからではなく、憲法9条があったからです。

今、改憲勢力は9条を変えて、アメリカ軍と一体となって軍事力で敵国の攻撃を抑止すると叫んでいます。しかし、抑止論は必ず破綻します。9条こそが平和の砦です。力を合わせて9条を守り、守らせましょう。

(以上)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。その内容を整理し、まとめました。その6

新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その6

23.9.23 三好康昭

(3)その他

➀司法が政府の施策を追認する判決を多発し、行政府に対するコントロールを事実上放棄している。

典型的なのは辺野古基地建設に反対して沖縄県が提訴した事件で、司法はことごとく国の言い分を認め、沖縄県の訴えを退けた。民意も自治も顧みられることはなかった。

2017年に野党の臨時国会召集要求を無視した内閣にたいする賠償請求に対して、最か高裁は議員個人の請求権を認めず、政府の反憲法的な運用に有効な歯止めをかけなかった。(2023.9.12)

➜最高裁が「憲法の番人」の役割を放棄し、立憲主義を有名無実化している。

➁教育の統制、教科書の検閲

教科書に政府見解を記述させる一方で、教科書から従軍慰安婦の記述を削除させた。教科書検定を通して、ときの政府に都合の良い教育を行わせるものだ。また。朝鮮人学校を教育無償化の対象から外すなど、露骨な差別政策も安倍内閣から始まった。

➂歴史修正主義への傾斜

関東大震災における朝鮮人虐殺を否認し、アジア・太平洋戦争における「従軍慰安婦」の存在を認めない。他方で、「教育勅語」を教育資料として利用することは妨げない。一貫しているのは、戦前の「負の歴史」をあいまいにし、近代化の成功体験を国民共有の意識に据えようとするナショナリズムの幻想だ。

 

〈終わりに―これから〉

「軍事化」が進み、社会における軍事的価値の比重が高まるにつれ、

➀人権の価値が下がる。表現の自由が容易に規制される。

➁民意が安全保障の名で無視・軽視される。辺野古基地建設、南西諸島の軍事要塞化。

➂個人よりも家族や国家など共同体に重きが置かれる。

➃排外的な差別意識が高まる。歴史修正主義が強まる。

(以上)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。その内容を整理し、まとめました。その5

 新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その5

【Ⅲ】軍事優先の統治体制づくり

(1)軍事施設と情報の機密化

➀2013年、特定秘密保護法制定…防衛や外交にかかわる情報を機密指定し、漏洩と漏洩の教唆を厳し

く罰する。何が機密情報かは半永久的に国民に知らされない。

➁2021年、土地利用規制法制定…基地や原発など重要施設の周辺の土地取引を規制し、それら施設の機能を阻害する行為を禁止する。

 

(2)治安・公安体制の強化

➀ 2017年、共謀罪法を制定… 実行に着手していない予備段階の打ち合わせを犯罪に問える。盗聴を利用することによって、広範な摘発が可能になる。

➁公安・警察官僚が内閣府の中枢を占める。

2012年から9年間、内閣官房副長官を務め、高級官僚の統制や学術会議・会員の任命拒否を主導した杉田和博氏は典型的な警察・公安官僚。現官房副長官の栗生俊一氏も警察官僚である。

➂表現の自由に対する規制が強まる。

2019年7月、札幌市で選挙演説中の安倍首相に「安倍止めろ」のヤジを飛ばした市民を警察官が法令の根拠なく排除。地裁・高裁で警察官の違法性が認定される。その後、安倍の銃撃死や岸田首相への傷害未遂事件があり、警備体制が一層強化された。

他方では、岐阜県大垣市で中電の風力発電建設に反対する市民の情報を警察が業者に通報し、市民活動を抑圧する事件も起きた。

➃メディアへの規制を強める。(第二次安倍政権成立後~)

・2014年1月、NHKの会長に籾井勝人氏就任。就任会見で「政府が右というものを左 というわけにはいかない。」と発言し批判を受ける。

・2014年の衆議院選を前に、自民党は在京テレビ局に「選挙期間における放送の公平中立」を求める文書を送る。←安倍首相が、出演した番組中の街頭インタビューに不快感を示したため。

・2015年5月、高市総務大臣が国会で放送法4条の新解釈を述べる。➜放送事業者の番組全体ではなく、「一つの番組でも政治的に極端に偏っているときは」電波停止処分もありうる。

                                                               (つづく)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。その内容を整理し、まとめました。その4

新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その4

23.9.23 三好康昭

【Ⅱ】軍事関係の予算、法整備

(1)軍事費の倍増

岸田政権は防衛費を5年間でGDPの2%に倍増するとして、23~27年で総額43兆円の防衛費を確保することにした。初年度の23年度は前年の5.4兆円から26%増の6.8兆円、24年度の概算要求ではさらに13%増の7.7兆円の予算を盛り込んだ。

注意すべきは、43億円とは別に「後年度負担」がこの期間に16.5兆円計上されていることである。この『ローン払い』と合わせると、5年間で60兆円もの巨額な防衛費が支出される。

限られた予算のなかで、防衛費を突出して増額するためには相当な無理をしなければならない。政府は防衛力強化資金を設け、国有地売却金、外為資金など特別会計からの繰入金、コロナ基金の国庫返納金、などありとあらゆる余剰金をここに入れ、防衛費の財源とする。しかし、恒常的にGDPの2%=年11兆円を確保するためには、こういった一時金ではなく、増税か国債に頼らざるを得ない。社会保障費など他の予算項目も当然圧縮される。身の丈を超える防衛支出は日本の財政をさらに悪化し、予算配分をいびつなものにし、国民負担を強め生活を破壊する。そもそも、軍事予算は、経済的には再生産外の消費であり、国内経済への波及効果はなく、国民経済にとっては無駄遣いの筆頭である。(山田博文、群馬大学名誉教授)

 

(2)軍需産業保護法と武器輸出の拡大

・22.6/7防衛産業保護法が成立…自衛隊の任務に不可欠な装備品を作る企業に、サイバー攻撃対策などの経費を国が負担する。経営難の企業の製造施設を国が買い取る。装備品の輸出を後押しするために、海外仕様に変更する費用を国が助成する。

・輸出拡大のため、武器輸出の条件を緩和する方針である。殺傷能力のある兵器の輸出を認め、他国と共同開発した戦闘機の輸出を認める方針で調整を進めている。防衛産業の販路拡大のためである。

 

(3) 軍・産・学の共同の推進

➀2020年、軍事研究に消極的な学術会議の改組を狙い、6人の会員の任命を拒否した。法人化をちらつかせながら、政府の監督・介入を強める学術会議法改正案の成立を目論んでいる。

➁2022年、経済安全保障推進法を制定し、半導体や人工知能など先端技術の研究開発を官民一体で行い、軍事利用への転換を図る仕組みを作った。

 (つづく)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。その内容を整理し、まとめました。その3

新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その3

                                                     23.9.23 三好康昭

 

(2)日米同盟の深化

安保三文書により、日米両軍の「一体化、融合」がさらに強まった。

➀統合防空ミサイル防衛構想(IAMD)の一体化

ⅰ)アメリカのIAMD(2017年、米統合参謀本部作成)

・攻撃目標は敵基地だけでなく、指揮統制機能、重要インフラを含む。

・「敵の飛行機やミサイルを離陸・発射の前と発射後の双方において破壊する。」

ⅱ)「国家安全保障戦略」に明記された「統合防空ミサイル防衛能力」

相手からの我が国に対するミサイル攻撃については、まず、…公海及び我が国の領域の上空で、わが国に飛来するミサイルを迎撃する。その上で、…相手の領域において、有効な反撃を加える能力として、スタンド・オフ防衛能力等を活用する。  (同戦略p18)

➁基地の共同使用と共同演習の日常化-日米に韓国やオーストラリアも加えて-

➂同盟調整メカニズム(ACM)の調整機能の強化…ACMとは、米軍の横田基地内に置かれている日米合同の軍事指揮機構のこと。日本有事と海外有事における日米両軍の共同作戦計画を練る。

 

(3)日米同盟の将来

日米両軍の緊密な一体化が進んでいるが、戦闘における指揮権は今のところ別々である。今後、有事においては、韓国がそうであるように、米軍が統一指揮権を執ることになるのではないか。そうなれば、名実ともに日米同盟軍として作戦と戦闘に当たることになる。2024年に自衛隊の統合司令部が発足する。日米両軍の指揮系統の一元化に向けた動きとみられる。

 (つづく)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。整理し、まとめました。その2

新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その2

23.9.23 三好康昭

22.12.16の「安保三文書」は、「反撃能力」と言い換え、公然と「敵基地を攻撃できる」戦力の保有を宣言した。「国家安全保障戦略」は言う。

この反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、……我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力をいう。

つまり、日本へミサイル等による攻撃が行われたときに、その国の基地や司令部を破壊する長射程のミサイルを保有し、そうした反撃能力を持つことが相手国からの攻撃を抑止するという理屈だ。しかし反撃能力とはいえ、相手国を攻撃できる兵器を持つことは『専守防衛』という自衛力の限界を超えることにならないか。「国家安全保障戦略」はこう説明する。

この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されない

2015年に合法化した集団的自衛権によって、日本への武力攻撃が発生していなくても、アメリカと戦争している国に対して、日本は武力攻撃できる。相手国にとっては「先制攻撃」である。これをもって『専守防衛』の考えを変更するものではない、というのは詭弁である。

こうして、2015年当時は権利概念に止まった「集団的自衛権」が、実際に他国を攻撃出来る兵力を持つことによって、日米同盟を軍事的に支える柱となった。

  (つづく)

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◆2023年9月19日で、「新安保法」(戦争法)強行採決から8年になります。この間、戦争法を実質化するための政策が進められてきました。整理し、まとめました。その1

新安保法制(戦争法)強行採決から8年―その1

23.9.23 三好康昭

 (はじめに)

2015年9月19日に集団的自衛権の合法化を含む新安保法制(戦争法)が強行採決された。その時から8年、この間に日本の防衛・安全保障体制はどう変化したか、また、軍事に関連する分野で法制度がどのように作られ整備されてきたか、を跡付けてみたい。

 

】「集団的自衛権」の実質化

 集団的自衛権とは、日本が攻撃を受けていない場合でも、同盟国であるアメリカが第三国と戦争になり、日本に重大な影響があるときは、アメリカとともに第三国と戦う権利を意味する。2015年の新安保法制は、この権利を自衛隊が行使することを合法化したものだが、この段階では自衛隊は第三国と戦うだけの戦力を持っていなかった。権利は保有したが、行使するだけの力はなかった。当時、例示されていたのはホルムズ海峡の機雷撤去だった。

 

(1)18年大綱」から「22安保三文書」へ

2016年3/29に安保法制が施行された後、自衛隊がまず行った活動は「米艦防護」だった。共同演習中の米艦を防護し、仮に米艦が攻撃を受けたときは相手国に反撃する、というもの。個別的自衛権の行使としても説明できる限定された局面での武力行使を想定していた。その後、自衛隊は、北朝鮮・中国を想定して攻撃的な兵器の開発・保有に本格的に取り組む。

2018年「防衛計画の大綱」は、以下の攻撃的兵器を保有することにした。

ⅰ)空母の保有…護衛艦「いずも」を空母化し、垂直離着陸が可能なF35Bを搭載する。

ⅱ)「スタンド・オフ防衛能力」をもつ…相手の射程外から攻撃できる長射程ミサイル、高速滑空弾を開発する。→JASSM(ジャズム)、LRASM(ロラズム)は射程900キロでF15やF2戦闘機に搭載する。

ⅲ)巡航ミサイルの保有…航続距離を延長できる戦闘機と超射程の巡航ミサイルの組み合わせは、「長距離戦略爆撃」に近い。

☞「18大綱」は、これらの兵器は尖閣など島嶼防衛の目的と説明していたが、事実上は相手国本土を標的とする「敵基地攻撃」兵器だった。

(つづく)

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◆12月19日(火)、伊東市観光会館前で行われたスタンディン グのスピーチ原稿を載せます。

9条の現実性

三好康昭

憲法9条は、日本はもう戦争をしない、他国との争いを武力による脅しや武力の行使によって解決することはしない、と宣言しています。この規定を理想論だ、現実はこんなに甘くはない、といって批判・嘲笑する人がたくさんいます。その筆頭が岸田首相で、ウクライナの現実を見ろ、軍事力によってしか国は守れない、と言って軍事費を大幅に増やしました。

しかし、ロシアがウクライナに軍事侵攻して2年、何千という兵士をうしないながらロシアは武力によって争いを解決できたでしょうか。イスラエルはどうか。ガザに無差別攻撃をしかけ、幼い子どもや妊婦を含む何千・何万という罪のない人たちを殺戮しています。この非人道的な皆殺し作戦によって、パレスチナ問題を解決できるのか。ハマスの戦闘員を根絶やしにできたとしても、必ず次の世代のハマスを生みます。武力によって一時的には敵を封じ込めることはできたとしても、長期的には果てしない憎悪の連鎖を生むだけです。

ロシア人とウクライナ人は戦争が終わったあと、何世代にもわたって敵対心と相互不信を抱えて向き合わなければなりません。私たちがウクライナ戦争から学ぶべきことは、武力によっては、国際紛争は決して解決しないこと、殺し合いからは永続的な平和は生まれないということです。憲法前文が恒久平和を願い、9条で国際紛争を解決するために軍事力には訴えない、と宣言したのはこのような歴史的事実に学んだからです。争いを解決するには相互不信ではなく、相互の信頼を積み上げていく努力しかない、と教えているのです。

9条の戦争放棄を理想論と非難する人がいますが、ウクライナやガザの悲劇を見れば、9条こそが賢明な現実的選択であることがわかります。私たちはあくまでこの旗のもとに反戦、非戦の声をあげ続けます。ともに頑張りましょう。

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◆10月19日の伊東市観光会館前でのスタンディン グのために用意したスピー予定原稿を載せます。

 憲法が眼中にない岸田

(1)ミリー議長の退任あいさつ

アメリカ軍の最高司令官は大統領ですが、軍人のトップは統合参謀本部議長です。先ごろ、ミリー議長が退任の挨拶をしました。彼はこう述べました。

我々は国家に対して忠誠を誓うのではない。われわれは憲法に誓って国を守り抜くことを誓う。憲法こそが軍人に奉仕の目的を与える。

合衆国憲法こそが忠誠の対象だ、と彼は言ったのです。

アメリカは人種も宗教も多様な国です。政治的な対立も激しい。そんなアメリカを一つにまとめ、人々の心をつなぐ絆となっているのが憲法です。アメリカの公人にとって、憲法こそが忠誠の対象です。

(2)安倍の憲法観

翻って日本はどうか。安倍元首相は事あるごとに日本国憲法を侮辱した。みっともない憲法だとののしった。しかし、彼が憲法改正に執念を燃やしヒートアップするほど、国民の反感・反発も強まり改憲の企ては失敗した。

(3)憲法破壊の岸田

岸田首相はどうか。彼は安倍ほど憲法への敵愾心は見せない。しかし、やっていることは安倍以上に憲法を破壊している。軍事費を一挙に二倍にし、敵基地を攻撃できる長距離ミサイルを保有し、南西諸島の要塞化している。彼の頭には憲法はない。口では『平和国家として専守防衛の方針は変わらない」とか言いながら、実際は米軍と一体となっていつでも中国を攻撃できる準備をしている。言うこととやっていることが違うのだ。辺野古基地建設もそうだ。

(4)口先だけの岸田

沖縄県民の願いを無視して、辺野古の海を埋め立て米軍の新基地建設を強行している。口では普天間基地の危険性を一日も早くなくすためだという。しかし、普天間基地の返還が決まってから30年近く、米軍に一度として飛行制限を申し入れたことがあるか。言葉よりも事実を見るべきだ。年11兆円もの軍事費を使うことが、戦力を持たないと憲法で決めた国のすることか。毎年何千億円もの米軍基地の費用を負担しながら、基地からの有害物質の垂れ流しに立ち入り調査もできない国が主権を持つ国と言えるのか。

青井未帆さんは憲法9条の一つの機能は異議を申し立てる根拠となることだ、と言っています。私たちも口先だけの岸田政権の憲法破壊を批判し異議を申し立てましょう。決してあきらめることなく行動し続けましょう。

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◆7月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのために用意したスピーの予定原稿を載せます。

維新をどう見るか

三好康昭

スタンディングが終わった後、3時から観光会館2階の第四会議室で学習会を行います。テーマは「日本維新の会をどうみるか」です。その紹介を兼ね、私も維新をどう見るか、話したいと思います。

維新の特徴の一つはその民主主義観にあると思います。選挙に勝てば何でもできると考え、反対派、少数派を徹底して攻撃する。橋下知事の標的は職員労働組合でした。選挙でどんな活動をしたか、街頭演説をしたか、投票依頼をしたか、一人一人申告させました。思想調査です。明らかな不当労働行為です。

条例を作って学校の先生を締め付けました。卒業式・入学式では教職員は起立して君が代を斉唱しなければならない。従わない教員は処分し、三度目は退職させる、というひどいものです。

橋本知事は民間人を校長に抜擢しました。その一人は、先生たちがほんとに君が代を歌っているかどうかを調べるため、口元をチッェクして回りました。思想調査ならぬ口パクパク調査です。

最近こんなことがありました。大阪府吹田市の教育委員会は今年3月、ある調査を命じました。児童・生徒がどれくらい「君が代」を暗記しているかを調べてすぐ報告するように指示しました。自民党の市会議員が教育委員会にこの調査を要求したからです。調査結果は議員に報告されました。教育基本法は教育への不当な支配を禁じています。君が代を暗記することは学習指導要領にも書かれていません。こんな調査をすること自体が思想・信条の自由を侵します。議員の求めに応じた吹田市教育委員会の鈍感さ、学校長の意識の低さ。これが橋下教育改革が教育現場にもたらした姿です。

一昨年、コロナで疲弊した学校現場から一人の校長(久保敬)が声をあげました。

「子どもたちは、テストの点によって選別される競争にさらされている。教職員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根差した働きが出来ず、…疲弊している。やりがいや使命感を奪われ、働くことの意欲さえ失いつつある。」

松井市長はこれにどう答えたか。

「疲弊してやりがいが見つけられないんやったら、違う仕事をみつけたらいい。」

これが権力万能感に染まった維新トップの感覚です。

選挙で勝てば何でもできる。これが維新の民主主義観です。選挙を通じて独裁権力を握ったあの男に似ていると思いませんか。

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◆7月2日に韮山時代劇場で、柳澤協二氏の講演会「戦争を回避するために何をなすべきか」が開かれました。講演の内容を筆記ノートをもとに紹介します。その3 (了)

(10) 地政学の終焉の時代

地政学とは地理とイオロギーによる大国の抗争状況を示す概念。

海洋国家のルール=「自由で開かれた秩序」 ⇨ 内陸国(ロシア、ドイツなど)反発

封じ込め                    ⇨    〃   生存権を主張

戦争を避けるためには、封じ込め = 強制よりも相手国の不満解消に努めること。

(11)日本流の戦い方

島国であり、抵抗する限り敗北しない。しかし、こちらから他国を攻撃するには適さ ない。➜専守防衛と戦争回避。

➜相手国に恐怖を口実とした戦争の余地をなくす。それが『専守防衛』の戦略。

(12)柳澤氏の戦争回避の原点

・イラク戦争のトラウマ…多数の自殺者、遺族に対して何といったらいいか。他者に対しては、臆病であることが必要。

・国家の価値と個人の価値

命の値段は国家が、プーチンが決めるものではない。本人が決めるもの。

・防げる戦争は無駄な戦争だ。無駄に死なせてはならない。

(13)非戦の戦争論

抑止戦略によって戦争の不安は無くならない。抑止が効いたかどうかは戦争が始まったとき、抑止が失敗したことがわかるだけ。

戦争や紛争が絶えない現実から出発しながらも、理想を諦めない。「いずれの国も自国のことのみに専念してはならない」という政治道徳を守り抜きたい。

(14)台湾問題を戦争にしないために

抑止と安心供与のバランスをとること。

抑止(=deterrence)とは恐怖を与えて攻撃を防ぐこと。

安心供与(=reassurance)とは戦争の動機となる利益を保証すること。

米・中・台湾が現状維持で合意することが安心供与につながる。

台湾有事は日本有事ではない。米軍の在日基地からの出撃は事前協議事項である。

(15)護憲が直面する現実

9条は戦後世代の成功体験としての意味があるが、若者には通じない。

「9条を守れ」ではなく、戦争を回避するためにどうしたらいいか、何をすべきかを語るべきではないか。

(以上)

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◆7月2日に韮山時代劇場で、柳澤協二氏の講演会「戦争を回避するために何をなすべきか」が開かれました。講演の内容を筆記ノートをもとに紹介します。その2

(5)戦争のリアリティとは

アメリカのCSISは台湾有事のシナリオを次のように描く。

中国の台湾侵攻は失敗する。が日米双方に甚大な被害が発生する。

〔勝利のための条件〕

・米軍の即時参戦 ・再日米軍基地の使用 ・中国本土は攻撃しない

元海兵隊員の言葉…抑止力(の拠点)こそが真っ先に標的になる。

柳澤氏…参戦国の犠牲に見合うだけの成果が得られるか。これだけの犠牲を覚悟して、それでも参戦するのか。

 

(6)最前線の南西諸島

有事の十分前に住民避難させる、という。しかし、現実的な想定か。

12式ミサイルの射程を延伸すれば、敵の攻撃の標的となる。犠牲になるのは住民。

住民の生命は国の専権ではない。有事にしない外交こそを。

 

(7)ウクライナ戦争はなぜ防げなかったか

ⅰ)大国(ロシア)の戦争心理、楽観視。外交を軽視。

ⅱ)瀬戸際外交の不在…西側ではロシアの本気度を疑っていた。そのため、脅しと妥  協の駆け引きがなかった。

ⅲ)バイデンが早々に米軍派遣を否定した➜世界戦争のリスクを恐れた。

日本の防衛・外交筋が言う「米軍が守ってくれる」というのは、現実には世界戦争を招来するということ。

 

(8)ウクライナ戦争をどう終わらせるか 

西側諸国がウクライナへの武器供与をやめれば戦争は終わる。しかし、それは「公正な」結果ではない。公正な秩序観が求められる。停戦イコール平和ではない。

 

(9)世界の構造変化と日本

◎今や、「大国の抑止力に依存できない世界」になっている。大国の対立はむしろ戦争の要因になっている。

日本の防衛政策は「日米安保で安心」というもの。しかし、日米安保の強化が日米一体化に進み、アメリカの戦争-に日本が自動的に参戦する仕組みとなっている。いわゆる「同盟のジレンマ」に陥っている。

◎大国は価値観外交に固執しているが、グローバルサウスの中級国は実利を取る。日本はどちらの声を聞くのか。

(つづく)

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◆7月2日に韮山時代劇場で、柳澤協二氏の講演会「戦争を回避するために何をなすべきか」が開かれました。講演の内容を筆記ノートをもとに紹介します。その1

22.7.2              柳澤協二氏の講演の紹介-ノートから-

三好康昭

はじめに

柳澤さん曰く「戦争という形でなく争いを解決する方法はないのか」

安保三文書の感想‥違和感、やり過ぎ感。

岸田首相はペーパーを読み上げるだけ。自分の頭で考えていない。

 

(1)安保三文書の論理

➀ロシアの次は中国

➁安保の目標:「自由で開かれた国際秩序」を維持すること。中国はこれに挑戦している。

➂目標の達成手段…ミサイル分野、宇宙、サイバー分野で中国に対抗できる戦力を持つ。そのために、5年以内に防衛費を倍増する。

➃新たな施策として打ち出しているのが、

ⅰ)民間施設(港湾、空港など)の利活用、

ⅱ)防衛産業の保護育成。

ⅲ)加えて、サイバー戦の一環として偽情報対処の必要(←SNS監視)。

ⅳ)住民避難の記述が加わる。

 

(2)三文書の幻想と願望

・守るべき「経済的繁栄」というが→経済大国の幻想を追っているだけ。

・「尊敬される国」でありたい、というが→どうやって? 自立支援のODAから武器供与を含むOSAへ。これで「尊敬される国」となるのか。むしろ国益重視への転換。

 

(3)「反撃能力」について

飛んでくるミサイルを打ち落とせないので、発射する前に敵基地を叩く戦術。

➜先制攻撃にならないか。ミサイルの行き先は発射されてからでないとわからない。

➜反撃すれば相手国から更なる攻撃をうける。抑止力にはならない。

 

(4)世論はなぜ支持するのか

今のウクライナ情勢を見て、戦争になるかもしれない、攻撃されるかもしれない。それゆえ、戦争に備えなくてはならないというのが世論の多数。「戦争に備える」とはどういうことか。日本は戦争に耐えられるか。島国で逃げようがない。国の為に命を捨てる若者は少ない。被害と覚悟を誰も語らない。

( 続く)

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◆6月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ原稿を載せます。

23.6.19

国家あっての人権か

三好康昭

(1)鈴木宗男議員の発言

入管難民法の改正案が参議院法務委員会で審議されていたときのことです。鈴木宗男委員長、例のムネオハウスの鈴木宗男ですが、彼は法案に反対する野党議員に向かって、こういいました。難民認定を繰り返す外国人の人権よりも、日本の国益が大事だ、国家あってこその人権だ、と。個人の命よりも国家の利益の方が大事だ、と言い放つたのです。

(2)個人主義的憲法

日本国憲法は個人の掛け替えのない価値を人権と名付け、国家といえどもこれを侵すことはできない、と定めました。この権利は外国人にも可能な限り適用されると最高裁は言っています。こうした人権尊重の思想は、同性婚を認めていないのは憲法24条に違反するという判決が相次いでいることにも表れています。時代の流れは、個人の人権を重く見る社会の実現にむけて、ゆっくりと動いていると言っていいと思います。

(3)軍事が通れば人権が引っ込む

しかし、ことが安全保障、軍事の問題となると、事態は逆転します。第二次安倍政権以来、安全保障を名として個人の自由を制限する法律が次々に作られました。

2013年特定秘密保護法、2017年共謀罪法、2021年土地利用等規制法…

知る権利が、内心の自由が、土地所有権が、安全保障を理由に規制されました。それだけではありません。横田基地や沖縄の米軍基地周辺の井戸や浄水場から発がん性物質のピーファスが基準値以上に検出されているにもかかわらず米軍基地への立ち入り検査もできません。住民の命も、自治体の権利も、国の主権さえも、米軍の前には無力です。岸田政権は軍事予算を倍増するため、軍拡財源法を成立させました。アメリカの軍需産業から旧式の武器を爆買いするための財布を作る法律です。そのお金でトマホークを何発購入するかと問われて、岸田首相は軍事機密だから言えない、と答弁を拒否しました。戦争に進む過程では、国会も、個人の人権も沈黙させられます。ここでは、鈴木宗男が言うように、国家あっての人権なのです。軍事が通れば道理も人権も引っ込みます。

戦争は国家の名による殺し合いであり、個人の人権は戦場でも銃後でも圧殺されます。日本はその道を歩み始めています。食い止めるのは戦時でいつも犠牲にされる私たち庶民の力しかありません。みなさん、力を合わせ軍事化にストップをかけましょう。

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◆5月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ原稿を載せます。

23.5.19

ヒロシマを政治ショーの舞台にするな

三好康昭

ヒロシマサミットに集う国は、米・英・ドイツ・フランス・イタリア・カナダの6か国+日本の7か国です。西側資本主義国の集まりです。今回のサミットの目的はロシア包囲網の確認と強化です。かつてのメンバー=ロシアが排除され、代わってウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで参加します。ウクライナへの武器供与と経済援助に西側諸国が一致して協力することを約束し、長期戦に備えるでしょう。この戦争は矛盾に満ちています。ウクライナがロシア兵を国境の外に押し返せば、プーチンが核兵器を使う確率が高くなります。逆にウクライナが敗れロシアが支配すれば、今度はロシア対NATOの戦争の危険が高まります。西側諸国にとっては、現在のような膠着状態が続きロシアがさらに疲弊することが一番望ましいことです。その間、ウクライナ住民と両国の兵士の犠牲者はさらにさらに増え続けます。戦争の一方の当事者と言っていいNATOの主要国が一堂に集まるこの機会を停戦に向けた第一歩とすることが、ヒロシマサミットの意義でなくてはなりません。

今回の会議にはインドやブラジルの首脳が招かれています。いわゆるグローバルサウスの指導者です。その意図は明白です。これらの国を味方に引き込んで、中・ロに対して力関係で優位に立とうとするものです。その際、議長国である日本が使うキーワードが「法の支配」という言葉です。力による国際秩序の変更を認めないという原則で結束しようという意図です。「法の支配」、言葉としては良い。しかし、問題はそれを唱えるのは誰か、ということです。岸田さん、あなたは「法の支配」を世界に向かって訴える資格がありますか、と言いたい。最高の法である憲法を無視し、専守防衛を否定し、世界第三位の軍事大国に舵を切ったあなたこそ、「法の支配」を逸脱した張本人ではありませんか。都合のいい時だけ「法の支配」を持ち出し、さも自分が普遍的正義の側にたっているかのように振る舞うことは止めて欲しい。ヒロシマを舞台に、核兵器のない世界の実現を綺麗ごととして語る欺瞞は止めて欲しい。私は言いたい。

権力者を縛る「法の支配」という政治原則を自分の都合に合わせて使うな!

ヒロシマを政治ショーの舞台に使うな!

被爆者を冒涜するな!

以上です。

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◆4月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ原稿を載せます。

岸田首相の憲法観

三好康昭

(1)安倍と岸田の憲法観

安倍晋三は憲法を敵視しました。みっともない憲法だ、と侮蔑しました。岸田首相はあからさまには憲法を敵視しません。尊重するかと言えば、尊重もしません。彼の眼中には憲法はありません。

(2)安保三文書

昨年12月に決めた安保三文書は日本の防衛政策を根本的に変えました。自衛隊が、敵国にミサイルを撃ち込み基地や司令部を破壊できることにしました。しかし、国家安全保障戦略は言います。「わが国は、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない」と。軍事費が世界第三位の年11兆円となっても、軍事大国にはならない、とはどういうことでしょう。射程1600キロでもっぱら攻撃用にのみ使うトマホークを400発も備えて、どうして相手国に脅威を与えない、と言えるのでしょうか。相手国の基地はもちろん司令部までも攻撃できる戦力を持つのに、どうして『専守防衛に徹する』と言えるのでしょうか。言葉の意味を捻じ曲げ、それによって言葉そのものを無意味にしています。

(3)『専守防衛』の本来の意味

『専守防衛』というのは、自衛隊を憲法9条の枠内に収めるための防衛戦略でした。日本は憲法で戦力を放棄したが、自衛権は放棄していない。自衛隊は自衛のための実力組織であって、相手から攻撃を受けたとき、それを排除するためだけに武力を行使する。これが『専守防衛』の意味でした。その意味はできるだけ厳格に解釈しなければなりませんでした。海外派兵はしない。集団的自衛権は行使しない。相手国に脅威となる長距離爆撃機やミサイルは持たない、などです。この制約を突破しようとしたのが小泉政権のサマーワ派遣であり、安倍政権の集団的自衛権の容認でした。それでも、彼らは憲法9条の縛りを意識していたので、それを潜り抜けるために不本意ながら条件をつけたのでした。

(4)現実には現実で

岸田の場合はどうか。岸田にとって大事なのは、憲法ではなくアメリカです。アメリカの為には憲法の縛りも規範性も無視します。これが彼の言う現実主義です。彼の目に映る現実は、アメリカの利害と軍需企業を含む大企業の利害です。物価高に苦しみ、年金を切り下げられ、医療費の負担にあえぐ庶民の生活現実は目に入りません。私たちは怒りを込めて言います。「戦争への道を突き進む岸田政権は、今すぐ退陣しろ!」        以上です。

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◆2月19日に予定していた伊東市観光会館前でのスタンディングのためのスピーチ原稿を掲載します。

「作られた危機」

                              三好康昭

今の米中の軍事的な緊張を、航空自衛隊の元幹部は「作られた危機」だと言っています。今にも米中戦争が起こるかのように危機を煽っている、というのです。冷静に考えれば、中国は台湾との平和的な統一を目指しています。台湾も現状維持を望み、北京からの独立を宣言する可能性はありません。それなのに米中の軍事的な緊張を煽るのはなぜでしょうか。危機を煽ることによって、アメリカは利益を得るからです。アメリカは西太平洋における覇権国の地位を手放そうとはしません。アメリカの中国に対する軍事的優位は低下していますが、これを補うのが日本の軍事力です。日本の軍事力はアメリカにとって決定的に重要です。中国の太平洋進出の出口にあたる第一列島線上には、日本の南西諸島が飛び石のように連なっています。ここに自衛隊のミサイル基地をつくり、中国の艦艇をこの線の内側に封じ込めることが、アメリカの対中戦略の核心です。

日本は尖閣問題があるとはいえ、中国の直接の軍事的脅威はありません。それなのになぜ大軍拡に走るのでしょう。中国脅威論を唱え、長射程のミサイルを何千発も持てば、当然中国との緊張を高め、軍備拡張競争を招きます。この競争に日本が勝つ見込みはありません。国力を消耗するだけです。それでも、日本の軍拡をアメリカは歓迎します。米中の覇権争いに加担する限り、今後も日本の軍事費の膨張は続くでしょう。

この鎖を断つにはどうしたらいいでしょうか。米国と一体化して中国と対立する道を取らないことです。中国に対する立ち位置がアメリカと日本はまったく違います。第一に、中国は日本の隣国です。いざ軍事衝突が起きたときの被災はアメリカとはけた違いです。第二に、中国とは二千年のつながりがあります。漢字も、仏教も儒教も、みんな中国からはいってきました。第三に日中戦争。1937年から8年間、日本軍と中国軍は中国大陸で闘いました。日本軍兵士の死者は41万人、中国軍の死者は130万人。殺されたのは兵士だけではありません。武器を持たない厖大な数の中国人、子ども、女性、老人が殺されました。その数は何と死者1000万人、負傷者1000万人と言われます。正確な数字はわかりません。日本人の民間人も巻き添えになった人はいたでしょうが、おそらく千人単位でしょう。民間人の死者数のこの違いは何を意味しているのでしょうか。この戦争が中国への侵略戦争であったということです。80年前に中国に軍事侵略し、一千万人もの罪なき人を殺した日本は、二度と中国と戦争できないハズです。台湾有事は日本有事だとか言って、いたずらに中国の脅威を煽って軍事国家化を進めることに、道義も正義もありません。今すべきことは、日中不戦の誓いに立って、「作られた危機」の嘘を暴き、日本の軍事国家化に反対することです。そのためにともに頑張りましょう。

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◆安保3文書の中の最重要文書、「国家安全保障戦略」の要点をメモしました。参考までに掲載します。 

2022.12.16 閣議決定 「国家安全保障戦略」の内容

Ⅲ 我が国の安全保障に関する基本的な原則 (p5~6)

1  国際協調を旨とする積極的な平和主義

3  平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない。

 

Ⅳ 我が国を取り巻く安全保障環境 (p6~)

(2)中国の安全保障上の動向(P9)@ぃ

中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、…これまでにない最大の戦略的挑戦であ(る。)

 

台湾との関係については、わが国は1972年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持してきており、台湾に関する基本的立場に変更はない。

 

日朝関係については、拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて取り組んでいく。…拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ない。(p14)

 

ODAとは別に、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提供やインフラ等の整備を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける。

 

2(2)わが国の防衛体制の強化(p17~)

我が国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている。…弾道ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場合、今後、この脅威に対し、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある。

このため、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、わが国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある。

この反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐために止むをえない必要最小限度の自衛の措置として、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力をいう。

……この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないものであることは言うまでもない。

2027年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取り組みを合わせ、そのための予算水準が現在の国内総生産(GDP)の2%に達するよう、所要の措置を講ずる。

 

(以上    三好康昭)

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◆12月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング活動でのスピーチ原稿を載せます。

22.12.19  スピーチ原稿

  今は分岐点

                                三好康昭

(1)安保三文書閣議決定―米軍との一体化―

三日前の16日、政府は安保三文書の改訂版を閣議決定しました。文書の名をアメリカと同じものに変え、米戦略と全く一体化した文書にしました。中身をみると、米軍と協力して敵基地を攻撃すると書いてあります。米軍の協力を仰ぐのは、自衛隊単独では敵のミサイル基地がどこにあって、何時発射されるのか、探知できないからです。ミサイルの現在地を特定するには米軍の情報に頼るしかありません。

(2)「専守防衛」からの逸脱

『専守防衛』を掲げた日本は、これまで他国の領域内で武力行使をしませんでした。イラク戦争でサマーワに派遣された陸上自衛隊は道路や橋の復興に従事したのであって、戦闘に参加したわけではありません。しかし、敵の基地や司令部をミサイルで破壊する行為は、相手国の領域での武力行使そのものです。これをもって『専守防衛は変わらない』というのは、国民をあざむく嘘です。政府は攻撃を受けたときやり返す反撃能力だと弁解しています。これも詭弁です。敵が攻撃に着手する時点で基地を破壊することを普通は反撃とは言わない。実際は攻撃するかもしれないと判断して先制攻撃を仕掛けるわけです。

(3)実際のシナリオ

シナリオはこうです。

中国軍の台湾侵攻を阻止するため、アメリカ軍が南シナ海に入る。それを排除するため中国軍がミサイル攻撃をする。アメリカはこれに反撃して、日本の基地から中国のミサイル基地をたたく、同盟国である日本の自衛隊にも協力を要請し、両国が一体となって中国と戦端を交える。こういうシナリオです。自衛隊は米軍の要請で、米軍の指示する特定目標を攻撃するわけです。

(4)中国からの反撃

中国にとっては、日本から先制攻撃を受けたわけですから、当然日本に向けミサイルを発射して反撃する。人口稠密で日本海岸に原発が何十基とある日本は壊滅的な被害を受けるでしょう。これが敵基地攻撃のもたらす現実です。自衛隊がトマホークを何百発備えても何の抑止力にもなりません。

(5)希望の未来へ

国家安全保障戦略は最後にこう言っています。「今は分岐点だ。希望の世界に進むか、困難と不信の世界に進むか。」そうです、このような安全保障政策に転換する日本に希望の未来はない、と私は思います。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」憲法前文の精神に立ち返ることこそが希望の未来を開くものだと確信します。そのために、皆さん、大軍拡反対、戦争反対の声を、ともにあげ続けましょう。

(以上)

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◆11月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング活動でのスピーチ原稿を載せます。

2022.11.19

軍事大国化ストップ

                               三好康昭

(1)軍事費倍増

これから年末にかけて安保三文書が改定されます。焦点は二つ。一つは自衛隊が敵基地攻撃能力を保有すべきかどうか。もう一つは、そのために今の軍事費をどこまでふやすか、ということです。内閣に置かれた有識者会議では、防衛費を今の倍に、GDPの2%にすることを当然の前提とし、その財源をどうするかを議論をしています。結論ありきで、会議は軍事費倍増・敵基地攻撃能力保有に向けて政府にお墨付きを与えるためのものです。

(2)長射程ミサイル保有

しかし、何で日本がNATO並みの軍事力を持たないといけないのでしょうか。自民党の国防族は台湾有事を持ち出して、敵基地を攻撃できる射程の長いミサイルが必要だと主張しています。それも一発や二発ではなく、長期間戦えるように千発、二千発単位で必要だというのです。一体、どこの国のどんな軍事施設を標的にミサイルを撃ち込もうというのでしょうか。

(3)専守防衛からの転換

日本はこれまで、相手国の領土、領海に武力攻撃をしない、攻められたら防ぐ『専守防衛』を防衛戦略の基本としてきました。ですから、射程の長いミサイルは必要なかったし、保有もしなかった。安倍政権の時作られた2018年「防衛計画の大綱」にはスタンドオフミサイルと称して長射程ミサイルを持つと書き込まれました。建前は島嶼防衛、すなわち尖閣諸島の防衛のためでした。ところが、今は公然と敵基地や敵の司令部を攻撃する長射程のミサイルを何千発と持とうというのです。

(4)トマホーク購入

政府はアメリカに巡航ミサイル「トマホーク」の購入を打診しています。「トマホーク」は湾岸戦争やイラク戦争で使われました。命中精度が極めて高く目標物をピンポイントで攻撃できる。射程1600キロ。北朝鮮全土と中国の沿岸部の軍事施設を攻撃できます。純粋に攻撃型の兵器です。

(5)戦争する国へ

こうして『専守防衛』という日本の防衛政策の根本が変えられようとしています。ウクライナ情勢や台湾有事を口実に、日本は「戦争できる国」から「戦争する国」へと転換しようとしています。安保三文書の改訂がその突破口です。戦後77年の平和国家の歩みを逆転させようとする岸田政権の企みにストップを掛けましょう。人を殺す武器にお金を使うな、庶民の命と暮らしを守るためにお金を使え。ともに声をあげましょう。

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◆9月23日の「国葬反対集会」のスピーチに備えて用意した原稿を紹介します。

 物価高の原因はアベノミクス

                               9/22  三好康昭

今年8月の消費者物価は前の年より2.8%上昇しました。電気代は21%、都市ガスが26%、食パンが15%など、大幅なアップ。1990年以来30年ぶりの上昇率でそうです。働く人の賃金はあがらず、物価が上がるという最悪の状態です。

なぜ物価が上がるのか。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇も原因の一つです。しかし、それ以上に急激な円安があります。昨年は平均1ドル110円だったのが、今は145円。輸入品価格は32%高くなっている計算です。

なぜ、円安ドル高になるか。日米の金利差が拡大しているからです。アメリカは物価上昇を抑えるため、金利を高くし始めました。日本では黒田日銀は金融緩和策をやめることはできない。投機家は円を売ってドルを買う。円は利息がつかないが、ドルは利息がつくから。こうして円売りが進み円安となる。

円安を食い止めるには日銀が金融緩和策をやめて、金利を高くし日米の金利差を小さくしなくてはいけない。しかし、今の日銀と政府にはこれが出来ません。なぜかというと、国の借金、つまり国債発行高がコントロールできないくらい膨らんでしまっているからです。今、国債発行残高はGDPの2倍、1000兆円を超えています。国債を発行しなければ予算を組めません。歳入の34%、1/3以上を国債つまり借金で賄っています。金を貸してくれるのは誰か。日銀です。日銀は民間銀行・証券会社から大量の国債を買っています。民間に資金を十分に提供して金利を低く抑えるためだ、と日銀は言います。いま、日銀の国債保有額は500兆円にもなります。総発行高の半分を日銀が持っている異常な事態です。

こういう状況で金利をあげたらどうなるか。金利が上がれば国債の価格は下がる。日銀は保有している国債の価値が下がり、債務超過・破産する可能性がある。政府は、国債の元金と利息に支払う額が増える。1%金利が高くなると、3兆7千億円が増えるそうです。そうなれば巨額な財政負担になり、予算も組めなくなる。こうして、日本は金利を上げたくても上げられない状況に追い込まれているのです。

どうしてこんなことになったのか。安倍首相がアベノミクスと称して異次元の金融緩和政策を押し進めた結果です。国債を大量に発行して日銀にかわせ、資金をばらまいた。それによって円高は是正され輸出企業はうるおった。投資家は余った金を株に投資した。その帰結は、大企業の内部留保が史上最高額となり、富裕層は高い株価の恩恵をうけ、さらに富を増やした。不公平な金融所得税制の恩恵も受けた。これがアベノクスの実態でした。そのつけがいま、物価高と円安、さらに財政危機という形で私たちに廻ってきているのです。

それなのに、岸田政権は来年度予算で防衛費をさらに増やし、5年後には今の倍の11兆円にし、その財源を国債の発行で賄おとしています。物価高に苦しむ庶民の生活はとうなるか。日本の経済と財政はどうなるか。

アベノミクスの名で大企業と富裕層の懐を豊かにし、日米同盟強化を叫んで防衛費を増やし続けたのが安倍元首相でした。岸田政権はその功績をたたえて安倍を国葬にするというのです。私たちを馬鹿にしているのではないでしょうか。そんな金があったら庶民の生活にまわせ。軍事費を増やすな。国債の発行を止めろ。

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◆8月19日に伊東市観光会館前で行われたスタンディング行動のスピーチ原稿を掲載します。

2022.8.19        安倍晋三氏の国葬に反対する

                  三好康昭

岸田政権は安倍元首相の葬儀を国葬とし、9月27日に執り行うことにしました。国葬というのは、全国民がその人の死を悼んで弔意を表す儀式で、費用はすべて国費で賄われます。

人の死を嘆き悲しむのは個人の心の問題ですから、他から勧められて行うようなことではありません。半旗を掲げ黙祷を強いるのは個人の内心の自由を侵します。私は国葬という葬儀の形態そのものが個人主義の憲法原理にそぐわないと考えています。

どのような人を国葬にするか基準がありません。岸田首相は安倍氏が一番長く首相を勤めたことを理由の一つにあげていますが、見方を変えれば、それだけたくさん悪いこともしたわけです。教育基本法の改悪に始まって核兵器の共有まで、数限りがありません。酒井直樹というアメリカの大学の教授はこういうことを言っています。

 主権在民の国民国家において、国民への忠誠は第一義的に憲法への忠誠である。憲法に違反したり無視することは国家への反逆になる。

政治家の国民への忠誠の第一は憲法への忠誠であるというのです。安倍氏は執拗に憲法を批判し、「みっともない憲法」だとさげすみ侮辱しました。酒井教授によれば文句なしの反逆者です。そういう人物がどうして国葬になるのか、私には全く理解できません。

権力者が亡くなった後、権力を継承する者はいつも自分に都合の良いように死者を利用します。安倍氏の国葬を決断した岸田首相の狙いは何でしょうか。一つは最大派閥である安倍派へのリップサービス。ご機嫌取り。二つ目は安倍氏の遺志を引き合いにして日本を軍事大国化し、憲法を改正することです。岸田首相は党内の右派勢力の神輿に乗る形で、安倍氏の遺志を自らの手で実現することを決断しました。その第一歩が安倍国葬であったわけです。

しかし、銃撃犯の犯行動機が旧統一教会への恨みであり、安倍氏と旧統一教会との深いつながりが明らかになったことによって、国葬による安倍礼賛の世論作りは失敗に終わりました。安倍氏の国葬はどこから見ても理由がありません。国葬を日本の軍事大国化と改憲の世論づくりに利用しようする岸田政権の企てに強く抗議します。みなさん、いっしょに抗議の声をあげましょう。

(以上)

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◆昨日(7月19日)の恒例のスタンディング活動は雨のため中止となりました。予定していたスピーチの原稿を載せます。

22.7.19               安倍晋三氏の銃撃死

三好康昭

7月8日、安倍晋三前首相が街頭演説中に銃撃され死亡しました。犯人は元自衛隊員で、一家の不幸の元凶である宗教団体と繋がりある人物として、安倍氏を殺害しました。街頭演説のさなか、公衆の面前での犯行で、相手が政治的影響力のある人物であったため、事件は社会に衝撃を与えました。民主主義の破壊だ、暴力に屈しない、とかいった言葉が溢れました。が、犯行の動機は政治的なものではありません。家庭の不幸の怨念を晴らすために起こしたものです。政治的反対者を抹殺する政治テロではありません。時と場所がたまたま街頭演説中であっただけです。

しかし、事件後のテレビ・マスコミの報道ぶりは異常でした。選挙中にもかかわらず、安倍晋三を礼賛する声一色に染まり、現在まで続いています。彼が首相在任中に何をしましたか。憲法と法律の解釈を捻じ曲げ、国会でウソの答弁を繰り返しました。公文書の書き換えを命じられ自殺に追い込まれた人もいます。教育基本法を改悪し、教育の国家統制を進めたのも彼です。こうした安倍批判をすると非国民呼ばわりされかねない世相です。これこそが民主主義の破壊です。自由を奪うのは銃弾だけではありません。社会の無言の圧力が自由な言論を殺します。

この秋には国葬が執り行われるそうです。学校は休みになり、官庁には半旗が掲げられるでしょう。国民の税金を使って安倍と安倍政治を追悼し礼賛する儀式が大々的に行われます。狙いは明らかです。安倍の遺言ともいえる防衛費の倍増と憲法改正にむけて、国民の意識・世論を一気に高めようとするものです。安倍の死をそのために利用する。魂胆は見え見えです。7月8日は憲法9条の改正にまっすぐつながる道であることを私たちは知らなければなりません。

民主主義とは異論を正々堂々と言える自由が公共空間にあることです。世の空気や権力の強制にもNO!と言える自由があることです。その意味で、今、この場所にこそ民主主義がある、ということを私は強く主張します。

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◆6月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング・アピール行動のスピーチ原稿を載せます。

2022.6.19           

戦争法の廃止を訴えよう

3日後の6月22日に参議院選が公示されます。各政党の公約をみると、非常に大きな特徴があります。共産党と社民党を除いて、どの政党も防衛費を今より大幅に増やすと言っています。中国に軍事力で対抗するためです。中国が南シナ海で軍事活動を活発化し、台湾統一を狙っている。日本はアメリカとともに、台湾への武力侵攻を阻止しなければいけない。台湾有事は日本有事だ、と危機を煽っています。こうした扇動政治家の嘘にだまされないために、私たちは事態を正しく知ることが必要です。

日本は1972年の日中共同声明で、北京政府が中国の唯一の正統な政府であることを承認し、台湾が中国の領土の不可分の一部であることを認めています。台湾問題は基本的に中国の内政問題であり、日本が口を挟むべき問題ではないのです。

それなのに、なぜアメリカは台湾問題に関わろうとするのでしょうか。もし、台湾が中国によって統一されれば、南シナ海を含めた西太平洋の覇権はアメリカから中国に移るからです。アメリカはそれを力によって阻止したい。もし中国が台湾に侵攻しようとしたらアメリカは台湾海峡を封鎖するかもしれません。その時、日本はどうするか。本来なら台湾をめぐる米中の軍事衝突は両国間の問題であって、日本がこの問題にかかわることはないはずです。ところが、日本政府は2015年に新安保法制、別名戦争法を作りました。この法律は、アメリカと他の国との戦闘が日本に重要な影響を与えるときは、日本は米軍の後方支援、つまり燃料や弾薬を提供し、米兵の輸送ができると定めています。中国から見れば、日本は戦争の当事国です。さらに進んで、米中の武力衝突が起これば、日本にとっての「存立危機事態」となり、日本は後方ではなく正面から中国と戦う羽目になるでしょう。

台湾問題は本来なら中国の内政問題であるのに、米軍が関与することによって台湾有事となり、さらに戦争法のために日本有事となるのです。戦争を避けるために何をしなければいけないか。防衛力という名の軍事力を強化することは、中国を仮想敵国とする限り、中国との軍事的緊張を高め、戦争のリスクを高めるだけです。戦争法を廃止すること、憲法の平和主義の原点に返ること、そのことが戦争を避けるもっとも確実な道です。参議院選に向けて、防衛費の増額に反対するとともに、戦争法の廃止を強く訴えていきましょう。

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◆5月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

防衛費のGDP2%増額要求

             三好康昭

自民党は防衛費を今の倍に増すことを要求しています。4月27に今後5年を目途に防衛費をGDPの2%まで引き上げる意見書を岸田首相に手渡しました。今年度の防衛予算は5兆4000億円でGDPの1%。2%というと11兆円。アメリカと中国に次いで世界で3番目に多い軍事費です。なぜそんなお金が必要かというと、敵の軍事基地だけでなく指揮統制機能をマヒさせる攻撃力を備えるため。つまり、敵と全面戦争できる軍事力がもつために年11兆円が必要だというのです。軍隊を持たないはずの日本が世界第3位の軍事大国になるのだ、というのです。一体、どうやってそんなお金をひねり出すのでしょう。

第一の方法は消費税を上げることです。今の10%の税率を13%に引き上げて、その分を防衛費にまわせば11兆円にできます。しかし、消費税を増税して防衛費にまわすことに国民は反発するでしょう。

第二の方法は社会保障費を削減することです。たとえば生活保護制度を廃止し、5兆円の支給額を防衛費に充てれば11兆円近くになります。これはさすがに国民の抵抗が強い。ではどうするか。上手い方法があります。それは防衛費を賄うため国債を発行することです。今年の新規国債発行高は37兆円、これに1兆円ずつプラスしてもたいしたことはない、新規発行分は日銀に買い取ってもらう。これなら国民も反対しない。

5月7日、安倍元首相は大分で講演しました、「『日銀は政府の子会社』だから、いくらでも国債を買ってくれる」と。日銀の独立性を無視した暴言ですが、首相在任中彼は似たようなことをやりました。アベノミクスだといって大量の国債を発行し、黒田日銀にそれを爆買いさせました。その結果、今や国債の発行残高は1000兆円を超え、その半分を日銀が所有しています。いびつな財政構造です。今円安が進み物価が上昇していますが、日銀は打つ手がありません。物価を押さえようと金融を引き締めれば国債の値が下がって、日銀は資産を失います。政府も利回りの高い国債を発行できません。こういう状況で、防衛費を国債で賄おうとしたらどうなるか。答えは戦前の財政が示しています。政府は膨張する国防費を国債で賄い、直接日銀に引き受けさせました。その結果、激しいインフレを招き円は紙くず同然となったのです。この反省から、戦後国債は原則発行禁止となり、日銀の国債引き受けも禁止されました。ところが、今また戦前のように防衛費を国債で賄い、日銀に引き受けさせる動きが強くなりました。行き着く先は超インフレ、国民生活の破綻です。防衛費のGDP2%への増額という主張が財政を無視して独り歩きするときの危険性を私たちは知る必要があります。

(以上)

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◆4月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ予定原稿を載せます。

ロシアの軍事侵略から引き出すべき教訓

三好康昭

ロシアによるウクライナ軍事侵略が起きてから、憲法9条に対する攻撃が強まっています。9条によって国が守られるのか、という攻撃です。これは誤解か悪意に基づく宣伝です。9条は日本が戦争しないことを定めた規定です。争いを武力によって解決しないと宣言しています。攻撃されたとき、どうするかといったことを決めたものではありません。プーチンのような好戦的な男が権力をにぎっても、戦争できないようにしたのが9条なのです。ロシアの行為は国連憲章第四条に違反するものですが、日本の憲法はその国連憲章もよりもさらに徹底して絶対的な戦争放棄を定めています。

二つ目の攻撃は、日本は戦争する気が無くてもよその国から戦争を仕掛けられたとき、軍隊が無くては戦えないのではないか、という批判です。私はこの批判に対して、次のように反論します。どんな国であれ、プーチンのような国であれ、いきなり理由もなしに戦争を仕掛けることはあり得ません。戦争をしかけられたらどうするかではなく、戦争が起こらないようにするにはどうするかを考えるべきです。プーチンはNATOの東方拡大の不安から、ウクライナを間におくことによって自国の安全を図ろうとしました。NATOがロシアを敵視する軍事同盟と捉えたからです。軍事同盟は敵となる国を想定します。軍事同盟の強化・拡大は仮想敵国との緊張を高め、軍拡競争を激しくします。その結果は平和ではなく、今回のように戦争に行き着くのが歴史の教えるところです。1940年に日本はドイツ・イタリアと三国軍事同盟を結びました。その結果、仮想敵のアメリカと決定的に対立し、ついに太平洋戦争は突入しました。現在の日米安保条約は当初はソ連を、現在は中国を敵に想定しています。ロシアのウクライナ侵略に乗じて、日米同盟の強化が叫ばれています。防衛費を倍に増やせとか、核兵器の共有まで取りざたされています。しかし、中国に対する包囲網が強まり、中国が危機感を持てば持つほど、戦争の危険が高まります。台湾問題であれ、尖閣問題であれ、ひとたび戦争となれば、人口稠密な島国で日本海側に原発が立ち並ぶ日本は壊滅的な打撃をこうむります。戦争は絶対さけなくてはなりません。そのためには軍事同盟の強化ではなく、利害が対立する国をも含めた多国間の安全保障の枠組みを作らなくてはいけません。戦争を放棄した日本は、そのような国際機構の設立に外交努力を集中するべきです。今回のウクライナ問題に便乗して憲法を改正し戦争が出来る国にさせてはなりません。平和憲法を決して手放さず戦争への道に待ったを掛けるためにともに頑張りましょう。

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◆3月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ原稿を載せます。

ウクライナ軍事侵略に寄せて

三好康昭

ロシア軍がウクライナに軍事侵攻して一カ月近く。ウクライナの被害はますます拡大しています。戦闘機による空爆、戦車の砲撃、何千発ものミサイル攻撃で、高層ビルが火を噴き、病院が破壊され、学校が瓦礫の山となりました。何千人もの民間人が殺されました。戦火を逃れ、故郷を捨てた難民は300万人にもなるといわれます。プーチン大統領はウクライナの原子力発電所を人質にとり、さらに核兵器の使用さえ口にして、世界を恫喝しています。国内で独裁的な権力を握る者は歯止めが効かない。いったん強硬策を取ると軌道修正ができません。単なる脅しではなく、世界が破滅するか、自分が破滅するまで行く可能性があります。

いつも戦争を命令するのは一握りの権力者で、そのために血を流し、肉親を失い,露頭に迷うのは名もなき市民です。なんでこんな惨い愚かな野蛮なことが、行われるのでしょう。

ロシアとウクライナは兄弟国で、かつてはともにソ連邦を構成していました。1941年6月、日本が太平洋戦争に突入する半年前です、ナチスドイツが突如ウクライナに攻め込み、無警戒だったソ連は国土を蹂躙され、おびただしい犠牲者を出しました。この戦争で亡くなった人は何と2,700万人です。日本の戦死者の9倍、世界最大の被害国です。このような悲劇を二度と経験しないため、ソ連を含む連合国は国際連合を作り、戦争は違法だと宣言しました。「国際間の紛争は平和的手段で解決する。武力の行使は慎む」と国連憲章で謳いました。それ以来、アメリカのイラク戦争のように国連憲章に反する戦争もありました。しかし、今回のようにあからさまに、公然と主権を持った独立国を軍事侵略した例は稀です。人類の歴史は80年前に逆戻りしました。野蛮な帝国主義時代に返ったかのようです。

ロシアの軍事侵略をみて、日本も軍備を強化しなければ危ない。日米同盟をさらに強化しなければならない。はては、安倍晋三や日本維新の会のように、アメリカの核兵器を日本の基地に備え、いざなったら自衛隊が核を使えるようにしよう、といった声さえ出ています。これらの議論は、一言で言えば、日本もプーチンと同じことが出来るようにしよう、ということです。先の戦争で310万人の犠牲者をだし、広島・長崎に原爆を落とされ、国土を焼き尽くされた日本が、また同じ道をたどろう、というのです。日本がとるべき道は憲法9条です。戦争は絶対しない。自衛の名とする戦争も認めない。武力の行使も脅しもしない、という非戦の誓いです。ヒロシマ・長崎の被爆者が願うのは核兵器を作らない、持たない、持ち込ませない、という非核三原則を固く守ることです。国連憲章の戦争違法化のさらに先を行く人類の理想を憲法と非核三原則は示しています。

プーチンと同じ論理に立ってプーチンを批判するのではなく、非戦を誓った日本国憲法の立場から、初めて、プーチンの軍事侵略の不当性、違法性、犯罪性を批判できるのです。

日本は、プーチンと同じ道を歩むのではなく、憲法が掲げる理想をあくまで追い求めていかなければならない、と強く訴えます。

(以上)

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◆2月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングに向けたスピーチ予定原稿を載せます。

アメリカ軍の戦略に巻き込まれる自衛隊

三好康昭

今北京で冬のオリンピックが開かれています。日本を含めた多くの国が、外交ボイコットと称して、外交官・政府首脳を派遣していません。中国政府の香港や新疆・ウイグル自治区における強制労働・人権弾圧に抗議してのことです。他方で、日本政府は佐渡金山を世界遺産に登録することを申請しました。佐渡金山では戦時中朝鮮からたくさんの労働者が連れてこられ、強制的に働かされていました。そのため、韓国政府は日本の登録申請に厳しく抗議しています。

日本政府は中国の人権弾圧には抗議しながら、自国の人権侵害の歴史には頬かむりしています。ドイツとは全く違います。日本軍は中国大陸で中国人を何百万人も殺害しています。この事実に向き合わずに、中国の人権侵害に抗議しても、何の説得力もありません。「お前に言われたくない」と言われるだけです。

ウクライナ情勢を打開するためロシアと外交交渉を進めるドイツのように、日本は本来なら米中対立の緩和を目指さなければならない立場です。ところが、日本はアメリカの尻馬に乗って、中国包囲網づくりに加担しています。奄美大島から沖縄本島を経て宮古・石垣島に至る南西諸島に自衛隊基地を作っています。もし、中国が台湾へ侵攻することを企てたら、アメリカは軍事行動をとる可能性があります。そのとき、先兵役を担うのが自衛隊です。南西諸島の海峡を通過しようとする中国艦艇を阻む。地上から海に向け、空に向け、攻撃を仕掛ける。さらに中国本土の軍事基地にミサイル攻撃をする。これが敵基地攻撃です。こうした軍事作戦が、今、日米で練られています。

こうして、日本は米中の覇権争いに巻き込まれ、中国と戦端を開く危険な状態へ進みつつあります。この文脈で、憲法9条改正の動きを見る必要があります。焦点は9条1項です。そこには武力による威嚇・武力による攻撃をしない、とはっきり書いてあります。敵基地を攻撃すること、あるいは攻撃するぞ、と脅すことを憲法は禁じています。中国と戦争をするのに、憲法は邪魔なのです。今、安倍元首相を始めとして自民党の右派勢力、日本維新の会は、盛んに中国脅威論を煽って、9条改正を主張しています。日本がアメリカとの軍事同盟をさらに強化し、中国とことを構えるのに憲法が邪魔だからです。憲法は平和の砦です。9条を守り、日本の平和を次の世代に引き渡すことが私たちの使命です。憲法改悪を阻止するためにともに頑張りましょう。

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◆2月6日、伊東市内で「憲法改悪を許さない全国署名」の街頭署名を行いました。その時の、スピーチ予定の原稿を載せます。

2022.2.6          湯の花通りの街頭署名で

三好康昭

今北京で冬のオリンピックが開かれています。日本を含め多くの国が、外交ボイコットと称して、外交官・政府首脳を派遣していません。中国政府の香港や新疆・ウイグル自治区における人権弾圧に抗議してのことです。他方で、日本政府は佐渡金山を世界遺産に登録することを申請しました。佐渡金山では戦時中朝鮮からたくさんの労働者が連れてこられ、強制的に働かされていました。そのため、韓国政府は日本の登録申請に厳しく抗議しています。

日本政府は中国の人権弾圧には抗議しながら、自国の人権侵害の歴史には頬かむりしています。韓国だけでなく、中国大陸で、日本は民間人を含めた中国人を何百万人と殺害しています。この事実に向き合わずに、中国の人権侵害に抗議しても、何の説得力もありません。「お前に言われたくない」と言われるだけです。

また一方では、台湾情勢をめぐって、米中対立が厳しさを増しています。アメリカは日本・インド・オーストラリアなど同盟国を巻き込んで、中国包囲網づくりを狙っています。中でも自衛隊の役割が重要です。奄美大島から沖縄本島を経て宮古・石垣島に至る南西諸島に自衛隊基地を作り、中国の艦船がこの線を突破することを阻止する戦略を立てています。もし、中国が台湾へ侵攻することを企てたら、アメリカはこれを阻止しようとして軍事行動をとるかもしれません。その際、先兵役を担うのが自衛隊です。南西諸島の海峡を通過しようとする中国艦艇を阻む。地上から対空攻撃を仕掛ける。さらに中国本土の軍事基地にミサイル攻撃をする。これが敵基地攻撃です。こうした軍事作戦が、今、日米の防衛当局の間で練られています。

こうして、日本は米中の覇権争いに巻き込まれ、中国と戦争をする危険な状態へ進みつつあります。この文脈で、憲法9条改正の動きを見る必要があります。今の憲法は武力による威嚇・武力による攻撃を禁じています。敵基地を攻撃すること、あるいは攻撃するぞ、と脅すことは憲法が禁じています。今の憲法は中国と戦争をするためには邪魔です。今、安倍元首相を始めとして、自民党の右派勢力、日本維新の会は、盛んに中国脅威論を煽って、日本の軍事大国化と9条改正を主張していますが、それは、日本がアメリカとの軍事同盟をさらに強化し、中国とことを構えるのに憲法が邪魔だからです。憲法は平和の砦です。9条を守り、日本の平和を次の世代に引き渡すことが私たちの使命です。憲法改悪に反対する署名にご協力ください。

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◆1月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

 コロナが露わにした 地位協定の問題性

三好康昭

コロナの第6波の感染拡大によって露わになりました。日本は本当に独立国家、主権国家と言えるのか、ということです。沖縄県では爆発的に感染がひろがり、まん延防止措置が取られました。岩国基地を抱える山口県、広島県も同様です。感染力の強いオミクロン株の発生源が米軍基地であることは明らかです。オミクロン株に感染した米軍兵士が、日本の検疫をスルーして沖縄や岩国基地に直接入国します。地位協定によって検疫が免除されているからです。米兵はコロナの検査を受けずアメリカを出国し、感染者がそのままコロナ菌を基地に持ち込みました。基地の兵士が感染し、基地で働く日本人従業員が感染しました。アメリリカ兵も休みの時は基地の外に出ます。高級軍人は基地の外の一戸建ての立派な住宅に住んでいます。日本人との接触は避けられません。コロナ菌は基地従業員を通して、基地外に出る米軍兵士を通して、沖縄県や岩国市で爆発的に広がったのです。ついでに言えば、基地従業員の給料も高級住宅も光熱費も、全部思いやり予算によって日本政府が私たちの税金から支払っているのです。日本は基地の閉鎖を求めることはできません。兵士の外出禁止を要請することもできません。出国と入国時のコロナ検査すらも要求できません。地位協定によって、基地と兵士には日本の法令が免除されているからです。高速道路を使っても使用料は払いません。港に入っても港湾使用料を払いません。航空法が適用されず、オスプレイが市街地を高度500m以下で飛び、騒音をまき散らすことも自由です。こんな国は他にありません。米軍基地があるイタリアもドイツも、国内法が駐留米軍に適用されています。米兵は基地の外で飲酒運転して人をはねても、基地の中に逃げ込めば日本の警察の捜査権は及びません。日本は安保条約に基づく地位協定で米軍に治外法権を認めています。これでも日本は主権国家と言えるでしょうか。政府は、今回のコロナの感染拡大にもかかわらず、早々と地位協定を見直すことは考えていない、と言っています。日米同盟と言いながら、実態は米軍と米国に、自衛隊と日本が植民地的に従属していると言わざるを得ません。

コロナの第6次の感染は日本の置かれたこのような実態を白日の下にさらしました。今の地位協定と安保条約のもとでは、日本は名誉ある独立国家とは到底言えないということを、私たちは認識すべきです。以上です。

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◆12月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

危機を煽る無責任な政治家

三好康昭

10月31日投開票の総選挙の結果、憲法改正に積極的な維新の議席が増えました。自公と合わせると衆議院の改憲発議に必要な2/3の議席を優に超えます。が、参議院では自公と維新を合計してもまだ2/3に達していません。改憲派は7月の参議院選挙に向け、憲法改正の一大キャンペーンを展開するでしょう。

このキャンペーンはもう始まっています。軍事的な危機を煽ってミサイルや戦闘機を大幅に増やし日本を軍事大国化し、実態として9条を亡き者にしようとしています。その旗振り役が安倍元首相です。

病気を理由に二度まで政権を投げ出した男が、今や自民党の最大派閥の長になって、軍事的危機を煽るデマゴギーを振りまいています。台湾有事は日米同盟の有事だ。中国が武力で台湾を統一しようとしたら、日本は集団的自衛権を行使してアメリカ軍と一緒に中国軍と戦って台湾統一を阻止しなければならないというのです。そうなれば、ミサイル基地のある沖縄はもちろん、日本海に沿って立ち並ぶ日本の原発は火の海です。責任ある政治家の言うことではありません。80年前、日米開戦を決めた東條英機は、人間一度は清水の舞台から飛び降りるような覚悟が必要だと言ったそうです。清水の舞台でもどこでも、飛び降りたければ自分一人で飛び降りればいい、国民を巻き添えにして310万人の戦死者を出すな、と言いたい。安倍元首相の言葉も無責任さにおいては似たようなものです。ただし、彼の本音は、中国との軍事的危機を煽って、それを口実に日本を軍事大国化することにあるとみるべきでしょう。長射程のスタンドオフミサイルや高速滑空弾を開発して、敵基地を攻撃できる能力を持つこと、そのためには防衛費を倍に増やせ。安倍氏の子分といっていい高市政務調査会長は防衛費をGNPの2%まで増やすことを主張しています。今国会で審議している補正予算には、防衛費7000億円が計上されています。今年4月からの本予算と合わせると、6兆円を超える額です。ところが、GNPの2%となればその額は11兆円です。アメリカ・中国に次いで日本は世界第三位の軍事大国となるのです。憲法9条の戦争しない、軍隊は持たないという規定は死に体同然となります。すでに9条改悪のキャンペーンが行われています。私たちは9条改悪に反対しています。条文を変えることに反対するだけではなく、今、現実に進められている軍事大国化に抗議の声をあげなくてはいけません。ともに頑張りましょう。

(以上)

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◆11月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングの際のスピーチ原稿を載せます。

            今が正念場

三好康昭

先の衆議院選で四野党は共闘し善戦はしたものの、議席増に結び付きませんでした。自民・公明は安定多数を得、維新が大幅に議席を伸ばしました。その結果、改憲政党は衆議院の総議席の2/3議席を楽々超える334議席を得ました。改憲勢力は来年の参議院選で2/3の議席を得ることを目指して、これから改憲世論を高めていこうとしています。私たちの対抗運動も正念場を迎えています。

改憲派は一体憲法の何をどう変えようとしているのでしょう。維新は教育の無償化を書き入れるべきだと主張しています。しかし、これは改憲の理由なりません。教育にかかる費用を無償にする法律を作ればいいだけです。維新は改革のポーズをアピールするために改憲のための改憲を主張しています。自民党の茂木新幹事長は緊急事態条項を突破口にして、憲法改正案をまとめようという魂胆です。コロナ封じ込めに強権発動が必要だという国民世論を追い風にしています。これもトリックです。私権制限は現行法でも可能です。緊急事態条項の本当の狙いは法律なしで政府の判断一つで私権を制限できるようにすることです。

改憲派の真の狙いが9条改正にあることは明らかです。自衛隊に憲法上の正当性を与え、集団的自衛権行使の条件をなくし、海外で同盟国と一緒に自由に戦争できるようにするものです。軍事に対する憲法上の歯止めがなくなったらどうなるでしょう。今でさえ自民党の中では敵基地攻撃能力を保有すべきだとか、防衛費をGDPの2%まで増やすべきだとか声高に叫ばれています。76年に及ぶ平和国家=日本の歩みが根本的に覆されようとしています。

私は改憲の是非の前に言いたいことがあります。一体、彼らに改憲をいう資格があるでしょうか。安倍晋三氏は総理のとき、今の憲法はみっともない憲法だと侮辱しました。9条に関する長年の政府解釈を閣議決定一つで覆しました。野党が憲法53条に基づいて要求した臨時国会の開会の要求を完全無視しました。野党を無視したのではなく、憲法を無視したのです。憲法尊重擁護義務もへったくれもありません。こういう人物が今自民党の最大派閥の長になっています。憲法を足蹴にしてきた人物や政党が憲法改正をいう資格があるでしょうか。  来年7月の参議院選挙が山場です。ここで護憲派が踏みとどまるか、改憲派が2/3超えの議席を得て、一気に改憲発議に持っていくか。私たちは、戦後76年続いた平和な社会を次の世代に引き継ぐため、護憲政党が一つでも多くの議席を獲得するよう力を尽くします。一緒に頑張りましょう。応援してください。

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◆10月31日投票の衆議院議員総選挙の結果を振りかえりました。その4

【Ⅳ】次の選挙に向けて

今回の選挙で、改憲の是非は争点にならなかった。自民党の改憲公約が信任されたとは必ずしも言えない。しかし、中国の軍事力増強や北朝鮮のミサイル発射に対して、日本の防衛力強化=自衛隊増強を求める声が強まっていることは間違いないだろう。それが9条改憲世論を増やし、改憲派の伸長をもたらした。私たちはどのように対抗運動を作っていたらいいだろうか。

ⅰ)私は9条改憲阻止=平和主義擁護をもっともっと争点化していくべきだと考えている。「四つのチャレンジ」の四番目ではなく、トップに掲げるべきだ、と。平和主義を広くとらえる。際限のない防衛費の増強=軍拡、屈辱的な地位協定、敵基地攻撃の問題性、核兵器禁止条約不参加、南西諸島への核ミサイル配備の可能性、自衛隊と米軍の一体化、などの軍事大国化路線の総仕上げに9条改憲があることを粘り強く訴える。

ⅱ)軍事大国化が個人の人権尊重と相いれないことを具体的に示し、宣伝する。

・学術会議=軍学共同の障害→会員任命に介入→学問の自由の侵害

・基地周辺等の土地売買の規制、監視、情報収集→財産権、プライバシー権の侵害

・防衛関係費の増額→社会保障の切り詰めとコロナ禍の医療体制の崩壊→生存権と「人間の安全保障」の侵害

・「戦争する国家」は個人の多様な生き方を認めない。→個人の幸福追求権と衝突

ⅲ)来年夏の参議院選で、改憲勢力が2/3超の議席を占めることを阻む。

市民が積極的に選挙運動にかかわる。国民投票運動の前哨戦の気構えで。電話がけやハガキ作戦を頑張る。

①「政策よりも人のつながり」が要点であるならば、さまざまな市民活動、文化活動を通して人のつながりを広めることが大事だ。人の輪を広げる。政治について気軽に語れるような仲間関係を作っていく。市民生活を豊かにすることが民主政治を育てる。

②「過去を水に流す」大勢に抗する。過去を忘れず、過去にこだわる。過去が現在を規定していることを知る。2015年の戦争法が現在どのように”活用”されているかを宣伝する。戦争と憲法の歩みを学習し、次世代に伝える。既成事実に流されないことを活動の原点にしたい。

➂無党派層を投票所に運ばせるには、人を引き付ける魅力的な「キャッチコピー」を打ち出し、SNSを通じて広めるのが有効だ。イメージ選挙を軽視することはできない。しかし、キャッチコピーには賞味期限がある。実が伴わなければやがて支持者は離れる。「コロナ困窮者に公的な支援を」という掛け声をスローガンに止まらないで、現実化させるにはどうしたらいいか。街の声を拾う、調査し集約する、議会で要請する。こういった地に足の着いた行動(力)が必要だ。それが支持者を広げる王道に違いない。

 

(21.11.5 記)

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◆10月31日投票の衆議院議員総選挙の結果を振りかえりました。その3

【Ⅲ】選挙と政治意識

 比例区を含め、多くの選挙区で同じ人間、あるいは世襲を含めた後継者が議員に選ばれるのはなぜか。そこに日本人に特有な政治意識があるのかもしれない。有権が一票を投じる時、最も重視するものは何か。どんな特徴があるだろうか。

(1)政策よりも人

①第一の特徴は政策よりも人のつながりを重視して投票するということ。世襲議員が多いのは、議員の都合(金、地盤)もあるが、有権者が候補者との代々のつながりを重視するからだ。

②候補者個人の政治的信条は重視しない。所属政党を変えても選挙結果に大きな変動はない。(静岡7区の細野)。有権者が重視するのは、政治的価値観の一貫性ではなく、その人に世話になっているとか、口利きをしてくれるとか、等の利害関係だ。この関係は縮小されて地方議員と有権者との関係に相似的に現れる。国会議員を頂点とする県議・市町村議―有権者からなるピラミッド構造の接着剤となっているのは、政策ではなく人的なつながりであり、それを媒介する利害である。

③議員が公選法や政治資金規正法に引っかかるような行為をした場合でも、それが有権者への利益供与であるときは、寛大である。支持者は離れない。 (小渕優子の場合) 。しかし、業者からの収賄に対しては厳しい。議員個人の利益とみるから。(甘利の場合)。

政策よりも人を重視する傾向は地方にいくほど強くなる。

(2)過ぎたことは水に流す、なかったことにする

森友・加計学園から桜と続く行政の私物化と官僚の腐敗や、コロナをめぐる杜撰な政府の対応、コロナ禍でのオリンピックの強行、医療崩壊といった一連の政治の無策に対して、国民の批判は長続きしなかった。菅から岸田への首班交替を機に不満も沈静化したように見える。作家の中島京子さんは「選挙戦の中、オリパラの総括を問うことはほとんどなく、たった2ヶ月、3か月前のことなのに、みんな忘れたように静かだった。」と嘆いている (朝日11/2) 。本来なら4年間の政権与党の治績を審判するはずの総選挙が、これから何か良いことをしてくれそうだという期待感を煽る選挙戦と化した。「過ぎたことをあげつらっても仕方ない、大事なのはこれからだ」という感覚は庶民の生きる知恵としては合理的であっても、一国の政治や社会のあるべき姿を問う選挙にあっては、政権与党の延命と政治・行政の腐朽の温床となる。

(3)事実よりもムード・風

 過去の事実よりもこれからの期待感にウエィトを置いて有権者は投票先を決める。それゆえ、どの政党も聞こえの良い期待を持たせるようなスローガンを打ち出す。「新しい資本主義」、「成長も分配も」…。漠然とした何となくよさそうなフレーズを掲げる。「改革」や「チェンジ」という言葉もこの類だ。中身よりも外見が大事だ。加えて、見栄えのする候補者、演説者とくれば、人は集まり票も集まる。日本維新はこの条件がそろっていた。言葉は悪いがムード選挙、大勢順応選挙。都市部であればあるほどこうしたイメージ選挙が有効だ。

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◆10月31日投票の衆議院議員総選挙の結果を振りかえりました。その2

【Ⅱ】改憲動向について

①改憲派の伸長

自公の政権与党と、改憲に積極的な維新を加えた改憲勢力は公示前の324議席から345議に議席を増やした。改憲論議をいとわない国民民主の議席を含めて考えれば、国民審査会における改憲論議が一気に進む可能性がある。もちろん、改憲勢力も一枚岩ではない。改憲意欲に温度差があり、改憲項目の重点も党によって違う。改革のポーズを示したい維新は自民党をせっついて改憲案の取りまとめを急がせるだろう。公明党は慎重のようだが、改憲項目によっては受け入れる可能性もある。国民民主も同様。立憲民主が国民投票法の改正―CM規制―を盾に、どれだけ憲法審査会の審議入りに抵抗できるかがキーとなる。

国民の改憲意識はどうか。注目すべき資料がある。朝日新聞が10月19/20日に行った世論調査で、自衛隊を明記する9条改正に賛成する人が47%、反対する人が32% だった。前回調査から逆転した。朝日の記者は、前回は改憲の旗振りをした安倍首相への警戒感から反対が上回ったが、今回安倍の煽動がないぶん、警戒感が薄らいだのではないか、と解説していた。5月のNHKの世論調査では9条改正が必要28%、必要ない32% だった。世論調査の信頼度は何とも言えないが、改憲を公約に掲げる自民党の政権が継続すればするほど、9条改憲に賛成する国民の割合が徐々に増えていくことは間違いないのではないだろうか。

参議院の議席占有率を見ると、今は維新を加えても改憲派は2/3に届いていない。仮に、来年夏の参議院選で改憲派が2/3超の議席を獲得した場合、衆参の改憲発議が現実化することは十分考えられる。

※総選挙後の11月6/7日の朝日の世論調査では、憲法改正に賛成40%、反対36%。

②対抗運動

今回の選挙で、改憲の是非は争点にならなかった。自民党の改憲公約が信任されたとは必ずしも言えない。しかし、中国の軍事力増強や北朝鮮のミサイル発射に対して、日本の防衛力強化=自衛隊増強を求める声が強まっていることは間違いないだろう。それが9条改憲世論を増やし、改憲派の伸長をもたらした。私たちはどのように対抗運動を作っていたらいいだろうか。

ⅰ)私は9条改憲阻止=平和主義擁護をもっともっと争点化していくべきだと考えている。「四つのチャレンジ」の四番目ではなく、トップに掲げるべきだ、と。平和主義を広くとらえる。際限のない防衛費の増強=軍拡、屈辱的な地位協定、敵基地攻撃の問題性、核兵器禁止条約不参加、南西諸島への核ミサイル配備の可能性、自衛隊と米軍の一体化、などの軍事大国化路線の総仕上げに9条改憲があることを粘り強く訴える。

ⅱ)軍事大国化が個人の人権尊重と相いれないことを具体的に示し、宣伝する。

・学術会議=軍学共同の障害→会員任命に介入→学問の自由の侵害

・基地周辺等の土地売買の規制、監視、情報収集→財産権、プライバシー権の侵害

・防衛関係費の増額→社会保障の切り詰めとコロナ禍の医療体制の崩壊→生存権と         「人間の安全保障」の侵害

・「戦争する国家」は個人の多様な生き方を認めない。→個人の幸福追求権と衝突

ⅲ)来年夏の参議院選で、改憲勢力が2/3超の議席を占めることを阻む。

市民が積極的に選挙運動にかかわる。国民投票運動の前哨戦の気構えで。電話がけやハガキ作戦を頑張る。

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◆10月31日投票の衆議院議員総選挙の結果を振りかえりました。その1

三好康昭

【Ⅰ】 野党共闘について

市民連合を仲介して立憲野党4党が政策協定を結び、全国289の小選挙区のうち217で与党対野党の対決構図に持ち込んだ。結果を見ると、共闘が成立した選挙区では野党は公示前議席よりも議席を伸ばした(51→62)。しかし、野党第一党の立憲は比例区で議席を減らし全体では公示前の議席を減らした。共産党も同じ。候補者の一本化によって、議席獲得に至った選挙区、接戦に持ち込んだ選挙区は多かったが、期待したほどの共闘の成果は上がらなかった、と言わざるを得ない。その理由と今後の課題を考えたい。

①小選挙区制である限り、少数政党はまとまらない限り、多数派政党には勝てない。共闘することは必然である。まとまっても勝てるとは限らないが、まとまらない限り勝利できない。

枝野の後に誰が党首になっても、立憲は単独では参議院選の一人区、衆議院選の小選挙区を戦えない。他の党との選挙協力、候補者一本化は避けられない。問題はどの政党と組むかと、共闘の質をどう高めるか、である。

※ 静岡6区の比例代表、党派別得票率

自公‥50%  立憲‥22%    (共産‥5.4%  国民民主‥6.2% 維新‥10,2%)

②どの政党と提携するか―静岡6区を例に―

二つの政党が手を組んでも1+1が2になるとは限らない。静岡6区では立憲の渡辺は、共産党の前回の得票を上積みできなかった。1+1が1.5どころか、0.9になってしまった。もっとも共産党の支援が無かったら、比例で復活したかどうかも覚束ないが。渡辺が伸び悩んだ理由は何だろうか。

イ)共産党と組んだことにより、今回渡辺に投票しなかった人がかなりいた。

ロ)共産党支持者が渡辺に投票しなかった。

ハ)共闘以外の理由で、渡辺の得票が伸びなかった。

⇒結果的にはすべての理由が当てはまりそうだ。個別に見ると‥

イ)について…前回渡辺は希望の党から立候補した。今回は立憲から、共産党の支援を受けて出馬した。それゆえ、希望(国民民主)支持者が今回渡辺に投票しなかったことは考えられる。

ロ)の共産党支持者で渡辺に投票しなかった人の数はそう多くなかったと思う。しかし、共闘によって、共産党以外のいわゆる無党派層に支持が広がったかというと、それもなさそうだ。

ハ)については何とも言えない。

※結局、立憲と共産との共闘が維持・発展するかどうかは、イ)の立憲離れを上回る得票を、共闘によって立憲が獲得できるかどうかである。その見込みがないなら、立憲は共産党との共闘を見直し、国民民主と提携する方向に舵を切るかもしれない。共産党とは選挙のときだけの協力関係にとどめ政権協議には応じない、というように。

他方、共産党の側から見て共闘にどんなメリットがあるだろうか。今回共産党は多くの小選挙区で立候補者を見送った。そのことが比例区での得票減の一つの要因となった可能性はある。共産党にとって共闘が必ず党勢躍進につながる保証はない。党勢躍進に繫がるような共闘のあり方―固定的な支持者以外の層に支持を広げるような-をどう構築していくかが課題となる。

➂共闘の質

選挙直前になって中央で政策協定を結んでも、地方で1+1が2となる共闘を実現することはできない。地方には地方の事情があるので、名実のともなった共闘関係を作るのは簡単ではない。選挙のときだけの共闘ではなく、日常的な野党勢力の協力関係をどうやって作っていくかが問われる。伊東市で言えば、メガソーラー問題や確約書問題など、具体的なイシューで協力・協働関係を作っていく。そのことを通して、党と党というより、議員間や運動者間の人的な信頼関係を作っていく、それが選挙における実質的な共闘を生むことになるのではないか。

(つづく)

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◆大久保伸子さん作成の「消費税の秘密」第三版(裏)を掲載します。

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◆大久保伸子さん作成の「消費税の秘密」第三版(表)を掲載します。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキスト(NO41、42)を紹介します。その21、最終回。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキスト(NO39、40)を紹介します。その20。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキスト(NO37、38)を紹介します。その19。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキスト(NO35、36)を紹介します。その18。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキスト(NO33、34)を紹介します。その17。

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◆9月19日に伊東市観光会館で行われたスタンディング・アピールの際のスピーチ原稿を載せます。

 軍拡競争ストップ

三好康昭

今年の夏も日本列島は低温と長雨の異常気象に襲われました。世界でも豪雨被害や熱波による森林火災などの災害が起きています。異常気象は地球温暖化が原因であり、温暖化はCO2など温室効果ガスの排出によってもたらされます。温暖化対策は待ったなしです。菅首相は2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しました。電気自動車の普及や水素電池の開発、その他の技術革新で脱炭素は可能だといいます。新技術の開発は結構ですが、それによって別の自然破壊は起きないでしょうか。また、原発再稼働など別の危険を生むことはないのでしょうか。

新技術の開発よりもはるかに簡単に、すぐにできる温暖化対策があります。それは世界の軍事費を減らすことです。莫大なエネルギーと自然資源を浪費して戦闘機やミサイルを作るのを止めることです。兵器ほど非生産的なものはありません。それは建物を破壊し、人の命を奪うために使われるだけです。アフガン戦争20年の惨禍みてください。一体、世界でどれくらい軍事費が使われているのでしょうか。昨年一年間で使われた軍事費は何と212兆円で、世界のGDPの2.4%を占めます。日本は5兆3400億円で世界9位です。

川崎哲さんによると、そのうちの物件費1.1兆円を使えば、コロナの集中治療室のベッド1万5千床、人工呼吸器2万台、看護師7万人と医師1万人の給与を賄うことが出来るそうです。兵器は本来的に非生産的な物品であるだけでなく、それを作るためにどれだけの化石燃料や自然資源が使われ、どれだけの温室効果ガスが放出されることでしょう。軍需生産ほど地球温暖化に貢献している産業はないのではないでしょうか。アメリカも中国も米中対立を煽るのではなく、軍縮に向けて互いに協調していけば、両国のプラスになるだけでなく、地球全体の利益になります。

翻って、日本の政治を見てみましょう。自民党の総裁選が始まりました。安倍の繰り人形といわれる高市は防衛費を今の二倍に、10兆円にふやし、敵基地を攻撃して無力化する戦力を持つことを公約に掲げています。河野は安倍政権で外務大臣・防衛大臣を務めましたが、この時代に防衛費は史上最高額を更新しつづけました。岸田もまた憲法改正を唱え、敵基地攻撃能力の保有に前向きです。有力な三候補はいずれも、安倍政権が進めた日米同盟強化・軍拡路線を修正する気配はありません。来年度の防衛費の概算要求額は5兆4700億円に達します。誰が新総裁になっても、地球の未来と国民一人一人の暮らしと命を最優先する政治は期待できそうもありません。となれば、私たちの総選挙における選択肢は明らかです。自公政権にストップをかけましょう。ともに頑張りましょう。

(以上)

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◆8月19日に伊東市観光会館で行われたスタンディング・アピールの際のスピーチ予定原稿を載せます。

21.8.19

オリンピックを終えて

三好康昭

7月23日から8月8日まで、オリンピックが開催されました。開催反対の声があるなかで、無理をおしとおしました。始まってしまえば国民は競技に夢中になると、高をくくっていました。事実、終わった後の世論調査で、「やって良かった」という人が50%を越えたそうです。菅も小池もオリンピックは成功だった、と自画自賛しています。しかし、オリンピック開催中に、コロナ感染者は4千人から1万6千人に、4倍に増えました。現在は連日2万人越え、医療体制は崩壊の瀬戸際にあります。オリンピックが感染増加の一大原因だったことは明らかです。菅や小池がオリンピックとの関係を否定すればするほど、彼らの言葉は信用を失うだけです。

世論調査で国民が「やってよかった」と答えているのはなぜでしょう。NHKは終日競技を中継し、ワイドショーは選手の活躍を歯の浮くような言葉で称えました。マスコミが政府の御用機関となり、お祭り気分を煽ったのです。その結果が、「やってよかった」とコロナのまん延でした。

私は、今回のオリンピックで、国家は国民一人一人の生活や命を顧みない、ということを実感しました。政府筋でも、尾身会長が言ったように、パンデミック下で五輪をするのは普通ではない、と思っていたはずです。それでもオリンピックに突き進みました。途中でやめるわけにはいかない。国のメンツにかかわる。政権の凝集力が失われる、などの理由から。その結果、感染者が多少増えたとしても大した犠牲ではない。1億人のなかの1万人ならたった0.01%ではないか。これが国家の論理です。

戦場で軍は国民を守らない、と言われるけれども、平時でも、いざとなれば国家は国民の命を守らない。このことを実証したのが今回のオリンピックだったのでなかいかと私は思います。国家を動かす力を持った人たちは、国民の命と生活のためではなく、自分たちの利益と利権のため権力を使う。私たちが黙っていれば、彼らの思う通りになってしまいます。修善寺のベロドロームでは観客を入れて五輪の自転車競技が行われました。8月2日に修善寺駅前で抗議集会が開かれ私も参加しました。駅構内はシャトルバス利用の観客とボランティアの人たち、それに報道陣で溢れていました。抗議集会に集まったのは14~5人で、圧倒的に少数派でした。観客を入れて競技を行うことに反対の人はもっともっと多いはずです。そういう人たちが、声をあげ、行動し、訴えなけけば、政治は変わらない。黙っていたら、思い通りにされるだけです。秋には総選挙があります。私たちの声を一つにして、国民一人一人の命をないがしろにする菅・自公政権を変えなくてはいけない。政治を変えるのは主権者である私たちです。頑張りましょう。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その16。スライド33~42は後日掲載します。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その15

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その14。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その13。

 

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その12。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その11。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その10。NO21以降のスライドは後日紹介します。

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その9

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その8

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その7

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その6

 

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◆7月19日に伊東市観光会館で行われたスタンディング・アピールの際のスピーチ原稿を載せます。

2021.7.19                五輪と民主主義

三好康昭

7月12日、東京都などに4回目の緊急事態宣言がだされました。飲食店に営業時間の短縮を求め、酒類を提供しないように要請しました。他方で、世界最大規模のスポーツイベント・オリンピック・パラリンピックは予定通り実施するといいます。人の交流をできるだけ減らす政策を取っている最中に、世界中から人が集まるイベントを行う。誰が考えてもおかしい、矛盾しています。菅首相は国民の安全・安心を守れるオリンピックにする、といいます。ならば、オリンピックを中止するとことが一番確かな安心・安全策のハズです。たが、そうしない。なぜか。彼の言う・安心・安全は、必ずしも、国民の安心・安全ではないからだ、と私は思っています。

日本は民主主義の国だから、国民が選んだ代表者は国民のために、政治を行っていると思いがちです。確かに、選挙のときは大金持ちの一票も庶民の一票も同じ一票。候補者はわれわれのようなものにも愛想よく手を振る。ところが、いったん当選して議員になり権力を握ると、彼らの関心は自分たちのパトロン、つまりお金を出してくれる人の利益をどうやって増やすかに集中します。議員の活動を支えるカネヅルを肥やすことが彼らの仕事となる。選挙における国民と、権力を行使する時の国民は違うのです。

一月前の6/22、観客を入れて競技することを想定していたころのことです。丸川五輪担当大臣は、競技会場でアルコール類を販売することを検討していると述べました。飲食店に酒の提供を禁止しておいて、五輪で酒を出すとはどういうことか。丸川大臣はオリンピックのスポンサー企業であるビール会社、アサヒビールの利益も考える必要があると答えました。このエピソードは、権力を握る者にとって一番大事な国民は誰かということを、はっきり語っています。菅首相のいう安全・安心なオリンピックとは、私たち庶民の安全・安心ではなく、広い意味でのスポンサー企業つまり財界が安心して利潤・利益を確保できるオリンピックにすることだったのです。

私たちは、政治家が国民・国家のために、という言葉を使う時、国民とはどういう人たちのことで、国家構成員のなかのどのような人間たちのことなのか、注意深く観察する必要があります。国民のためと称して、大企業や大資本家のために政治を行う人間とその政党を、総選挙で、私たちの一票で追い落としましょう。庶民の命と生活が守られるような政治に変えていきましょう。

(以上)

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その5

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その4

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その3

 

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その2

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◆伊東市民アクション主催の「変貌する自衛隊」学習会のために作成したスライド・テキストを紹介します。その1

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◆6月のスタンディング・アピール活動も、先月に引き続いて降雨のため中止しました。スピーチ予定原稿を載せます。

2021.6.19

 菅・特高政治

三好康昭

菅首相は記者会見のとき、ほとんど視線を落としたまま原稿を読み上げます。質問を受けると、顔をあげ下から無表情に視線を相手に向ける。その陰気な視線に、私は、戦前、思想取締りに当たった特別高等警察、略して特高を連想します。自分の手の内を明かさず、相手の私事をさぐり、秘密をかぎまわり、時に強権を振るいながら、反戦・左翼思想家を弾圧したあの特高を。

菅政権が発足して9ヵ月の政治は、現代版の特高政治ではないでしょうか。

第一は秘密政治。学術会議の会員に推薦された学者6名を慣例を無視して任命しませんでした。任命拒否の理由を未だに明らかにしません。明らかにできない理由で、強権をふるう。これが特高政治です。

第二は、個人の私事への介入。マイナンバーカードを使って、個人の預金、所得、病歴、国家資格など、広範な情報をデジタル化して収集し、その情報を本人の同意なしで事業者に売る。情報管理と利権が結びつく。個人には自分の情報の訂正・削除権がありません。

第三は、人権よりも軍事の優位。米軍や自衛隊の基地、原発など重要施設の周辺の土地利用を、安全保障という名で規制する。土地利用にかかわる個人情報を調査・密告させ、財産権やプライバシーを侵害します。国体の名で個人の自由・権利を圧殺したあの時代のように。

 

一方では国民に対する説明責任を放棄し、他方では国民の私事に関する情報を集め”不都合な”人物を監視し取り締まる。「由らしむべし、知らしむべからず」の統治法です。その手段がデジタル技術であることが現代的であり、利権と結びつく点では新自由主義です。

菅・特高政治の行くつく先が憲法の改正です。自公に加え、維新、国民民主の賛成を得て改正国民投票法が成立しました。CM規制、最低投票率の規定など、重要な問題は素通りしたまま。衆参の憲法審査会でこれから改憲案の実質的審議が始まるでしょう。コロナ禍に便乗した緊急事態条項を呼び水に、本命の9条改正が議論の場に上がります。秋口に予想される解散・総選挙において、改憲政党に改憲発議に必要な2/3超の議席獲得を許してはなりません。

平和と人権を大事にし、軍事国家への歩みを阻止するために、強権的な菅・特高政治を終わらせましょう。力を合わせて頑張りましょう。

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◆5月19日のスタンディング・アピールは降雨のため中止しました。予定したスピーチの原稿を紹介します。

2021.5.19

 日本政府はなぜ核兵器禁止条約を批准しないのか

三好康昭

核兵器の生産、実験、使用を禁止する条約の批准国が50ヶ国を越え、条約としての効力を持つことになりましした。批准国は核兵器を作らない、使用しない、使用するぞと脅すこともしない、このことを国際的な義務として負うことになりました。

日本政府はこの条約を批准していません。その理由は、日本がアメリカの「核の傘」によって自国の安全をはかっているから、というものです。つまり、アメリカの核抑止力に依存しているので、その核兵器を違法とする条約には加わらないというわけです。

しかし、日本は非核三原則を掲げています。核兵器を持たない、作らない、持ち込ませない、という原則です。持たない、作らない、と言っているのですから、当然使わないことになります。非核三原則を国是とするなら、むしろ進んで核兵器禁止条約に賛成していいはずです。ところが、批准を拒否している。なぜでしょうか。考えられる理由は二つあります。一つは、非核三原則は一内閣の方針であって、いつでも廃棄できる。だから、将来、日本が核兵器を作ることになったら、この条約は邪魔になる、というもの。もう一つは、確かに非核三原則で日本は核を持たず、作らないけれど、アメリカの核抑止力に依存しているから、アメリカの利益に反する行動はとれない、というものです。現在の政府の態度を決めているのはこちらの理由でしょう。ここには日本外交の二つの特質が現われています。

一つは、人類の生存そのものさえ危うくする核兵器の破壊力に依存することで、いわば絶対悪に頼って自国の安全を確保しようとする思考です。軍事大国になることで安全が確保されると考え、ひたすら軍拡に走るのと同じ考えです。人類の将来、国のあり方の理想を見据えて、絶対悪に頼らない、軍事力に依拠しない国際関係を展望する思考が欠如しています。現状追認の思想です。

現実主義という名の現状追認の思考パターンは、アメリカの軍事政策に対する無条件の追随となってあらわれます。これが二つ目の特質です。アメリカの核と軍事力による世界戦略に、日本は日米軍事同盟を名として全面的にコミットしています。自衛隊の南西シフトによる中国封じ込めもそう、菅・バイデン会談での台湾有事への関心の表明もそうです。

日本政府が核兵器禁止条約を批准しない理由が、アメリカの核抑止力に依存する現状追認思想によるものである以上、私たちが政府に批准を求める理由もまた、核抑止力に依拠する安全保障の批判、軍事力増強路線に対する批判、日米軍事同盟の強化に対する批判と連動して、行われなければならない、と私は考えます。

以上

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◆5月1日の伊東市メーデー集会での訴えを載せます。

川奈に住んでいる三好と言います。個人として思うところを述べます。

私が訴えたいのは、コロナに便乗して勝手な政治をするな、ということです。個人の財産権、営業の自由を十分な補償もしないで平気で制限し、従わないと罰金だと脅す。そのくせ自分たちは隠れて宴会・接待をしている。こんな悪徳政治は許せません。

二つ目。緊急事態だと言って、憲法に改正して緊急事態条項を設ける必要がある、と言っている。今の緊急事態は法律に基づいて出されています。憲法の緊急事態条項というのは、法律なしで、行政府の一存で国民の権利や自由を制限できるようにするものです。二つは全く別物ですから、便乗商法というより詐欺商法に近いですね。便乗といえば、国民の関心がコロナに向いているのを幸い、国会では国民投票法の改正案が連休明けにも

憲法審査会で採決されそうです。憲法改正に向けての重要な一歩です。共産党の小池書記局長は、火事場泥棒だと言って批判していますが、その通りだと思います。

もう一つ重要な法案が国会にかけられています。デジタル化推進法案です。内閣にデジタル庁を設置して、ここに国民の個人情報を集中して集める。マイナンバーカードを保険証として使えるようにする。免許証と一体化する。預金通帳と紐づけする。こうして集められた膨大な個人情報をデジタル庁で一元的に管理します。私の所得も預金額も、病歴も交通違反歴も、全部ここに集められる。データーを突き合わせばその人がどういう人かわかる。三好は所得の割に預金が少ない浪費家だ、といったことが分かるわけです。個人は国家の前に裸にされプライバシーがなくなる。それだけではありません。集められた情報は個人の同意なしで、他の行政目的のために使われます。民間企業にも値をつけて提供されます。先日、横田基地の騒音訴訟をおこした人の個人情報を防衛省が事業者に販売しようとしていたことが明るみに出ました。本人の知らないところで、その人の情報が売買されるのです。他方で、個人の側には同意の拒否や情報の修正・削除を要求する権利がありません。私たちは行政の便宜のために、プライバシーを手放すわけには行きません。勝手に自分の情報が売買されることに黙っているわけには行きません。デジタル化法案反対、コロナに便乗した悪徳商法をやめろ、と言いたいです。

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◆3月19日伊東市観光会館前で行われたスタンデイグのスピーチ予定原稿を載せます。

デジタル監視法案

三好康昭

今開かれている国会にデジタル化を推進するデジタル改革関連法案が提案されています。菅首相の肝いり法案で、政権は今国会で何としても成立させようとしています。法律ができれば、内閣にデジタル庁を設置し、ここに国民の個人情報を集中的に集め、一元的に管理するシステムを作ります。一億の国民にマイナンバーを貼り付けて、個人を数字で識別します。そしてその個人にかかわる情報をマイナンバー・カードを使って集め、デジタル庁で一元的に管理します。今、マイナンバー・カードは税の申告、社会保障、災害対策の三つで使われています。情報は担当機関ごとに分散して管理されています。法案はその他のいろいろな情報をマイナンバー・カードを使って集め、デジタル庁で集中して管理するものです。預金口座とマイナンバーを結びつけます。カードは健康保険証の代わりをし、将来は運転免許証と一体となります。医師や看護師の免許など国家資格もマインバーカードで管理します。こうして集められた膨大な個人データがシステム化されてデジタル庁で管理されます。私の所得金額も預金額も、病歴も運転事故の履歴も、国家資格も、ここに集められます。データを突き合わせれば、三好は所得の割に預金が少ない浪費家だ、といったことがわかるわけです。集める情報が多くなればなるほど、個人は国家の前に裸にされ、プライバシーが無くなります。個人情報は本人の同意なしで他の行政手続きのために使われることもあります。今でも、警察は令状なしで特定の個人にかかわる情報の提供を求めることができます。日本では個人情報を保護するシステムが弱いのです。法案に反対する弁護士グループは、この法案をデジタル監視法案と呼び、日本を監視社会にしてはならないと訴えています。
行政の便宜のために、プライバシーを手放すことはできません。自分の知らないところで、自分の情報が勝手に使われることに黙っているわけには行きません。デジタル監視法案に批判の声をあげましょう。

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◆一昨日、2月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング・アピールのスピーチ原稿を掲載します。

天災と人災の多発する国

三好康昭

まもなく東日本大震災から10年を迎えます。節目の10年を前に、またしても福島沖でマグニチュード7.3の大地震が起こりました。幸い死者は出なかったものの、150人以上が負傷し、東北新幹線や常磐自動車など大動脈が切断されました。今回の地震は10年前の巨大地震の余震だそうです。10年もたってまだ余震とは驚きです。つくづく日本列島は地震・火山列島だと思わされます。この活動中の地盤の上に今なお33基の原子力発電所が立地・運用され、9基が稼働中です。関西電力はさらに原発を動かそうとして、40年経過した福井県の美浜と高浜の老朽原発の再稼働を地元に申請しました。町長が同意し知事も認める意向です。福島の惨事をうけて、原発の寿命は原則40年と決められたにも関わらず、10年たってこの原則はなし崩しにされつつあります。国家の安全保障だけが声高に叫ばれ、人間の安全保障は顧みられません。

人為的災害も起きています。森喜朗オリンピック組織委員会会長は、JOCの評議委員会で女性理事が多くなると会議に時間がかかってしまう、と女性蔑視の発言をし辞任に追い込まれました。自身の本音を場をわきまえず語るのはこの人の得技です。首相在任中の2000年には「日本は天皇を中心とした神の国だ」と発言をして批判を浴びました。驚くのはこうした発言をした人が、何十年も要職に在り続けたことです。すぐ思い浮かぶのは麻生太郎財務大臣です。ナチスの手口をまねて憲法を変える方法があると発言し、物議をかもしました。森友問題で省内で文書改ざんが行われ、事務次官のセクハラ疑惑が明るみに出たとき、大臣は「セクハラ罪という犯罪あるのか」と居直りました。結局、佐川も福田事務次官も辞任に追い込まれましたが、一番の責任者の麻生大臣は居座り続けました。大臣の任免権を持つのは首相ですが、安倍首相は麻生をかばい続けました。その安倍首相は「桜を見る会」前夜のパーティに安倍事務所は一切お金をだしていないと、国会で100数十回もの嘘をつき通しました。森も麻生も安倍も同じ穴のムジナです。

こういう連中が権力を握っているのはなぜでしょう。私たちが喉元過ぎれば熱さを忘れる一過性の国民だからでしょうか。いえ、私たちは決して忘れません。どこまでも権力者の嘘を、差別意識を、無責任と居直りを追求し、彼らに責任を取らせるために声をあげ続けます。一緒に頑張りましょう。

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◆昨日、1月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング・アピールのスピーチ原稿を掲載します。

歯止めのない軍事費の増大

三好康昭

コロナ感染拡大のニュースの影であまり報じられていませんが、日本の軍事費が歯止めなく膨張しています。来年度の政府予算案で防衛費は5兆3422億円。7年連続の史上最高額の更新です。これとは別に支払いを翌年以降にまわす後年度負担の額が何と5兆5300億円。本予算を上回るローンの額です。金額もさることながら、問題なのはその使い道です。予算化したおもな兵器と金額を紹介します。

①陸上自衛隊が保有する12式地対艦滑空誘導弾―地上から艦艇を攻撃するミサイルですが、その射程を現在の100キロから数百キロに延ばす。その開発費が335億円。

②戦闘機に搭載して陸上や艦艇を攻撃するスタンドオフミサイルを取得する費用149億円。スタンドオフミサイルとは敵の攻撃の射程圏外から相手を攻撃できる長射程の巡航ミサイルのことです。

③このミサイルを搭載するステルス戦闘機F35を2機取得する。費用は357億円。最終的にはF35AとBを合わせて147機をアメリカから購入します。その総額は維持費を含めると何と6兆6千億円にもなるそうです。

④F35B戦闘機を載せる護衛艦を空母化するための改修費203億円が予算化されました。

数字の紹介はこれぐらいにします。このような装備品の取得と改修から何がわかるでしょうか。長射程のミサイルを戦闘機に載せて発射すれば、日本の領空から北朝鮮はもちろん中国の沿岸から内陸部まで攻撃できます。護衛艦を空母化すれば、相手国の近くの公海まで戦闘機を運び、そこから出撃して敵の基地や艦艇を攻撃できます。つまり、来年度の予算案が目指しているのは敵基地を攻撃できる兵器を保有することです。

安倍前首相が遺言した敵基地攻撃能力の保有は、「引き続き検討する」と先送りされました。軍事戦略として敵基地攻撃能力を保有する決定は見送られましたが、実態として敵基地を攻撃できる攻撃型の兵器を着々と装備しています。憲法9条の下で、政府が合憲性の根拠としてきた『専守防衛』の自衛隊は、攻撃できる自衛隊、先制攻撃できる自衛隊へと変質しつつあります。昨日招集された通常国会で、この問題をどこまで追求できるか、野党の力量が問われます。私たちも、コロナ対策とともに、この面での国会審議を注目したいと思います。

(以上)

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◆12月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディング・アピールのスピーチ原稿を掲載します。

住民投票をめぐって

三好康昭

原子力発電で使われた使用済みの核燃料棒は、核のゴミと言われます。ものすごい放射能があります。地下深く埋めて何万年も安全に管理しなくてはいけません。こんな危険なゴミを受け入れるところはどこにもありません。ゴミ捨て場がなければ原発の運転は行き詰まります。政府は人参をぶら下げてゴミ捨て場の立候補地を求めました。今年、8月北海道の寿都町が名乗りを上げました。文献調査に応じるだけで20億円、次の概要調査では70億円の金が入ります。町長は「20億円は魅力的だ」と餌につられたことを正直に言っています。しかし、そこに住む2900人の住民は不安です。住民説明会では反対意見が噴出しました。町長は動じません。「肌感覚で住民が賛成しているとわかる」と。住民は「肌感覚ではなく、投票で民意を確かめて欲しい」と条例の制定を求めます。9人の町議会は賛否同数、議長決済で請求を棄却しました。住民は核のゴミ捨て場になるかどうかという子々孫々に及ぶ重大な問題について判断する機会を奪われました。

群馬県に草津町という温泉で有名な町があります。町議の女性が町長に性的嫌がらせを受けたと告発しました。町長は真っ向から否定し、名誉棄損で訴えました。町長派の議員が多い議会はこの女性議員の除名を決議します。しかし、県の審査委員会は除名決議は無効であると裁決しました。すると今度は町議のリコール運動を起こします。町を挙げてのリコール宣伝の結果、圧倒的多数がリコールに賛成し議員は職を失いました。今月6日のことです。セクハラの事実はわかりません。しかし、わからないことに白黒をつけるため多数派が動員されたことに危うさを感じます。まるで魔女狩りのように攻撃・誹謗し職を失わせました。

寿都町では町民の運命を左右する重大問題について住民の意志が問われず、草津町では一人の議員の身分を失わせるために住民投票が使われました。多数の力で少数者の声を押しつぶすのは民主主義ではないと思います。権力者の肌感覚を主権者として批判できるのが民主主義だろうと思います。二つの町の事例は民主主義の大切さと危うさを教えてくれます。私たちは何よりも少数者の人権は守るために民主主義を生かしていきたいと思います。そのために、声をあげていきましょう。

以上です。

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◆11月19日のスタンディング・アピールに向けたスピーチ予定原稿を紹介します。

安倍から菅へ

三好康昭

安倍首相が退陣を表明して3か月。安倍がやめ菅に変わったことにより、憲法改正が遠のいたような感じがありますが、これは錯覚で、改憲の動きは着実に進んでいる、と私は思います。

安倍は自らが先頭に立って、改憲の旗を振り続けました。国会で、記者会見やイベントで、ことあるごとに改憲を訴え続けました。安倍のこうした言動とパーフォーマンスが、逆に国会の内外で警戒感を生み、改憲反対の運動を強めました。「安倍改憲NO!」というのが私たちのスローガンでした。ある意味で、運動をやりやすかったのです。

菅はどうでしょう。菅も憲法改正を政治課題に掲げていますが、この男は表には出ません。その代わり、改憲シフトを周到に進めています。衆議院の憲法審査会会長に着いたのは改憲4項目を取りまとめた細田博之氏。最大派閥のトップです。自民党の改憲推進本部には派閥の領主クラスをずらりと並べ、本部長には最強硬派の衛藤征士郎氏。ここで、改憲4項目を条文に仕上げたうえで憲法審査会に提出する段取りです。

その憲法審査会が動き始めました。国民投票法改正案の審議に入りました。維新はもちろん、国民民主党がこの動きに乗っています。改正案が成立すれば、いよいよ憲法改正発議案の審議に入ります。

このように菅首相は自ら旗を振りませんので、外からは改憲の動きが見えにくい。私たちは表面に現れた動きだけでなく、実際に進行している事態に目を向ける必要があります。

その一つが「敵基地攻撃能力」の保有です。6月のイージスアショア配備の断念から始まった動きですが、その代替策を越えて、先制攻撃をも視野に入れた戦略への転換が始まっています。ここにきて二つの点が明らかになってきました。

一つは仮想敵が北朝鮮ではなく、中国であること。北からのミサイル攻撃を防ぐため北のミサイル基地をたたくのではない。主要な目標は中国です。

もう一つ明らかになってきたのは、攻撃対象はミサイル基地そのものではなく、基地をコントロールする司令部やレーダー管制所が対象であるということ。中国側の軍事情報は米軍からもたらされます。米軍の情報に基づいて、自衛隊が中国の軍事拠点を攻撃できる能力を保有する。つまり、自衛隊が米軍の指揮下で、対中国との関係で矛の役割を担う。これが「敵基地攻撃能力」保有が意味していることです。9条違反どころではない。国際法違反の軍事戦略作りが今、米国と一体で進められています。私たちは菅の隠れた顔の背後にあって、現在進行しつつある事態を知る必要があります。これまで以上に学習と運動を進めてこの動きに待ったをかけましょう。

 

(以上)

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◆10月19日、伊東市観光会館前で行われたスタンディングのスピーチ原稿を掲載します。

二人の「杉田」

三好康昭

今、「二人の杉田」が政治的紛糾の火種になっています。一人は「杉田水脈」。自民党の衆議院議員。彼女は自民党の部会で「女はいくらでも嘘をつく」と言いました。男だっていくらでも嘘をつきます。森友事件で佐川理財局長はどれくらい嘘をついたでしょう。ただ、「嘘つきは女性だけではない。杉田議員の発言は女性差別だ」と、このようにとらえるのは正しくありません。彼女の発言は、性暴力を防ぐにはどうしたらいいかを論議する場でされたものです。性暴力の被害に遭う弱い立場の人をさらに攻撃し貶めるため、「女はウソつきで信用できない」と言ったのです。少数者、弱者に刃を向け侮蔑し辱めるのはこの議員の本性です。性的少数者LGBTは生産性がない、子どもを産めないから公的な保護は必要ない、と言いました。従軍慰安婦は性奴隷ではない、好きでなった売春婦にすぎない、とも言いました。権力を笠に着て、弱い人を攻撃するのが杉田水脈の役割です。彼女を議員に取り立てたのは安倍晋三その人であり、日本会議の櫻井よしこでした。

もう一人の杉田は、官房副長官の杉田和博です。警察官僚から安倍政権で事務方トップの地位に抜擢されました。菅官房長官と組んで、官僚人事だけでなく大臣のクビキリにも参与し政権のリスク管理を担いました。今回の学術会議会員の任命拒否を実質的に仕切ったのは彼です。6名の学者をなぜ任命しなかったか。菅首相は理由を明らかにしていません。しかし、誰もがその理由を知っています。6人が安保法案等に反対したからです。政権を批判するような学者は許さない。この基本方針を菅と杉田が共有し、具体的な人選を杉田が行い、菅が了承したわけです。政権を批判する者、政府に口答えする者は官僚であれ、学者であれ、排除する。いかにも警察官僚らしい発想です。しかし、公の地位は、時々の政府のものではありません。国民全体のものです。気に食わないものを排除し、気に入ったものを優遇する、その意味での権力の私物化は安倍政権の専売特許でした。菅政権もこの特許を受け継いでいます。

権力を使って弱者をいじめ・排除する、一般的な言葉で言えばパワハラ。大は国政から、小は伊東市民病院まで、このようなパワハラに満ちています。私たちは、法に則った権力の公正な行使を求め、抗議し続けなければなりません。そうでなければ、二人の「杉田」のような弱者いじめを社会からなくすことができません。

(以上)

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◆安倍政権(政治)批判の後半を載せます。(敬称、省略)

2020.8.31

   安倍政権の78ヵ月-後半-

                    三好康昭

(2)立憲主義の破壊、手続きの軽視

憲法と法律に基づく政治を立憲主義という。安倍政権はことあるごとにこの原則を無視した。2015年9月、それまで憲法上許されないとされてきた集団的自衛権を数の力で合法化した。憲法53条に反して、野党が要求する臨時会の召集を拒否し(2017年)、今も拒否している。意に沿う人物を検事総長にするため検察庁法を無視して、検察官の定年を延長する閣議決定をした。事後的に合法化するため検察庁法を改正しようとしたが、世論の反発を受け断念した。このような法規範からの逸脱は、行政手続きの軽視と同根である。国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん、「桜を見る会」の招待者名簿の破棄、厚生労働省の杜撰な「働き方改革」法案の資料。国会における数々の虚偽答弁と事実の隠蔽(もりかけ、さくら)。責任をとらない所管大臣(麻生)。総じて、安倍政治は民主的手続きを尊重しなかった。それが可能であったのは、一つは国会における与野党の圧倒的な議席差、次いで翼賛的なマスコミ報道(特にNHK)、さらに最も大きい要因として、国政選挙の低投票率に示される国民多数の政治的無関心。

 

(3) 長期政権の要因

 以上に述べたような悪政にも関わらす、7年8ヵ月もの長期にわたって安倍政権が続いたのはなぜだろうか。小選挙区制などの制度的要因は措いて、国民の側の問題として指摘できることを上げたい。

①一つは国民、特に若い人たちの間に、排外的なナショナリズムを受け入れる層が一定程度存在していること。反韓・反中の背景には日本の経済的地位の低下がある。劣等感の裏返しとしての反発・嫌悪、愛国。加えて北朝鮮による拉致があった。拉致問題は安倍政権を支える生命線の第一。2017年10月の総選挙で安倍を救ったのが「北朝鮮発、国難突破」の宣伝だった。隣国への強硬姿勢が―歴史の忘却と一体となって―支持される素地があった。

➁アベノミクスの実態とは別に、円安と株価の上昇を経済界主流が歓迎した。株価は安倍の第二の生命線だった。株価を高めるため、日銀や年金機構によるなりふり構わない市場介入が行われ、今や株価は官製相場と化している。株高から得られる利益は大企業の内部留保を膨らませ、法人税減税策と相まって財界の安倍政権支持の源泉だった。

➂2020年のオリンピックを東京に誘致するため、安倍は東京の安全性を強調して福島の汚染水は完全にコントロールされていると演説した。この演説のためかわからないが、2020年オリンピックは東京に決まった。安倍の「アンダーコントロール」の言明が虚偽であることを多くの国民が知っていただろう。しかし、結果オーライ。安倍の虚偽を批判する声はオリンピックを歓迎する声にかき消された。「嘘も方便。儲かるならいいじゃないか」と。

安倍は機会主義者だと思う。典型は靖国参拝。2013年12月、安倍は公約通り靖国神社を参拝した。中国・韓国からの抗議はともかく、アメリカから「失望した」とダメだしをされ、以後安倍は靖国参拝をとりやめた。原理・原則は棚に上げ、結果が良ければそれで良しとする機会主義。法律で決まっていた消費税増税を凍結し、凍結の是非を争点に解散し、二度まで総選挙に勝利を得た。結果オーライのご都合主義が道義の退廃を生む一因となったのではないか。責任を取らない大臣、免れて恥じない国会議員(甘利 正ら)、そして、「所詮そんなもの」と白けた目で政治を見る有権者。彼らの多くが選挙で棄権にまわり、結果として政権の延命を助けた。こうした人たちが、コロナ禍に直面して初めて政治をわが事として受け止め、物言うようになった。それが、安倍の政治生命を縮める一因にもなった。

 

(4)まとめ

安倍長期政権の功罪をまとめよう。もっとも罪深い点は、権力への追従、私利・私益の追求、弱者にたいする自己責任論、公正・正義に対するシニカルな態度の広がり、総じて社会ダーウィニズムの現代版=新自由主義的価値観、を政治的に流布させ、公正さへの道義感覚をマヒさせたことにある、と私は考える。功の面ではどうだろう。安倍政治に対する批判・抵抗勢力として、国会における野党共闘だけでなく、安倍に批判的な市民(個人と団体)が政党と協力して、政治運動の一翼を担う動きを生んだ。安倍政治の逆説的な功といえようか。

 

※原発再稼働を推進した政権でもあった。「世界一厳しい規制基準」などと、例によって虚偽宣伝しつつ、各地の原発を次々に再稼働させた。福島の「復興」を演出する一方、国内立地が困難になった原発プラントの海外への輸出を企んだ。政権の道義感覚のマヒを端的に示す。

 

(以上)

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◆7年8ヵ月の安倍政権(政治)を批判的に論評しました。二回に分けて載せます。(敬称、省略)

2020.8.31

   安倍政権の78ヵ月-前半-

                    三好康昭

【Ⅰ】安倍政権の78ヵ月-総論-

安倍晋三が2012年に政権に復帰してから現在まで7年8ヵ月余。かくも長く政権の座に居座り続けることができた理由は何だろう。また、この間に日本の社会に何が起き、何が変わったのか。安倍政権7年8ヵ月の概括的な特徴をまず見ておきたい。

①安倍の登場によって、歴史修正主義=帝国日本を肯定し評価する歴史観、に共鳴する人たち-日本会議に連なる人たち-が重用され政界の主要勢力に登場した。(ランダムに名をあげると、麻生、菅、加藤、下村、萩生田、稲田、高市、古屋圭司、衛藤晟一、……)。社会全般に復古的動きが強まった。

・道徳の教科化など道徳教育の推進→改正教育基本法の実質化。

・排外主義的ナショナリズムの高揚→反韓・反中国、反北朝鮮キャンペーンを煽る。

→在特会などのヘイトスピーチの広がり

・安倍自身が、過去の日本の植民地支配の反省や侵略の事実認識を曖昧にし、慰安婦問題や徴用工問題に正面から向き合わなかった。

➁政権の復古的価値観への傾斜には二つの壁・抵抗があった。一つは戦後民主主義=憲法的価値観を支持する人たち。もう一つはアメリカ。アメリカは政権の歴史修正主義的動きが「東京裁判」否定にまで進むことには待ったをかけた。2013年12月の安倍の靖国参拝にオバマ政権は「失望」の意を表明した。また、アメリカの新聞への従軍慰安婦否定の意見広告に賛同署名した安倍への批判が高まった(2012年11月)。

➂安倍の選択は、自身の戦前的価値観を封印して、アメリカが許容する範囲内で、戦後民主主義的価値観を否定することだった。それがすなわち、憲法9条の非武装規範を骨抜きにする日米の軍事的一体化、アメリカへの軍事的従属化路線の推進だった。

 

【Ⅱ】安倍政権の78ヵ月―各論-

(1)平和憲法の蔑視、アメリカへの軍事的従属化

憲法改正は自民党の党是であり、中曽根のように公然と「戦後政治の総決算」を掲げた先覚者もいた。が、歴代の自民党の総理のなかで、安倍ほど感覚的・生理的に憲法嫌悪感を表明した総理はいない。憲法を尊重する義務を負う総理が「みっともない憲法」と罵るのは異常である。「自衛隊員がかわいそう」などと、情緒に訴える改憲論法は安倍に特有だ。

アメリカとの軍事同盟の強化はアメリカ主流派も望むところである。その限りで、国内政治でなりふり構わず強権を発動した。

・2013年12月 特定秘密保護法の強行採決。

・2015年9月、新安保法制の強行採決。

※集団的自衛権を容認する法案を作るため、法制局長官の人事に介入した。独立機関(法制局も半ば独立機関)の長に、人事慣行を無視して意に沿う人物を据える例は他にもいくつかあった。NHK会長となった籾井、日本銀行の総裁に任命した黒田。なお、高級官僚の人事を内閣が一元的に掌握するために14年5月に内閣人事局を作った。ここから官僚の忖度がはびこった。

・2017年6月、共謀罪法の強行採決。

・沖縄県民の民意を無視して、辺野古新基地建設を強行。

・自衛隊と米軍の一体的運用。共同軍事演習、基地の共同使用、統合司令部の設置。

※2015年9月に集団的自衛権が法制化される前、安倍は憲法96条の改正手続きを変更することを目論んだ。これによって9条の明文改憲を達成しようとした。が、この策が「裏口入学」などと批判され、実現困難となったため、安倍は解釈改憲の道を選び、新安保法制を強行した。アメリカにとっては、これ以上憲法改正を迫る必要性はなくなった。衆・参の2/3以上の議席を占めながら、憲法審査会の審議を強行突破するまでの強硬策を取らなかった理由はここにあった、と私は考えている。

(つづく)

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◆8月19日のスタンディング行動の際の、スピーチ予定原稿を掲載します。

 積極的平和主義の詭弁

三好康昭

8月15日の戦没者追悼式典で、安倍首相はこう述べました。

「我が国は、積極的平和主義の旗の下、…世界が直面している課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意です。」

積極的平和主義とはどういう意味でしょうか。この言葉は、2013年に作られた国家安全保障戦略で安全保障の基本理念として掲げられました。この基本理念にしたがって作られたのが、2015年の新安保法制です。憲法に反して集団的自衛権を合法化し、自衛隊を世界のどこにでも派遣できるようにしました。平和主義とは名ばかりで、実際は日米の軍事同盟を強化し、その射程を全地球規模まで拡げることが、積極的平和主義が意味していたことでした。

では、今年、終戦75周年の追悼式典で、この言葉が使われたのはなぜでしょうか。私は、イージスアショア配備計画が中止になったことと関係している、と考えます。自民党はイージスがダメなら代わりに、敵基地攻撃能力を保有すべきであると、政府に提言しました。提言を受けて、安倍首相は「新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく」と答えました。その第一歩が8月15日の追悼式典での「積極的平和主義」への言及だったと思います。

一体、敵基地というけれど、敵とはどこの国を想定しているのでしょうか。北朝鮮か。中国やロシアの軍事基地も含むのでしょうか。

ミサイルを相手国の領域内で阻止するためには、基地の所在地だけでなく、移動式ミサイルの現在位置を知らなければなりません。発射の準備行動を探知し、ミサイルの種類・目標を知り、何より発射の意図・目的を知らなければなりません。こういう能力を自衛隊は持っていません。頼るのは米国の統合ミサイル防衛システムです。米軍が持たらす情報に依拠して、自衛隊が敵の基地を攻撃する。その報復に日本の原発が敵のミサイル攻撃にさらされる。これが安倍首相のいう積極的平和主義の内実です。

今年12月に国家安全保障戦略が改定されます。安倍政権が続く限り、敵基地攻撃能力の保有を国家の基本戦略に組み入れる可能性が十分にあります。その理由づけには積極的平和主義という言葉が使われるでしょう。私たちはこの曖昧な言葉に隠されている軍事のリアル、戦争の危険をしっかりと知る必要があります。

(以上)

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◆7月30日、「市民のための法律入門」と題する小規模な学習会で、新型コロナについて思うところを述べ合いました。そこに提出したレポートを紹介します。

コロナ断想-安心への全体主義-

三好康昭

(1)コロナと私

退職者にはコロナの影響はほとんどない。テレワークを始める必要はない。日常の外出を控えるほど感染を警戒することもなかった。自分一人の行動については、大きな変化はなかった。しかし、他の人に働き掛けたり、他の人と一緒に行う市民活動については、制約を受けざるを得なかった。

第一に、対面での署名取りができなくなった。4月6日以降、改憲発議に反対する署名取りをストップしたままである。

第二に、5月の憲法集会と映画会を中止した。また、少人数の学習会も延期した。

毎月の「19日行動」=スタンディング・アピールは継続して実施したが、参加人数は減少した。市民活動は人が集まって、人に働きかける行動が基本なので、対人接触が制約されると、思うような行動ができない。オンラインでの活動までは試みなかった。

6月に入って公共施設の利用が緩和されつつあるので、少人数の学習会などを開いて活動を持続させていきたい。

 

(2)コロナで見えたこと、生じたこと

①無駄をそぎ落とし、効率性を追求する新自由主義の経済・財政政策が、想定外の事態に対して脆弱な社会構造を作り出していたことが明らかになった。内田樹が言うように新自由主義はリスクヘッジの仕組みを構築してこなかった。無駄を省く設計で、遊び・余裕がない制度となっている。選択と集中の財政政策が、保健所の縮小、公立病院の統廃合、医師数の削減、医師の長時間労働、等、公衆衛生の貧困をもたらした。また、規制緩和・雇用の柔軟化政策によって増大した非正規雇用や外国人労働者が、セイフティネットが張られていない社会に投げ出された。

コロナは人を選ばないが、コロナに罹患するリスクはその人の職業や勤務形態によって異なる。テロワークが可能な職場、対人接触が避けられない仕事。業種の違い、雇用形態の違い…。格差社会では、感染のリスクとダメージが増幅される。普段は見えにくい格差を見える化した。コロナが明らかにしたのは新自由主義社会の脆弱性である。

➁コロナ感染が拡がると、人々は国家に強権の発動を求めた。緊急事態宣言の早期発動を求めた。休業要請ではなく、指示・命令を求めた。さらに、入国制限から都市封鎖まで。こうした声に呼応して、安倍首相は2月27日に小・中・高の全国一斉休校を要請した。驚くべきことに、この要請に97%の学校が従ったということである。人々が国家の強権にすがったのはなぜか。お上頼みの臣民意識のせいだろうか。それよりも、人々に自主的に判断できるだけの情報が与えられていなかったからではないか。信頼できる情報がないところでは、人々は不安に駆られ噂に右往左往する。マスクがない、消毒液が払底している、トイレットペーパーがないと聞けば、パニックになりスーパーに殺到する。

第二に、自治体を含めた市民社会の自治の力の貧弱さがある、と思う。一斉休校はあくまで要請であって、休校するかしないかの決定権は教育委員会にある。教育委員会の独自な判断で、休校にするところ、しないところがあってもいいはずなのに現実は一斉に右へならへ。子どもの感染リスク、休校にした場合の家庭や地域の受け皿、等を地域ごとに分析して決定を下す能力と意志に欠けた。同じことは、休業要請の範囲や補償額についても言える。

➂国家の強制力を補完するものとして社会の同調圧力があった。要請に従わない店や人には社会的非難が向けられ、自粛警察という言葉まで生まれた。安全と安心が脅かされる事態に直面して、人々は互いに監視の目を光らせリスクゼロの圧力をかける。危機においては国家と社会が共同して逸脱を許さない「安心への全体主義」を作り出す。

 

 (3)コロナ後の社会

①「新しい生活様式」の推奨といった形で、人々の行為・行動の道徳化が拡がる、と思う。法律による強制とは別に、道徳やマナー違反に対する社会的非難によって逸脱行動を規制する圧力が強まり、社会の画一化が進む。

➁ デジタル技術と結合した国家の後見的役割が増大する危険が高まる。監視カメラやマイナンバー制を使って、一人一人の行動履歴や収入・財産を国家が一元的に把握する監視社会化が進むのではないか。安全・安心を名として権力が肥大化し、個人の自由の領域が縮減する。

➂ウイルスのグローバルな感染拡大に対して、国際社会はどう対応するか。一国主義の防疫体制強化に走るか、国際的な防疫システムの構築に向かうか。米中の軍事的対立が強まる中、人間の安全保障を高めるための国際社会の協調体制作りも容易には進まないだろう。あるいは、感染拡大を防ぐグローバルな協力体制作りが進展し、それが強国間の軍事的対立を緩和するといった方向へと転回するだろうか。

(以上)

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◆7月19日の伊東市観光会館前でのスタンディング・アピールの際に行ったスピーチの原稿を載せます。

イージスアショア配備中止の理由

三好康昭

6月15日、河野防衛大臣はイージスアショアの秋田・山口への配備を撤回すると発表しました。その後の閣議決定を経て、正式にイージスアショアの配備は中止になりました。なぜ、中止したか。河野大臣は、ミサイルを発射した後、切り離されたブースターを演習所内に落下させる装置を開発するのに、多額のお金と年数がかかることがわかったからだ、と説明しています。しかし、この説明は眉唾ものです。ブースターがどの地点に落下するか、といった基本的なことが今までわからなかったはずはない。本当の理由は別にあると思います。

一つはイージスアショアの導入がアメリカ政府からの有償軍事援助に基づいていたということです。アメリカの軍需企業から日本政府が購入するのではなく、アメリカ政府から買う。このFMSという兵器調達方法はアメリカにとってとても有利です。当初の契約額はどんどんかさ上げされ、納期も度々繰り延べされます。オスプレイもF35戦闘機の購入の時もそうでした。日本政府は後年度負担や補正予算を組んでアメリカが吊り上げた高い値段で買ってきたのです。

今回ブースターを安全に回収するための追加費用は2000億円、納期は10年先。本体の一基1700億円を上回る追加額です。さすがに河野大臣も倍額を吹っ掛けられては応じられない、と反発したのだろうと思われます。同じ理屈で、沖縄の辺野古基地建設もすぐに中止すべきでしょう。

イージス撤回のもう一つの理由は、安倍首相がトランプのご機嫌取りのために導入を決めたからです。2017年のトランプ訪日の際、安倍がしっぽを振って軍需品の爆買いを約束した結果です。現場の軍事的合理性に基づく要求ではなかったのです。

一体、ものすごいスピードで飛んでくるミサイルを地上からミサイルを撃って打ち落とすことができるでしょうか。軍事専門家は、単発で飛んでくるミサイルなら可能だが、同時に何十発も飛んでくるミサイルを残らず打ち落とすことは不可能だ、と言っています。出来もしないことのために何千億円もかけるのはばかげています。イージスアショアの導入を断念したのは当然です。

ところが、その後、事態はもっと危険な方向に進んでいます。イージスがだめなら敵のミサイル基地を攻撃できる能力を持て、発射する前に根拠地をつぶせ、と危なっかしいことを自民党国防族の連中が言い始めました。専守防衛を逸脱し、日本を戦争国家に押し進めるこうした動きに断固として反対していきましょう。

以上です。

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◆伊東にお住まいのMERIIさんの「ジョージフロイドに捧げる」詩を紹介します。

日本の片隅からジョージフロイドに捧げる

2020.6.3   MERII

世界の心

ジョージフロイド

ジョージフロイド

その名を

世界は忘れない

涙の中で 君の名を呼ぶ

ジョージフロイド

ジョージフロイド

 

君の命がつぶされたその場所は

無数の花で囲まれた

悲しみと怒りと憤りに満ちた無数の目が

その場所を見つめて

燃えた

黒い肌の男は

捕らえられ踏みつけられ

そして息することさえも

許されないと言うのか

白い肌の男は

正義の警官だと胸を張り

人の命を虫けらのように押しつぶして消せるのか

行き場のない激しい苦しい感情が

積もり積もって突き上げて

地上にあふれる

地上には 遂に

暴動や略奪が生れてしまう

 

しかし

カメラはとらえていた

白い肌の警官たちが 各地で

黒い肌の男たちと共に ひざまずき

ジョージフロイド

君のために祈りを捧げていた姿を

そしてまた カメラはこんな場面を伝えた

ジョージフロイド

君の弟が群衆に向かって叫んだのだ

やめてくれ

君たちは何をしているのか

君たちの気持ちはよくわかる

しかし 暴動や略奪の抗議は意味がない

兄はもう戻らない

平和な行動をとってほしい

お願いだ

ジョージフロイド

ジョージフロイド

カメラの中に世界は見たのだ

君を囲んだ花々と共に

差別を許さず

平和と連帯を愛する心を

君の名はそのシンボル

世界の心のシンボルだ

 

ジョージフロイド

ジョージフロイド

その名を心に刻んで生きていこう

その名を大切に広げていこう

ジョージフロイド

ジョージフロイド

その名がやがて

世界の喜びの中で

輝ける美しい日まで

 

(以上)

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◆伊東市民アクション主催の「安保・地位協定学習会」の第二回報告文を載せます。(後半)

20.3.27  第2回学習会

日米安保60年-変わらないこと、変わったこと-

三好康昭

【Ⅱ】変わったこと

1960年から安保条約の本文は何も変わっていない。それから60年、条約の内容は大きく変わった。一言でいえば、上述の(2)アメリカにとって安保条約の意義」を増々高める内容へと変えられていった。一つは、条文の空洞化によって、二つには条約とは別のガイドラインや日米合意によって。

(1)条文の空洞化

)事前協議制 (赤旗「安保改定60年」➁参照) 

60.1/19 条約第6条の米軍の基地に使用に関する岸・ハーター交換公文(注:条約と異なり国会の承認は不要。が、条約に準じる効力がある国家間の合意。)

・駐留米軍の編成・装備の重要な変更

・日本の施政権の外で「戦闘作戦行動」を行う場合。

事前協議が必要。が、これまで事前協議が行われたことは一度もない。

☞核兵器搭載艦船の寄港、核弾道ミサイルの配備も自由に行われた。

ベトナムや中東への出撃ももちろん事前に協議されなかった。

要するに、「安保改定でも米軍は行動の自由を全面的に確保した。『事前協議』は『対等な日米関係等』を装うための虚構にすぎなかった」。(60年➁)

 

)「極東の範囲」のなし崩しの拡大 (60年➂参照)

在日米軍は「極東の平和と安全」に寄与することが目的だった。(条約第6条)

「極東」の範囲は60年の安保国会で「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域」とされた。

しかし、その後ベトナム戦争や湾岸戦争・イラク戦争で、米軍は自由に日本の基地から出撃している。今や、安保条約の対象範囲は中東から地球規模へと広がっている。安保のグローバル化にとってエポック・メイキングな取り決めは、冷戦終結後の「安保再定義」である。この取り決めで、安保条約は「極東の安全」から「アジア・太平洋の安全」に寄与するものに変えられた。

 

(2)日米合意による安保条約の変質

)安保再定義

・95年2月、「東アジア戦略報告」(ナイ・レポート)発表

→「日本との同盟はアジアにおける米国の安全保障政策の要」

・96年4月、橋本・クリントウの「日米安全保障共同宣言」=安保再定義

→「安保体制がアジア太平洋地域の安定に欠かせない政治的、軍事的重石」

☞冷戦終結後の安保条約の意義を再定義し、日米同盟の強化をうたった。

 

)日米軍事同盟の深化 (60年⑦参照)

日本の経済発展により防衛予算は膨らみ(60年⑤)、自衛隊は世界有数の軍事力を備えるようになった。他方、アメリカの経済力は相対的に弱まり、海外に展開する兵力の縮小と経費の削減を迫られた。アメリカの戦力を補い代替する役割を自衛隊が担った。これを「日米同盟の深化」と言葉ではいうが、実態はアメリカの戦略に自衛隊を組み入れ、米軍の補完部隊とすることだった。そのために、以下のことが目指された。

(a)自衛隊の海外派兵と集団的自衛権の行使を可能とする。

(b)米軍の指揮下に自衛隊を組み込む。

(c)米軍の武力行使と一体となった活動を可能にする。

☞これを阻んできたのが憲法9条の制約だった。

この制約を打破するために、2015年にガイドライン(日米防衛協力の指針)を改定し、これに基づいて、同年9月新安保法制を強行採決・成立させた。

〈要点〉 

イ)日米安保体制を「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域」の平和と安全に寄

与せしめる。(ガイドライン)

ロ) 平時から日米同盟調整メカニズムを機能させる。(ガイドライン)

ハ) 米艦船と航空機の防護が自衛隊の任務に加わる。(新安保法)

ニ) 集団的自衛権の限定容認。(新安保法)

ホ) 自衛隊は地理的制約なしに、地球規模で米軍の後方支援ができる。(新安保法)

※まだ残っているのは、(b)の米軍指揮下に自衛隊を組み込むための司令部の統一化と、(c)の海外の戦争での米軍との武力行使の一体化である。9条改正の一番の目的はここにある。

 

)米軍と自衛隊との軍事的役割の変化  (赤旗「安保改定60年第二部➂)

自衛隊=盾、米軍=(攻撃)→矛の「打撃力」を保有する自衛隊へ

→空母や長射程のミサイルを保有 (18防衛計画の大綱) ☞ 専守防衛からの転換

・「安保改定60年の間の最大の変化は、米軍が攻めの「矛」、日本が守りの「盾」だった役割が逆転したこと。自衛隊が訓練を通じて相手方に第一撃を加える戦力を構築していることだ」(纐纈厚 (明治大学特任教授)

 

(終り)

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◆伊東市民アクション主催の「安保・地位協定学習会」の第二回報告文を載せます。(前半)

20.3.27  第2回学習会

日米安保60年-変わらないこと、変わったこと-

三好康昭

【Ⅰ】変わらないこと

(1)アメリカ軍に駐留してもらい、日本を守ってもらうこと。 

用心棒としての米軍、番犬様”

中核規定が安保条約第5

日米両国は、日本の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃に対して、自国の憲法上の規定と手続きにしたがって、共通の危険に対処するように行動する。

①45年占領軍→52年旧安保→60年安保→現在まで一貫してかわらない。

ただし、

ⅰ)52年の講和をめぐって、中立国日本を目指す主張とそれを支持する勢力もあっ た

が,大勢とはならなかった。

ⅱ)60年の安保改定に際して日米対等化を謳い条文を改めたが、実態は変わらなかっ

た。→事前協議制の空文化。密約による地位協定の骨抜き。

➁駐留米軍の軍事力の中核は「核兵器」。「核抑止力」が日本の安全保障の要。

→核兵器搭載艦船の寄港・母港化、核弾道ミサイルの配備、などが公然あるいは非公

然に進められて来た。

➂用心棒=お客様である在日米軍にさまざまな特権とサービスが与えられた。

ⅰ)地位協定によって国内法の適用が原則免除。(赤旗「安保改定60年」①、➂)

・航空法の最低安全高度基準の適用外。

・基地内の独占的管理権。

・「移動」と称する基地外での飛行訓練。

・米兵と軍属の犯罪に対する裁判権の放棄。

ⅱ)駐留経費の厖大な日本側負担。

➃日米間の通商貿易関係も安全保障問題の関数として扱われ、米側の要求を通す武器に安保条約が使われた。(60年➅)

 

〈まとめ〉

こうして、日本の政治・外交・経済の全体がアメリカに従属する関係となり、星条旗が「新たな国体」(白井聡)となった。その基軸が安保条約だった。

 

(2)アメリカにとって安保条約の意義 (60年①、➃参照)

アメリカが日本に基地を置く目的は日本を防衛するためではない。条約第5条は日本防衛の義務を課したものではない。「日本防衛の第一義的責任は完全に日本側にある」(1970年ジョンソン国務次官)。

では、 第5条の共同対処行動とは何か。(60年➃参照)

ⅰ)共同行動には米が外的と交戦することは含まれない。それは米議会が決めること。

ⅱ)共同行動とは共同作戦行動のことであり、地球規模の同盟を築くことである。

ⅲ)尖閣や宮古島占領と言った事態で、米国が-日本防衛のために-中国と戦争する可能性はゼロに近い。

 

〈まとめ〉

アメリカが米軍を駐留させるのは米国自身の軍事戦略上の必要から。(60年①参照)

ⅰ)かつてはソ連、現在は中国をにらんだ封じ込め戦略の軍事拠点として。

ⅱ)東アジアから中東域まで、米国の軍事的支配権=覇権維持のための軍事拠点として。

→1960年代のベトナム戦争の出撃基地。

1991年の湾岸戦争、2000年代のアフガン・イラク戦争の出撃基地。

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―10」を掲載します。「コロナ禍通信―11」以降は、大久保さんのブログ「原発報道あれこれ」をご覧ください。URLは以下の通りです。

http://tratnou.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/index.html

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2020/05/09

コロナ禍通信-10 受診の目安の変更

■医療機関受診の目安「発熱4日以上」はまだ有効?

既に「コロナ禍通信-6」で書きましたが、4月22日に専門家会議の方針転換があり、現在は【4日を待たず、場合によってはすぐにでも相談すべき】ということになりました。

それがどのように反映されているか、一応確かめてみようと思って、私が住んでいる静岡県のHPを調べてみたら….次のような記述が出てきました。受診の目安に関しては全く修正されていません(1)!

【風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く、または、強いだるさや息苦しさがある(※高齢者、持病のある方、妊婦は2日程度続く場合⇒帰国者・接触者相談センターへ電話】

20200508-173046

静岡県だけ特にサボっているのかと思って、神奈川県と千葉県と埼玉県も調べてみましたが、内容的には同様でした。50代男性が自宅療養中に容体が急変した埼玉県でさえも同様なのはショックでした。

もしかすると、県の担当者は受診の目安が変化したことを知らないのでしょうか?厚労省は方針が変更したことが自治体にまで届いていないことを放置しているのでしょうか?

…と憤慨していたら、分かりました、今日の新聞で。

■東京新聞と毎日新聞vs朝日新聞

東京新聞と朝日新聞と毎日新聞で確認しましたが、やはり東京新聞と毎日新聞の切れ味が良いですね。東京新聞 は【相談目安「37・5度以上」削除】、【発熱が4日以上続く場合」との条件も外した】と書いているし、毎日新聞は【 厚労省、新型コロナ相談受診の目安見直し 「37.5度以上の発熱が4日以上」を削除】 と書いていて、いずれも受診の目安が変更されたことが明確に示されています(2)。

その一方で朝日新聞の書き方には傾げた首が元に戻りません。【保健所「国の目安、防波堤の役割果たしていた」】とは何を言いたいのでしょう?「権力の番人であるべき報道機関が、これまでの政府の方針の言い訳をしてどうする!」と、思わず突っ込みを入れたくなりました(3)。

それにしても、4月22日に専門家会議の方針転換があったのに、厚労省が通達を出したのが、5月8日とは!半月以上もの間そのことを知らず、不安にかられながら「37.5度以上の発熱が4日以上」続くのを待っていた人達も居たのではないでしょうか。5月8日に厚労省が通達を出したのならば、5月9日には各自治体の記載も変わる筈です(ところが5/10、13時30分の時点でも変化なし)。

皆さんも、居住している自治体のHome pageにアクセスして、実情を確認し、方針の変更が反映されていない場合には、それを伝えてみて下さい。

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(1)受診の目安

(2.1.)相談目安「37・5度以上」削除 新型コロナ、風邪症状続けば対象(東京新聞 2020/05/09)

https://www.asahi.com/articles/ASN587SBSN58ULBJ00K.html?ref=mor_mail_topix1

新型コロナウイルスの感染が疑われる人が「帰国者・接触者相談センター」に相談する目安について、厚生労働省は8日、発熱やせきなどの軽い風邪症状が続く場合には、すぐ相談するように変更し、都道府県などに通知した。従来の「37・5度以上」という体温の目安は削除、「発熱が4日以上続く場合」との条件も外した。

相談しても目安を満たしていないと判断されてPCR検査が受けられないとの批判や、軽い症状から急に悪化する症例が相次ぎ、早期の受診が重要と分かってきたことが変更の背景にある。

37・5度以上でなくても発熱やせきなど軽い風邪の症状が続けば相談するよう勧めている。(後略)

(2.2.)厚労省、新型コロナ相談受診の目安見直し 「37.5度以上の発熱が4日以上」を削除(毎日新聞 2020/05/09)

https://mainichi.jp/articles/20200508/k00/00m/040/298000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20200509

厚生労働省は8日、新型コロナウイルス感染症に関する新たな「相談・受診の目安」を公表した。息苦しさや高熱といった症状がある場合には「帰国者・接触者相談センター」などにすぐ相談するよう呼びかけている。「37.5度以上の発熱が4日以上続く」としていた従来の表現は、平熱に個人差があるなどの理由から記載をなくした。 (中略)厚労省は2月に初めて、相談・受診の目安を公表した。強いだるさなどがある場合か、37.5度以上の熱が4日以上続く場合を目安に相談するよう呼びかけていたが、4日以上続かなければ相談の対象にならないと誤解されたり、保健所が検査を断り受診が遅れたりするケースが相次いだ。

(3)PCR、不安高まるなか目安緩和 希望者増へ体制整備は(朝日新聞 2020/05/09)

https://www.asahi.com/articles/ASN587SBSN58ULBJ00K.html?ref=mor_mail_topix1

 

(転載終了)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―9」を掲載します。

2020/05/08

コロナ禍通信-9 療養の方針転換

■宿泊施設での療養に方針転換

新型コロナの患者に対し、厚労省はこれまでは「軽症・無症状者」は自宅療養を求めてきたのですが、最近、自宅療養中に容体が急変し、死亡するケースが相次いだ結果でしょうか、今後は医療機器の備わった宿泊施設で療養し、急激な容体変化に対応できるように方針転換しました。

国民にとっては一歩前進の感がありますが、実際の対応は自治体に丸投げのようです。宿泊施設が準備できない自治体の住民は不安なまま、自宅療養するしかないのでしょうか?

■重症化の早期発見 パルスオキシメーターの配備

埼玉県では、50代男性が自宅療養中に容体が急変し、21日に死亡したことを受け、埼玉県はパルスオキシメーターで軽症者の経過観察をして、血中酸素濃度が下がった場合は病院に救急搬送する態勢を整えることにしたということです(2)。

「重症化する人は発症から7日前後から急激に悪化することが多く、本来なら自宅療養は3、4日が限度、具合が悪くなれば直ちに入院させる必要がある」ということであるならば、死者がでる前に自宅療養者にはパルスオキシメーターを貸し出すなど、何らかの対応をすべきだったのではないでしょうか?

ちなみにパルスオキシメーターの産みの親は青柳卓雄氏(日本光電青柳研究室長)で、奇しくも先月4月18日に亡くなりました。胃カメラと並ぶ日本発の医療技術であり、これによって手術中の酸欠死が激減したほか、酸素過多による未熟児網膜症の防止や、救急現場での救命率の向上に貢献し、今は新型コロナの治療や重症化の目安を知る上で必須の医療機器となっています(3)。日本には優れた技術者や専門家が少なからず居るのですが、残念ながら政府には、その人達の力を生かし、国民を守ろうとする意志が欠けている…それが新型コロナで明らかになった日本の現状です。

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(1)軽症・無症状者は原則宿泊施設で療養 自宅で急変相次ぎ厚労省(毎日新聞 2020/4/23)

https://mainichi.jp/articles/20200423/k00/00m/040/226000c

新型コロナウイルス感染症の患者が自宅療養中に容体が急変したり、家庭内感染が起こったりするケースが相次ぎ、厚生労働省は23日、軽症者や無症状者についてホテルなど宿泊施設での療養を原則とする方針を明らかにした。国は軽症者らについて、自宅を含めた病院外での療養を求めてきたが、医療機器の備わった宿泊施設で容体変化に対応できるようにする。

患者が急増する中、病院では重症者の治療を優先するため、厚労省は今月2日、高齢者・妊婦などを除き、軽症者らは自宅か宿泊施設での療養とする方針を示した。(中略)

自宅療養の場合、保健所が1日1、2回、患者に電話などで体温、せきなどの症状の有無を聞き取り、悪化したらすぐに入院してもらう流れになっている。だが、厚労省が宿泊施設には置くよう求めている血中酸素濃度を測る機器「パルスオキシメーター」を使えないなどの課題がある。(中略)

専門家は新型コロナ感染症の容体管理の難しさを指摘する。肺炎になると徐々に酸素を取り込む機能が落ちていくが、すぐには息苦しさなどを感じることはない。だが、血中の酸素濃度が一定のレベルまで下がると急激に重症化する。(中略)「自覚症状だけで判断せず、酸素濃度を測るなど医学的な管理が欠かせない」と指摘する。

自宅療養を続けざるを得ない場合は、患者自身が体調管理することになる。自治医大病院の森沢雄司感染制御部長は「せきが止まらず息切れの症状が出たら、一気に重篤化する危険性がある。遠慮せず医療機関を受診してほしい」と呼びかける

(2)死亡した自宅療養患者、軽症から急変 県「態勢整える」(朝日新聞 2020/4/23)

https://digital.asahi.com/articles/ASN4R76KRN4RUTIL02D.html?pn=8

(前略)埼玉県知事は23日、血液中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」の配備を急ぎ、軽症者の経過観察をよりきめ細かくする考えを明らかにした。「濃度が下がった場合は病院に救急搬送する態勢を整える」という。(中略)

【知事「自宅療養やむを得なかった」 埼玉の軽症男性死亡】

(中略)今後は自宅待機者に対する電話での聞き取りを、毎朝1回から、朝夕2回とするという。軽症者には緊急連絡先を案内しているが、渡辺智行保健総務課長は「電話ができないほど急激に症状が悪化した場合は大丈夫か、保健所にも患者にも不安はある。ホテルなどで、医師や看護師の目の届くところでケアするのが望ましい」と話した。(中略)

軽症だった人が短期間で重症化することは実際にある(中略)中等症で入院中の患者が1日で急変し、そのまま亡くなったこともある。一人暮らしだと、症状が悪くなったときにほかの人が気付けない。ホテルなどで経過をみるほうがいい」という。(中略)

厚生労働省は軽症や無症状の感染者が自宅や宿泊施設などで療養する際、看護師らによる健康観察で、脈拍と血液中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」を使うことを推奨している。酸素濃度を確認することで、急激な症状の悪化に早く気づけるという。

同省は14日、都道府県などに対し、宿泊療養をする施設では、受け入れ人数に応じて必要な台数を備えるように求める事務連絡を出している。(中略)

日本集中治療医学会の西田修理事長は「重症化する人は発症から7日前後から急激に悪くなることがむしろ多い(中略)軽症のため自宅療養になっても「一定の割合で重症化し、数%の人は集中治療が必要になる。具合が悪くなれば直ちに入院させる必要がある。本来なら自宅療養は3、4日が限度だ」と指摘した。

(3)青柳卓雄さん死去(朝日新聞 2020/4/24)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14453827.html?iref=pc_ss_date

(前略)74年、採血せずに血液中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」を発明した。手術中の酸欠死が激減したほか、酸素過多による未熟児網膜症の防止や、救急現場での救命率の向上に貢献した。胃カメラと並ぶ日本発の医療技術の代表例として知られ、新型コロナウイルスでも、治療や重症化の目安を知る上で必須の機器となっている。

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―8」を掲載します。

2020/05/03

コロナ禍通信-8 命の選別

■トリアージュ

限られたキャパシティーの中で、回復の見込みがある患者を優先的に選別しなければならない。このような状況を「トリアージュ」と言います。

トリアージュは戦争や大規模なテロ、自然災害などのために、治療キャパシティーを大幅に上回る数の負傷者、重症者が出た時に採用されるもので、日本でも1995年の地下鉄サリン事件の時に、病院が重症者、中程度、軽症者を分けるトリアージュを行って、この言葉が知られるようになりました。

イタリアのロンバルディア州の医療現場では既にそういう事態になっているようです(1)。

高齢者や心臓病、糖尿病などの基礎疾患を持つ患者は、回復の見込みが低いので、後回しにせざるを得ません。

症状が重篤で治癒の見込みが低いと判断された患者は、人工呼吸器のあるICUには入れられず、通常の病棟に送られます。

本来医師は患者を選ばず、全ての患者を助けなくてはならなりません。医師はそのようなこと(トリアージュ)をしてはならないのですが、しかし現在のイタリアの状況下では、医師は選別せざるを得ません。

今回、新型コロナの医療の現場において、今は感染を抑え込んでいるドイツでさえも、将来トリアージュが行われる事態になるかもしれないといいます。

■医療崩壊になる前に

トリアージュによって命の選別をせざるを得ない状態になる前に手を打たねばなりません。新型コロナの感染拡大を押さえ込んだ台湾や韓国やニュージーランドなどの例を見てみれば、それは可能だということが分かります。

アメリカ肺協会の責任者は新型コロナ対策について「情報の大切さ」と「医療アクセスに関する公平性」を指摘しています(2)。情報の大切さに関しては言うまでもありません。デマを払拭し、何が事実で何がウソなのかをよりわけて、個人がその情報を利用できるようにすること。同時に感染の可能性がある全ての人が治療を受け、隔離され、接触状況を追跡することができなければ、不安にかられた国民が病院に押し寄せ、医療崩壊するという事態を避けることができません。

日本の現状はどうかと言えば、このような対策は全くできていません。要人は簡単に検査を受けられるのに、普通の国民は症状が出ても検査を受けられないといった不満が出ていますし(3)、小川淳也議員(立憲)がテレビ番組で問題点を指摘しています(4)。

このテレビ番組はいつ、どの局で放映したものなのか調べてみたのですが分かりませんでしたが、私たちが言いたい事をきちんと代弁してくれていて必見です。以下にリンクを貼った動画(3)で直にこの発言を聞いていただきたいのですが、インターネットにアクセスできない方のために、小川議員の発言の要点をメモしておきます。

小川議員「検査の対象を絞っている、患者は検査を受けられず、容態急変して救急車を呼んでもたらい回し(一ヶ月900件)、警察の不審死30件中6件が死後PCR検査の結果、新型コロナ陽性と判明、東京の検査対象の陽性率は40%にもなっている。現在、東京は検査能力は一日220件しかない、感染実態(感染者数と死者数)を水面下にもぐらせているのではないか。政府の失政、失態の責任を国民がとらされている」

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(1)コロナ禍で迫られる「命の選別」ドイツ医学界の提言「厳密ルール」の中身(ハフポスト 2020/04/08)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e8d8121c5b62459a9313e11?ncid=other_facebook_eucluwzme5k&utm_campaign=share_facebook&fbclid=IwAR0IffyBmKczyC_-5lHurWC1p_slL94MhDT4fYvvJMS1_0VwQkF3uE3FQbw

(2)「新型コロナウイルスから肺を守るためにはどうすればいいのか?」を肺の専門家に聞いてみた(GIGAZINE 2020/4/18) https://gigazine.net/news/20200418-coronavirus-protect-lungs/

アメリカ肺協会(ALA)で最高医療責任者を務めるアルバート・リッツォ氏に「一体どうすれば新型コロナウイルスから肺を守ることができるのか」についてインタビュー(元記事は https://www.inverse.com/mind-body/covid-19-what-americans-can-do-to-protect-their-lungs

(前略)最初の1つ目が、「情報」です。リッツォ氏は「私たちはデマを払拭し、何が事実で何がウソなのかをよりわけて、個人がその情報を利用できるように努めています。これは、新型コロナウイルスに限らず、私たちが直面するあらゆる公衆衛生上の危機に適用されます」と話しました。

そして、2つ目が「提言」です。ALAが政府など対して特に強く求めているのが、検査や治療といった医療へのアクセスしやすさを公平にしなければならないということ。「感染の可能性がある全ての人が治療を受け、隔離され、可能な限り接触状況を追跡することは、かつて結核が流行した際にも有効でした」(後略)

(3)西村担当相PCR検査に批判続出 「要人だから」「ずるい」(時事ドットコム 2020/4/27)https://www.jiji.com/jc/article?k=2020042700712&g=pol

(4)twitter記事 【君に届け!滑稽新聞@空気を読むな】 https://twitter.com/akasakaromantei/status/1256099895569715200?s=20

小川議員「全ては検査を絞った事が根本原因。五輪で国民の命が人質に。慶応が一般患者検査し6%陽性。単純計算で都内78万人。今東京の陽性率4割。なぜ日本は横ばいか?感染実態を相当潜らせてる可能性高い。何ヶ月も放置した政府責任は重大。失政の責任を国民が取らされてる」

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―7」を掲載します。

2020/05/02

コロナ禍通信-7 血栓と梗塞

■血栓と梗塞

先日(2020/04/30)2020年度補正予算案で「病床削減案」が可決されたというニュースには開いた口が塞がりませんでした。時期的にはこの問題を扱いたいところですが、これは根が深い問題なので後回しにすることにして、新型コロナの重症化の速さに関して幾つかの情報をご紹介します。これに関しては、「コロナ禍通信-4」に書いた「無症候性低酸素症(息苦しさを感じない呼吸困難)」の他に、血栓や梗塞が関係しているという仮説もあります。

NHKのニュースでも脳卒中を経験した人が新型コロナに感染した場合、一般の人よりも重症化しやすい可能性がある、と注意を促していますし(1)、逆に、新型コロナに感染した患者に血栓・梗塞が見られたという報告もあります(2)。若い人が脳卒中にかかることは少ないので、新型コロナと血栓、梗塞との間に何らかの関係があるかもしれません。

新型コロナ感染の重症化と血栓症についての鄭忠和教授の記事(3)と、伊勢呂哲也医師(4)の記事は、この二つの関係を推察するものとして、とても興味深いものでした。「で、結局どうしたら良いの?」という質問に対して直接答えてくれるものではありませんが、「新型コロナ重症化と血栓が関係するかもしれない」、「血管年齢の若さが大事」とということは念頭においておくと良いかと思います。

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(1)【脳卒中を経験した方へ】新型コロナウイルスに関する医師の助言(NHK NEWS WEB 2020/04/25)

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1201.html

(2)新型コロナで突然の脳梗塞、30~40代の患者で相次ぐ 米(CNN 2020/04/23)

https://www.cnn.co.jp/usa/35152843.html

新型コロナウイルスに感染した30~40代の患者が脳梗塞を併発する症例が相次いでいる。(中略)新型コロナウイルスをめぐっては、血栓を引き起こしたという報告が増えており、結果として脳梗塞を発症したと思われる。

マウントサイナイ病院は、同病院で診察した患者5人の症例を報告した。いずれも50歳未満で、新型コロナウイルス感染症の症状は軽症か無症状だった。

同病院のトーマス・オックスリー医師は、「同ウイルスの影響で大動脈の血栓が増大し、重度の脳卒中につながったと思われる」と説明する。「我々の報告では、若い患者が突然の脳卒中に見舞われた症例はこの2週間で7倍に増えた。ほとんどの患者に既往症はなく、症状が軽かった(2人は無症状だった)ため、自宅にいた」

新型コロナウイルスの検査では、全員が陽性と判定された。2人については救急車を呼ぶのが遅れていた。(中略)同病院で診察した患者のうち少なくとも1人は死亡し、残る患者もリハビリ施設や集中治療室などに入院しているという。1人だけは退院できたが、集中的な介護を必要とする状態にある。

オックスリー医師は、新型コロナウイルス感染症の症状があり、脳卒中が疑われる場合は、すぐに救急車を呼ぶよう促している。

(3)「新型コロナ肺炎の死亡に播種性血管内凝固症候群(DIC)が関与している?」鄭 忠和[獨協医科大学特任教授、和温療法研究所所長]、(日本医事新報社 2020/4/24)

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14500

(前略)新型コロナ肺炎の重症例は急速に悪化して死亡し、多臓器不全例も多いと聞く。(中略)また新型コロナウイルス感染症は肺炎だけでなく心筋炎の発生もあり得るのではと推測する。(中略)深部静脈や心臓内の血栓形成については不明である。DICの発生例で心筋炎の合併があると、心筋璧運動の低下も重なり心内血栓は形成されやすい。その結果、全身の各臓器に血栓塞栓を引き起こし、多臓器不全を生じることも推測できる。新型コロナウイルス感染症例で下肢切断の症例も報道されていたが、これは心内血栓による下肢動脈塞栓で説明できる。

新型コロナウイルスの感染で敗血症が生じることは生体防御機構からも容易に想像できる。敗血症になると全身の血管内皮に微小血栓が形成され、微小血管障害が生じて、肺胞の毛細血管でのガス交換は低下する。(中略)

DICの診断ができれば、抗凝固療法により症状を劇的に改善することも期待できる。そして血栓症の予防は新型コロナ肺炎治療の基本になる。現在、重症の新型コロナ肺炎の治療で、人工呼吸器の不足は大きな問題であるが、DICの診断ができれば人口呼吸器の使用を減少できる可能性がある。そのためには重症の新型コロナ肺炎患者で血液凝固能が亢進し、DICの状態であることを証明する必要がある。第一線の診療現場で活躍されておられる医療従事者が、DICと血栓塞栓のエビデンスを証明できれば、治療方針は大きく転換し患者救命に直結すると思われる。もし、その事実を確認できれば、日本だけでなく世界中の新型コロナ肺炎患者に福音をもたらすであろう。(後略)

(4)新型コロナウイルス感染の重症化と血栓症について(大宮エヴァグリーンクリニック院長のブログ 2020.04.25)

https://omiyaever.jp/blog

超有名医学雑誌のLancetに武漢の新型コロナウイルス入院患者の10%に心筋障害がみられたと発表されました。心筋障害は心筋梗塞で起きるのが有名です。(中略)何故新型コロナウイルスで血栓が発生するのでしょうか。(中略)これもLancetで今週発表された内容です。新型コロナウイルスが血管にあるACE2受容体(*)を攻撃し、血管を傷付けるということが明らかになりました。血管が傷付けられるとそこを修復しようとして小さな血栓(血液の塊り)が生まれます。

血栓が心臓や肺の血管に詰まると心筋梗塞や肺梗塞になり、それにより死亡してしまうことも多々あります。肺炎がある状態だとさらに死亡率が高くなります。我々医師の中では、ウイルス性の肺炎だけで若い人が亡くなったり、アメリカやイタリアなどであれ程の人数が亡くなってしまうのは正直解せないことではありました。しかし、心筋梗塞や肺梗塞などが合併しているとなれば納得はいきます。またコロナでみられる息苦しさは肺の血管が血栓で詰まることで起こりますし、味覚障害や嗅覚障害も味覚・嗅覚を司る神経の血管が詰まることで起こり得ます。

重症化する人の特徴は男性、喫煙している、高血圧や糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を患っている、肥満、悪性腫瘍患者様、などが挙げられます。喫煙や肥満や生活習慣病は血管の機能を落とすと言われております。また男性は女性より一般的に血管の機能が低下している、血管が傷ついていると言われております。つまり重症化のリスクは血管が傷つきやすい方の特徴なのです。

一度新型コロナウィルスが血管を攻撃したら、その炎症が次の攻撃産み連鎖で反応が生じあっという間に大量の血栓が生じ重症化するのだと思います。だから無症状やごく軽症の人と重症化する人の2極化するのでしょう。血管年齢を若く保つことが重要ですね。(後略)

*細胞に侵入する際に結合すると考えられているヒト細胞側のタンパク質

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―6」を掲載します。

2020/04/30

コロナ禍通信-6 医療機関受診の目安

新型コロナの感染が疑われる人の医療機関受診の目安について、専門家会議の方針転換がありましたので、まずそのことからお知らせします。

■4日を待たず、場合によってはすぐにでも

当初、厚労省は高齢者や妊婦など、重症化しやすい人に関しては、「風邪の症状や37.5度以上の発熱、倦怠感や呼吸困難」などの症状が「2日程度続く場合」には相談するよう呼びかけていました。

それ以外の人については、上の症状が「4日以上継続した場合」と発表していましたが(1)、その基準に従って自宅療養していた人が死亡する例が続いたためでしょうか、4月22日に発表した記者会見では「場合によってはすぐにでも相談して」と発表しました(2)。

この記者会見では受診の基準について、記者団からの質問に対し、「方針が変わった訳ではない」という意味不明の受け答えがありましたが、実情がどうであれ、無自覚の呼吸困難や重症化の速さなどを考えると、厚労省発表の基準よりは、自分の体の声に従って行動した方が良いと思われます。

(知人から回ってきた情報ですが)台湾の医師が勧める肺の自己診断の方法をお知らせします。やり方は簡単です。

【深く息を吸って10秒我慢する。咳が出たり息切れする等の症状が出なければ大丈夫】

勿論、パルスオキシメータがあれば、酸素濃度を計って病院に行くかどうかを判断できるので、それに超したことはありません。

■パルスオキシメータの数値

昨年、9月にお母様を老衰で亡くされた読者の方から、パルスオキシメータについての体験談が寄せられたので、了解を得た上で以下に転載します。ちなみに、数値に関しては、コロナ禍通信-4でご紹介したLevitan医師(緊急医療医)の記事を脚注に転載しておきますが(3)、診療した新型コロナの患者の中には50%にまで低下していた例もあるということでした。普通では考えられない異常な事態ということなのでしょう。

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8月25日ごろから何となく元気がなく、大好きな入浴を「今日はいいわ。」なんていう日が2日も続いたものですから、すぐに訪問入浴をお願いしました。入浴前には同行の看護師さんが問診、検温、そしてパルスオキシメーターで動脈血酸素飽和度を図ります。8月末の訪問入浴でのパルスオキシメーターの数値は96。その2日後の訪問入浴では93でした。

看護師さんは深刻な顔をして「入浴は無理ですね。息苦しくありませんか?」と母に聞きましたが、母は「何ともありませんよ。」と自分の体調の変化に気づいていなかったようです。そして、その2日後に亡くなりました。血圧も変化なく、熱もなく、私には食欲が落ちて元気がなくなっただけにしか見えませんでした。

普段96、97のパルスオキシメーターの数値が93パーセントになるということはかなり深刻なんだとわかりました。そして、本人も「ちょっと疲れたみたい。横になっていればよくなると思う。」程度の認識しかないのだということも実感として理解しました。この数字、私には忘れられません。

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(1)「37.5度以上の発熱が4日以上続く人は相談を」厚労省が新型コロナウイルスの受診目安を発表(ハフポスト 2020/02/17)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/meyasu_jp_5e4a4064c5b64433c6189df3

(2)新型コロナ疑いの受診目安、重症化しやすい人は「2日程度」⇒「すぐにでも」と方針転換(ハフポスト 2020/04/24)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ea23c33c5b669fd8921dfc1

(3)コロナ「突然重症化した人」の驚くべき共通点 10日間救急治療室で患者を診た医師の見解(東洋経済ONLINE 2020/04/24。元記事はThe New York Times) https://toyokeizai.net/articles/-/346423

(前略)肺炎では患者は通常、胸部の不快感や呼吸時の痛みなどの呼吸障害を発症する。しかし、新型コロナ肺炎の場合、当初患者は酸素量が低下しても、息切れを感じない。しかしその間、驚くほど酸素濃度が低下し、中等度から重度の肺炎(胸部X線写真で見られる)になっていく。正常な酸素飽和度は94%から100%だが、私が見た患者の中には、酸素飽和度が50%にまで低下していた例もある。(後略)

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―5」を掲載します。

2020/04/29

コロナ禍通信-5 致死率

■パルスオキシメータ

前回ご紹介した「パルスオキシメータ」について、もう少し詳しく知りたいという声がありました。家庭用の価格はAmazonや楽天などの通販で数千円から2万円前後です。なぜこれ程の価格差があるのかは分かりませんが、需要が増えれば価格が下がる可能性もあるでしょう。「日本呼吸器学会」のサイト(1)で、その仕組みと機能を、(2)「よくわかるパルスオキシメータ」で詳細な使い方、数値の判断の仕方などを解説しています。この記事の脚注に転載しましたので、詳しくはそちらでご覧下さい。

■致死率

新型コロナが話題になり始めのころ、私はインフルエンザとさして変わらないのではないかと思っていました。しかしその後、実情が明らかになってくると、新型コロナの感染力の強さ、致死率(死亡者数÷患者数)の高さ、重症化する時の速さと言う点で、インフルエンザとは明らかに異なることが見えてきました。

私見では、感染者数の多さよりも、致死率の高さ、感染者数と死亡者数の増減の方が重要かと思っています。日本の感染者数や死者数はそれほど多くはありませんが、オリンピック延期が決まったら急に感染者数や死者数が増えてきました。数値の隠蔽が行われているのではないかという疑念など、政治と新型コロナの関係については、また後に書くとして、まずは致死率に関して見てみましょう。

致死率で言えば、インフルエンザの場合、致死率は0.1%以下と言われていますが、 新型コロナの場合、イタリアの致死率は高く、ドイツの致死率は低く、国によって大きな違いがあります。この違いの主なものは、集中治療の体制の違いと言われています。ドイツでは死亡者のほとんどはICUで亡くなるのに対し、イタリアでは集中治療を受けることなく多くの人々が亡くなっています。ところが、日本では人口10万人あたりのICUのベッド数は5床程度(イタリアの半分以下)であり、場合によっては、イタリアよりも更に悲惨な状況になる可能性も否定できません(3)。

世界の新型コロナ感染者数、死亡者数を毎日更新して発表している【COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC】によれば(4)、全世界での致死率は1割弱(4/29時点で感染者3,138,919人、死亡者218,010人)となっています。イタリア、スペイン、ベルギー、フランス、イギリスなどでは、感染者の約1割が死亡していますが、その一方で、ドイツ、韓国、台湾などの致死率は低く抑えられています。

こういう状況の中、私たちができること、考えなければならないことは何でしょうか?するべきことは沢山ありますが、次回はひとまず以下の順番に情報をお伝えしていこうと思います。

  • (a) 感染しないようにする。
  • (b) 感染している可能性があることを念頭におく
  • (c) 重症化する前に手を打つ

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(1)日本呼吸器学会「パルスオキシメータとはどのようなものですか?」

https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=139

パルスオキシメータは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定するための装置です。心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか、皮膚を通して調べます。酸素飽和度(SpO2)は肺や心臓の病気で酸素を体内に取り込む力が落ちてくると下がります。一般的に96~99%が標準値とされ、90%以下の場合は十分な酸素を全身の臓器に送れなくなった状態(呼吸不全)になっている可能性があるため、適切な対応が必要です。

(2)よくわかるパルスオキシメータ

https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/guidelines/pulse-oximeter_general.pdf

(3)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する理事長声明(日本集中治療医学会 2020/4/1) https://www.jsicm.org/news/statement200401.html

(4)COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC https://www.worldometers.info/coronavirus/ (サイト【Worldometer】については以下を参照。https://www.worldometers.info/about/ )

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―4」を載せます。

2020/04/28

コロナ禍通信-4 臨床の現場から(2)

■人工心肺装置に接続しても約3割が死亡

人工心肺装置(ECMO)は人工呼吸器を装着しても症状が改善しない患者の最後の切り札と言われています。しかし、日本集中治療医学会などの集計によれば(1)、ECMOによる治療を受けたとしても、新型コロナ重症者のうち、約3割が死亡するという結果が出ています。

「人工呼吸器や人工心肺装置で治療すれば治る筈」と思っていても、それが通用しない新型コロナ。重症化する時のスピードの速さは何に由来するのでしょうか?

■息切れを感じることなく突然死亡

次にご紹介するのは、患者が溢れかえったニューヨークの病院で支援活動を行ったRichard Levitan医師(緊急医療医)の記録です(2)。

新型コロナの患者は、酸素飽和度が低くても息切れを感じることなく(無症候性低酸素症)、来院した時はすでに重体になっていて、急速に呼吸不全に進展することが多いようです。これは、重症化する時のスピードの速さと符合します。

Levitan医師は「パルスオキシメーター」を使って、低酸素症を早期に発見すれば良いと提案します。

病気で入院したことがある方にはお馴染みだと思いますが、病気では一日三回、検温、血圧、血中酸素レベルと脈拍数を計ります。その時、人差し指を3~4cm位の小ささの洗濯ばさみのような計測器に入れますが、あれが血中酸素レベルと脈拍を計るパルスオキシメーターです。

調べてみたら、家庭用のパルスオキシメーターは血圧計と同じ位の価格でした。

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(1)ECMO使用の重症患者、回復は6割強 死亡は約3割(TBS News 2020/4/22) https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3962432.html

(2)コロナ「突然重症化した人」の驚くべき共通点 10日間救急治療室で患者を診た医師の見解(東洋経済ONLINE 2020/04/24。元記事はThe New York Times) https://toyokeizai.net/articles/-/346423

(前略)肺炎では患者は通常、胸部の不快感や呼吸時の痛みなどの呼吸障害を発症する。新型コロナ肺炎患者の大多数は、発熱、咳、胃もたれ、倦怠感などの症状が出ていても、酸素飽和度が著しく低く、一見通常生活を送れないような状態なのに、息切れは感じない。しかしその間、驚くほど酸素濃度が低下し、中等度から重度の肺炎(胸部X線写真で見られる)になっていく。正常な酸素飽和度は94%から100%だが、私が見た患者の中には、酸素飽和度が50%にまで低下していた例もある。(中略)

肺炎は明らかに何日も続いており、来院した時はすでに重体になっていることが多い。(中略)患者は血中の酸素が低下するにつれ、無自覚に、より速く深く呼吸をするようになる。(中略)激しく呼吸することで、いっそう肺を傷つけているわけだ。(中略)患者の2割はその後、より危険性の高い肺損傷段階へと進展する。液体がたまり、肺は硬くなる。二酸化炭素レベルが上昇し、患者は急性呼吸不全を発症する(中略)。

病院にやってきたときにはもう、最終的に人工呼吸器が必要となることが多い。 息切れを感じることなく突然死亡する新型コロナ患者の症例は、無症候性低酸素症が急速に呼吸不全に進展する事態で説明できる。(中略)

肺炎が十分進行するまで病院に行かない患者があまりに多いため、(中略)多くの人が最終的に人工呼吸器につながれ(中略)、これが機器不足につながっている。そして、いったん人工呼吸器につながれたら、多くの人が死んでいく。(中略)

新型コロナ肺炎を患う患者をより多く迅速に特定し、それらの患者をより効果的に治療するひとつの方法がある。その方法では、病院または医院でのコロナウイルス検査を待つ必要はない。普及型の医療器具(パルスオキシメーター)を使って無症候性の低酸素症を早期に発見することが求められる。(中略)

パルスオキシメーターは、体温計と同様(中略)ボタン1つで起動する。利用者が指先に装着すると数秒で、酸素飽和度と脈拍数を表す2つの数字が表示される。パルスオキシメーターは、酸素化障害および高心拍数を検知する器具として非常に信頼度が高い。(中略)

パルスオキシメーターを活用したスクリーニングが広く普及することにより、新型コロナ肺炎に関連した呼吸障害を早期に発見できるシステムが確立できる。(後略)

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信―3」を掲載します。

2020/04/27

コロナ禍通信-3 臨床の現場から(1)

■感染判明は死亡後

単単身赴任中だった50代男性が発熱後、保健所に電話がつながらず、感染判明は死亡後になった事件(?)がありました(1)。単身赴任中の男性は発熱後、保健所に相談しようとしたものの電話がつながらず、PCR検査を受けられたのは発熱から六日後。検査結果が出たのは、命が失われた後だったということです。病状の急変、医療体制の不備などが、この例からも窺われます。

厚労省、専門家会議の新型コロナ対策の不備に関しては、突っ込み処満載なので、もっと後にまとめて書くとして、今は、新型コロナの病状の実例や急変する時の様子について、幾つかの記事を紹介します。長い記事なので、全部を紹介することはできず、要約、抜粋しますので、インターネットにアクセスできる方は、なるべくリンクを辿って原文をご覧下さい。

■頭痛、倦怠感、微熱(後、高熱)、味覚異常、寒気、咳

まずはニューヨーク市内の医療機関に医師として働く日本人男性(49)の新型コロナウイルスに感染した体験談です(2)。この方の発症から退院までの期間は10日間、入院は24時間程度で、その後順調に回復し、このインタビュー時点ではまだ自宅で経過をみている途中だということです。感染経路はわかっていません。この方の症状は「軽症」扱いだったのですが、それでも、これほど大変な思いをしたということです。

■特効薬がない、症状の急変、重症化、人工心肺装置の難しさ、血栓

次は石川源太医師(ニューヨーク・マウントサイナイ病院呼吸器集中治療医)の話です(3)。

「人工呼吸器や人工心肺装置で治療すれば治る筈」と思っていた私には「酸素には毒性がある」とか、「人工呼吸器を使うには高度な専門知識や経験が必要になる」など、驚くことばかりでした。具体的な症状と医療の実際が詳細に書かれているので、記事の長さを承知で紹介します。

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(1)単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明(2020/4/26)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042602000150.html

(2)NYの日本人医師感染 軽い違和感が、まさか死の恐怖に(朝日新聞 2020/4/11)要約抜粋

https://digital.asahi.com/articles/ASN4B7WZ7N49UHBI04L.html

3月17日、軽い頭痛と、風邪を引いたときのような気だるさを感じた。18日、平時は36度を切るが、37度近くの微熱だった。頭痛と倦怠感がいっこうに引かない。鼻水やのどの痛みはない。19日夜、熱は38度まで上がった。スープの味がわからなかった。まるでただのお湯のよう。寒気も止まらず、トイレ以外では布団から出られない。時折、体が熱気にスキャンされるような感覚に襲われる。体温は39度ぐらいまで上がった。脈も高い。

せきも出始めた。もはや体力も気力もなく、服の着替えすらできなくなった。25日、電話診療で症状を伝えると、ER(緊急救命室)に行くよう勧められた。外に一歩踏み出すと、路上にはホームレスと薬物中毒者があふれ、まちは異様な雰囲気になっていた。勤務先のERは混んでいて、ストレッチャーのまま、通路で2時間待たされた。「死ぬかも知れない」と思った。ようやく現れた医師は「新型コロナ患者は容体が急変するおそれがある」と告げられ、入院することになった。隔離状態のため、院内でも医師とは電話でやりとりした。幸いなことに、症状は悪化しなかった。27日には熱が下がった。

(3)コロナ対応「短距離じゃなくてマラソン」 NYの日本人医師が語る治療の難しさ(毎日新聞 2020/04/20) https://mainichi.jp/articles/20200419/k00/00m/030/054000c

新型コロナは(中略)特効薬がなく、症状が急変して亡くなる人もいる。(中略)重症化して人工呼吸器につながれると、8割が助からないとされる。理由の一つには、急に炎症が肺全体に広がるため、急いで人工呼吸器をつけても既に治療が難しいということがある。多いのは、救急で病院に運び込まれて12時間以内に肺炎があっという間に広がり、人工呼吸器が必要になる人だ。(中略)悪くなる時には急変するのだが、なぜそうなるのか分からないことが多い。

また、ICUに入ってから人工呼吸器につながれている期間が長くなっている。肺炎がひどくなると低酸素血症で血中の酸素が低下し、呼吸回数が多くなるため呼吸筋の疲労が起きる。これらを防ぐために人工呼吸器をつける。だが、人工呼吸器と呼吸のタイミングが合わなくなることがあり、多量の鎮静剤、時には筋弛緩剤を投与せざるをえない。すると、日ごとに呼吸筋が弱ってくる。人工呼吸器につなぐことで肺炎は改善することが多いが、その間に自力呼吸に必要な筋肉が弱っていくので、人工呼吸器を外すに外せなくなる。そういう状態が長く続く患者が多い。(中略)

肺だけではなく、炎症が全身の他の臓器にも広がる。急性腎不全を併発するケースが多く、人工透析が必要になる。また血栓ができやすいことも分かっており、肺の血管に血栓が詰まって容体が急変するケースが少なくない。実際に新型コロナで死亡した患者の肺を調べたところ、細い血管内に微小な血栓が確認されたという報告がある。このため、重症化した場合は血をさらさらにする抗凝固薬を投与するようにしている。(中略)

人工呼吸器と一言で言っても扱いは難しい。肺炎が悪化すると、人工呼吸器で肺に高濃度の酸素を送るのだが、実は酸素には毒性がある。高濃度の酸素を長期間にわたって吸入し続けると、肺に障害を引き起こす。とにかく酸素を送ればいいというものではない。

肺炎が進行すると(中略)肺胞がしぼんだような状態になる。ある程度の圧力で肺に空気を送り込んで肺胞が膨らんだ状態にするのだが、圧力が強すぎると逆に肺を傷つける。

また、肺に送る空気量が多すぎると同じように肺に障害を与える。このさじ加減が難しく、ICUでも人工呼吸器を使うには高度な専門知識や経験が必要になる。(中略)

ICUでは、人工呼吸器や治療薬などの専門知識を持つ医師や看護師が対応する(中略)。重症者が増えるとICUを増やす必要が出てくる。この時、数だけでなく医療レベルも維持しないと死亡率は上がる。(中略)

感染の広がりは(中略)数週間とか数カ月で終わる話ではない。(中略)経済活動をいつか再開することになる(中略)。外出規制をある程度緩めると、新たな感染者が増えて患者が病院にやってくる。そうなれば医療崩壊を防ぐために今度はまた外出規制を強めることになる。これを繰り返すことになる。(中略)

日本は今、感染者が増えている。大変だが、でもここで頑張れば夏には終息すると思っている人もいるかもしれない。けれども、それはあくまで希望的観測で根拠に乏しい。(中略)特効薬はできておらず、感染拡大を防ぐワクチンの開発には少なくとも1年はかかる。実際には1年、2年という戦いになるかもしれない。こういうことを政府がきちんと見据えて国民に語ることが必要だと思う。(後略)

 

(つづく)

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◆大久保伸子さんの「コロナ禍通信」の第二回目を載せます。

2020/04/26

コロナ禍通信-2

■新型コロナの特徴

さて、私たちを脅かしている新型コロナウィルス肺炎(以後、「新型コロナ」と略)とは、どのような特徴の感染症で、季節性インフルエンザとはどのような点で異なっているのでしょうか?

新型コロナの概略を知りたいと思った時、信頼性のある解説サイトとしてお勧めしたいのは、山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所所長)のサイト(1)です。症状、感染力、対策、提言など、幾つかの項目別に分かれていて、多くの人が理解できるように、平易な言葉で解説されています。

新型コロナの特徴について、山中教授の説明を以下、まとめて抜粋します。

(a) 潜伏期間は1から17日

(b)感染しても30~50%では症状が出ない

(c)発症しても多くの場合は発熱や咳などの軽症

(d)高齢者や持病を持つ一部の患者では肺炎等で重症化

(e)大半の人では咳や発熱などの軽症

(f)70歳以上の感染者の10%近くが死亡

多くは無症状か症状が軽いのであれば、「若いから大丈夫」、「インフルエンザと同じようなもの」と軽く考えがちですが、高齢者でなくても罹患しますし、症状も人によって様々のようです。

ある患者(52歳)の場合、鼻血が出て止まらなくなったり、喉に金串が刺さったような耐え難い痛みを感じたということです(2)。

■重症化する時の速さ

診療に当たった多くの医師が指摘する新型コロナの特徴は、重症化する時のスピードです。大曲貴夫国際感染症センター長(国立国際医療研究センター病院)の報告(3)をまとめて抜粋します。

「8割の人は本当に軽いんです。歩けて、動けて、仕事にもおそらく行けてしまいます。残りの2割の方は確実に入院が必要で、全体の5%の方は集中治療室(ICU)に入らないと助けられない」。

ところが、一部の感染者は1日以内で、数時間で、それまで話せていたのにどんどん酸素が足りなくなって、人工呼吸器、それでも間に合わなくて、人工心肺もつけないといけなくなる、そういうことが目の前で一気に起こるということです。」

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(1)山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

https://www.covid19-yamanaka.com/cont3/16.html

(2)コロナ患者激白「喉に金串が刺さったような耐え難い痛み」

(日刊ゲンダイ 2020/04/07) https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/271464

(3)新型コロナ、専門医が語る“本当の怖さ” 「数時間で一気に」急速な重症化(ZAKZAK 2020/03/26) https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200326/dom2003260009-n1.html?fbclid=IwAR16KaODyo3Pa-RMq2ULQNDj2BwclQ8qlMgmjh48VSBAHKrT_v-upIxeZuQ

 

(つづく)

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◆伊東市にお住いの大久保伸子さんが、新型コロナウイルスをめぐる様々な情報を発信しています。知人宛てにメールで報知し、ご自身のブログ「原発報道あれこれ」に載せています。記事のタイトルは「コロナ禍通信」。ご本人の了解を得て、「原発報道あれこれ」から転載します。

 第一回。

2020/04/25

 

コロナ禍通信-1

■情報共有のために

コロナ禍に翻弄される毎日、皆さん、とても不安に思っておられることと思います。情報は溢れているようでいて、個々人が把握している情報は様々であり、誰でも知っている筈と思われることが、知られていないことに驚くことが稀ではありません。今のマスメディアが重要なことをきちんと報道しない大本営発表化に陥っていることにその原因があると思います。

お役に立つかどうか分かりませんが、これから「コロナ禍通信」というタイトルで、私が得た情報、考えたことなどをお知らせしていこうかと思います。

情報収集元は以下の通りです。各情報元に貼ってあるリンクから芋づる式に様々なサイトにアクセスしていくこともあります。できる限りリンク先は記載していく予定です

新聞:東京新聞、毎日新聞、朝日新聞(時々)

SNS:Facebook、twitter

切り口は「コロナ禍」ですが、テーマは多岐にわたります。今思いつくだけでも、ざっと数種類のテーマが頭に浮かびますが、そのいずれに関しても私は全く専門家ではありませんが、出典を付け加えることによって、多少は信頼性を担保できるのではないかと思います。

本当はそれぞれのテーマ毎に整理してお伝え出来れば良いのですが、それではいつまでたっても書く事が定まらないと思いますので、その時、その時の状況によって情報発信していくことにいたします。

新型コロナ肺炎の実態

緊急事態宣言と休業補償

感染症対策

世界各国との比較

経済政策 緊縮財政のツケ

生き方と価値観

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■有用サイトリスト

(1)佐藤彰洋(横浜市立大学データサイエンス学部教授)

パンデミック収束に向けて私たちに具体的にできること。

https://www.fttsus.jp/covinfo/our-action/

(2) COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC

https://www.worldometers.info/coronavirus/

世界の感染者数、死亡者数が一覧表で表示される。毎日更新。

(3) 山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信(ノーベル医学生理学賞・京都大教授)

https://www.covid19-yamanaka.com/index.html

新型コロナの3つの特徴やインフルエンザとの違いを解説

(4) 新型コロナ感染症対策ハンドブック

中国の浙江大学医学院付属第一病院の専門家たちが自らの臨床経験をもとに作成した新型コロナ対策の方法をまとめた資料です。

全50ページ以上にも及ぶ、PDF資料からまとめられており、図解なども入っておりわかりやすくまとめられています。どちらかというと医療関係者向けですが、素人が読んでも参考になることがあります。

https://bit.ly/2xolwJa

(5) COVID-19情報共有(佐藤彰洋)横浜市立大学データサイエンス学部佐藤彰洋教授のCOVID-19(新型肺炎)の感染拡大抑止に関する研究・検討資料内容を共有するページです。

https://www.fttsus.jp/covinfo/remarkable-comments/?fbclid=IwAR0oSmswuXk1XsnkpotkoYj1_5yFJ–Tbi_a76yc5kl4T5zPmFQhSrB73qs

 

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◆5月19日に行われた「スタンディング・アピール」の際のスピーチ原稿を紹介します。

20.5.19

惨事便乗の悪徳商法

三好康昭

コロナ感染を防ぐため緊急事態宣言が出ています。これに悪乗りして、憲法を改正して緊急事態条項を設けようという動きがあります。今の憲法には緊急事態に関する条文がない。コロナのようなことが起きたときのため、緊急事態に備える条文を作る必要がある、というのです。言葉は似ていますが、緊急事態宣言と緊急事態条項はまったく違います。違うものを同じモノだと思わせる詐欺商法です。

今の緊急事態宣言は、インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて出ました。どういう時に出し、どういう効力があるか、法律に決められています。ところが、憲法で緊急事態を定める条文をおくと法律はいらない。内閣の判断で宣言を出すことができる。その効力も内閣で決めることができる。つまり、行政府が立法権をも手に入れます。三権分立が否定されます。緊急事態を名として憲法の原則を停止する。これが緊急事態条項です。

第二に、個人の人権も重大な制約を受けます。営業の自粛や外出の自粛どころではない。強制的な禁止命令が出て、警察が監視し、違反者を捕まえ刑罰を課す。今、特別措置法を改正してこんな強制力を政府に与えたら、憲法違反に問われるでしょう。でも、憲法に緊急事態条項を設ければ、憲法自体が人権の制約を想定していますから、憲法違反に問われない。法律を通さないで、外出禁止、営業禁止、政府批判を禁止できるようになるのです。

一体、緊急事態条項を作って何を守るのでしょう。コロナの感染拡大防止のためなら法律で対応できます。感染者を強制隔離する法律もすでにある。改憲派が求めているのは、個別の災害や感染症に対する対応策ではない。社会全体の安全とか公共の秩序が危なくなってきたとき、公権力を使って騒動を抑え込むため緊急事態条項が必要なのです。かつて、この国で非常事態を理由に憲法が停止されたことがあります。一つ目は米騒動のとき、二つ目は関東大震災のとき、そして二・二六事件のときです。いずれも、社会秩序の混乱を鎮圧する非常措置として戒厳令が敷かれ軍隊が出動しました。国民の安全というより、国家の安全のためでした。緊急事態条項は正確には国家緊急事態条項であり、権力の独裁を可能にする規定です。

このような危険な憲法改正をコロナのどさくさに紛れてやろうとするのは惨事に便乗した悪徳商法・詐欺商法と言うしかありません。断じて許すわけにはいきません。

 

(以上)

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◆4月19日に行われた「スタンディング・アピール」の際のスピーチ原稿を載せます。

人間の安全保障を

三好康昭

コロナウイルスの感染がとどまることを知りません。政府はとうとう全国に緊急事態を発しました。人々の間に不安が広がっています。私の妻は、7度前後の発熱が続きました。時節柄、感染を心配して、熱海の保健所に電話しました。なかなか通じません。2時間ほどしてやっとつながって症状を訴えました。しばらく家で様子を見てくれ、という返答でした。今、全国でこうしたケースが溢れているでしょう。感染しているかもしれない、と不安を抱えていても、PCR検査を受けられない。なぜか。相談窓口が保健所に限られているからです。その保健所の数が少ない、職員も少ない。公衆衛生にかけるお金を減らすため、国は平成の30年の間に保健所の数を半分に減らしました。保健師さんもわずか5~6人に減少しました。数少ない職員がコロナ相談に追われ疲弊しています。

病院はどうか。感染の危険が一番高いのは治療に当たる医師と看護師です。ところが、感染を防ぐ防護品が足りない。マスクがない、ゴーグルがない、防護服がない。大阪では雨合羽やポリ袋で代用していると聞きました。院内感染が発生すれば病棟は閉鎖しなくてはなりません。素人が考えても、今、国が集中して取り組むことは医療現場に人とモノとお金を投入することでしょう。全世帯に安倍のマスクを届けることなんかではありません。

医療制度研究会の本田宏さんによると、日本は医療費と医師数が先進国で最低だそうです。医学部の定員を削減する。8万人の医師に過労死ラインを越える労働時間を強いる。赤字病院を減らすためと称して公立病院の統廃合を進める。国民には窓口負担の引き上げを求める。こうして、人の命と健康にかかわる社会保障費を削減してきました。

それとは逆に毎年増やし続けてきたのが軍事費です。安倍政権下で、6年連続で史上最高額を更新。今年は最大の5兆3133億円です。いくら戦闘機やミサイルを増やしても今の危機に何の役にも立ちません。国は国民の命と健康、安全・安心を守ることを最優先課題にすべきです。コロナが終息した後、日本は軍事力による安全保障ではなく、感染症や気候危機、原発の危険から人々の命と安全を守る社会へ、人間の安全保障を第一にする社会に変わらなければなりません。これがコロナから私たちが学ぶ教訓だろうと思います。

(以上)

 

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◆3月19日の「スタンディング・アピール」でのスピーチ予定原稿を載せます。

コロナウイルス対策

三好康昭

先週、インフルエンザ特別措置法の適用対象にコロナウイルスを加える改正法が成立しました。これによって、首相が「緊急事態」を宣言すると、都道府県知事が学校や図書館など公共施設を閉鎖したり、集会やイベントの開催の中止を要請したり、命令を出すことができることになりました。また、私有の土地や建物を強制的に診療所や病院に使うことも可能になります。緊急事態を名として国民の人権が、集会の自由や移動の自由が制限され、財産権が奪われます。

漫画家の小林よしのりさん、かなり右翼的な人ですが、この人が言っています。「日本人は個が弱いから独裁に従うだろう」と。安倍首相の休校要請に99%の学校が従いました。個が弱いせいでしょうか。私は情報が与えられていないせいだと思います。コロナの感染力や予防するにはどうしたらいいか。正確な知識や情報がないため、不安に駆られる。マスクやトイレットペーパーを求め右往左往する。個が弱いからではなく、正確な情報が与えられていないため、上で決めてくれ、となるのだろうと思います。行政がそうさせているとも言えます。

政府がなすべきことはなんでしょう。何よりも、正確な科学的根拠に基づく情報を伝えることだと思います。休校についていえば、どういう予防策が必要で、そのための学校の選択肢が何か、ということをガイドラインで示し、決定は住民に一番近い自治体の判断に任せるべきです。今回のように、根拠もなく唐突に全国一斉休校のような措置をとれば、混乱するのは現場です。何の準備もなく思い付きで強権を振るえば、ひどい目を見るのは国民です。

第二にやるべきことは、国の予算を投じて、検査体制と医療体制を早急に整えること。そして、必要な生活物資を確保し供給することです。一律の現金給付のような見え見えの株価対策はやめるべきです。

手続きを無視し科学的根拠も無しに、「緊急事態だ、非常事態だ」と強権を振り回されては、国民がたまったものではありません。まして、憲法に国家緊急権を導入する実験台だ、などと言うとんでも発言を許してはなりません。

(以上)

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◆2月19日の「スタンディング・アピール」でのスピーチ原稿を載せます。

恣意的な法律解釈

三好康昭

検察庁のトップは検事総長、ナンバーツーは東京高等検察庁の検事長で、現任者は黒川氏。彼は2月7日に満63歳になりました。検察庁法では検察官の定年を63歳にさだめているので、本来は退職していなければなりません。ところが、安倍政権は法律を無視して定年を延ばしました。7月に定年を迎える今の検事総長の後釜に据えるためです。黒川氏は政権に近い人物だと言われます。法律を無視して、こんな身びいきな人事が許されていいのでしょうか。政府は法律を無視していない、法律の解釈を変えたんだ、と弁明しています。定年延長を認めている国家公務員法が検察官にも適用されることにした、というのです。こんな勝手な解釈変更は許されません。国家公務員法は一般法で、検察庁法は特別法です。犯罪を行った少年に適用されるのは刑法ではなく、少年法です。検察官に適用されるのは特別法である検察庁法です。

こういうルール破り、法律破りを平然とやるのが安倍政治です。今、私たちは2015年の戦争法強行採決に抗議して、ここに集まっています。あの時もそうでした。それまで憲法上許されないとしてきた集団的自衛権を一内閣の閣議決定で勝手に変えて、海外での戦争に日本も加担できることにしたのです。立憲主義の破壊です。同じことを今もやっているのです。客観的な法に基づいて政治を行うのではなく、法をねじまげて、自己都合の政治をするのが安倍政治です。

理屈が通らないから、言葉でごまかそうとします。参加者を募ったけれど、募集はしていない。ホテルと合意はしたが、契約はしていない。言葉でごまかし切れなくなると、データを隠し、破棄し、あげくは改造する。辺野古の軟弱地盤のデータ隠し、桜を見る会の招待者名簿の破棄。ねつ造、偽造、晋三という言葉があるそうです。その晋三が、一昨日、国会でもうヤジを飛ばさないと言いました。誰も信じないでしょう。質問者を嘘つき呼ばわりする当人が嘘八百を並べていることをみんな知っています。

声を大にして言いたい。ルールを守れ、法律の無視・私物化は許さない。ウソはやめろ、安倍も今すぐやめろ。

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◆1月19日、伊東市観光会館前で「スタンディング・アピール」活動が行われました。そのときのスピーチ予定原稿を載せます。

ソレイマニ司令官の殺害

三好康昭

アメリカとイランとの間の緊張が高まっています。原因は明白です。

年明け早々、アメリカが無人機ドローンを使って、イランの革命防衛隊司令官を殺害しました。トランプ大統領は殺害後、われわれは最も危険なテロリストを片付けた、米国はより安全になった、と演説しました。しかし、危険人物というだけで、国家の重要人物を一方的に殺害することが許されるでしょうか。トランプは攻撃を受ける差し迫った危険があったことを説明できません。そんなことは大したことはない、と開き直っています。気に食わないから、先にやってしまえ、という論理です。テロリストはどっちでしょうか。イランは報復攻撃をしました。そのあおりで民間機が撃墜され、何百人もの人がなくなりました。国家同士の緊張が高まると、巻き添えを食って悲惨な目に合うのはいつも一般市民です。

アメリカは2001年にアフガニスタンに攻撃を仕掛けました。2003年にはイラクに戦争をしかけました。戦争はまだ続いています。この間、一体どれだけの罪のない人たちの命がうしなわれたのでしょう。冷戦後、アメリカはずっと戦争をしてきました。イランでも、イラクでも、アメリカは中東から撤退しろ、という民衆の声が高まっています。

そんな時、日本は中東沿岸に自衛隊を派遣します。護衛艦とP3C哨戒機。何のためか。この海域の調査・研究のため、だと言います。しかし、得られた情報は米軍に提供されます。米軍との情報共有が目的です。イランからしたら、自衛隊は米軍の偵察部隊です。いざとなれば、自衛隊の艦船も飛行機も攻撃の標的となりかねません。

安倍首相は新安保法で日米の同盟関係が強化されたと誇ります。しかし、今回の中東への自衛隊派遣を見ればわかります。強化された日米同盟とは、米国のために日本も一緒に闘う日米戦争同盟に他ならないのです。私たちはこの道を進むことを拒否します。自衛隊の派遣に抗議するとともに、新安保法の廃止を粘り強く求めていきます。

(以上)

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◆11月19日(火)、伊東市観光会館前で行われた「スタンディング・アピール」のスピーチ原稿を載せます。

二つの「身の丈」発言

三好康昭

今週の土曜日23日は勤労感謝の日です。以前は新嘗祭と呼ばれ、宮中では天皇が新穀を神に供える祭儀を行います。即位後最初の新嘗祭は特別に大嘗祭と呼ばれ、先ごろ執り行われました。天皇が祖先神に新穀を捧げ自らもそれを食べることによって、神と一体となり位を受け継ぎます。非常に宗教色の強い儀式です。費用は全部で25億円もかかるそうです。出所は宮廷費、つまり公費です。天皇一家の宗教的儀礼のため25億円もの公費が使われます。当事者の秋篠宮は「身の丈に合った」儀式にして、費用は内廷費から、天皇と皇室の家計から出すべきだと言いました。「身の丈に合った」というのは憲法の政教分離の原則に適ったやり方で、という意味です。次期天皇のこの問題提起は無視され、巨額な公費と憲法原則は宙に飛んで行ってしまいました。

同じ「身の丈」発言のため、萩生田文科大臣は大臣の職を失うところでした。彼は、地方の受験生が民間英語試験を利用できないのは仕方ない。「身の丈に合った」受験をしろ、と言ったんです。教育格差を是正すべき立場にある文科大臣が格差を容認する発言をしたため轟々たる非難を浴び、業者テストは再検討となりました。

「身のほどをわきまえて分相応に振る舞え」というと、封建時代の考えのようですが、実は新自由主義の考えそのものです。企業を支える人材は能力を蓄積する正社員、専門能力を持つものは短期の契約社員、それ以外は非正規の労働者でいつでも首にできる。それぞれの能力や成績に応じて待遇に差をつけるのは当然という考えです。その結果が、非正規労働者が2000千万人という今の姿です。

たしかに、新自由主義は建前の上では機会の平等を謳います。平等な機会を与えたのだから、競争の結果差がつくのは自己責任で仕方ないといいます。一見もっともらしいのですが、果たして機会の平等が本当に保障されるのか。受験の機会は同じであっても、受験に至るまでの環境や学習条件は大きく違います。非正規労働者になるかならないかも、就職期の景気動向に左右されます。機会の平等は新自由主義を唱える富と力を持つ人たちが、現実の不平等をゴマカし正当化する口実なのです。1%の人間が国民の総所得の50%以上を占めるような不平等が公正な競争の結果だと信じる人はいないでしょう。私たちは結果の平等を求めるべきです。どの人も人間らしく生きる権利が保障される社会の実現を憲法25条は求めています。機会の平等から結果の平等へ、これが私たちが目指す社会です。

(以上)

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◆10月19日(土)、伊東市観光会館前で行われた「スタンディング・アピール」のスピーチ原稿を載せます。

             改憲の世論づくり

三好康昭

台風19号が日本列島を直撃してから1週間になります。各地で河川が氾濫し土砂が崩れ、何千・何万の人たちが被災しました。亡くなった方は80人近く、未だ行方不明の人もいます。ところが、政権最大与党の自民党の二階幹事長は、まずまずの被害で収まってよかった、と信じられない発言をしています。この人の神経は一体どうなっているのでしよう。おまけに発言を非難されると、「言葉尻をとらえても復旧ははじまらない」と居直る始末です。

この人のおひざ元、和歌山市で、昨日、一千人の支持者を集めて憲法集会が開かれました。二階氏は憲法改正の機運を盛り上げよう、と訴えました。安倍首相はビデオメッセージを寄せて、「今の憲法は70年もたっているから、改正していくべきだ」と呼びかけました。

政権を担っている人たちにとっては、台風の被害よりも、復旧よりも憲法を変えることの方が大事なんです。「被害はまずまずで収まった、さあ憲法改正の世論を盛り上げよう」というわけです。

安倍首相と自民党の執行部は焦っています。国会の憲法審査会が思うように進まないことにいら立っています。このままでは安倍晋三の総裁任期中の憲法改正が難しい。そこでもちだした戦術が、地方から改憲機運を盛り上げ、国会を動かすことです。この方法が上手くいった先例があります。1970年代の国旗・国歌の法制化の動きです。先導したのは今の日本会議の中心メンバーたちです。地方議会を動かし、賛成議決をあげさせ、国会での法制化につなげました。彼らは二匹目のドジョウを狙っています。全国300の小選挙区単位に地方改憲推進本部をつくり、改憲世論の盛り上げを図ろうとしています。

争いは国会だけではなく、地方で、草の根で闘われようとしています。一方は災害被害者の苦難など眼中にない連中、原発を再稼働させるために地元の顔役からワイロを平気で受け取るような連中です。私たち市民一人一人の力は微力ですが、決して無力ではありません。このようなアピール行動で、3000万署名の対話を通して、平和憲法を守る決意を草の根から広げ、安倍改憲に反対する大きな世論を作っていこうではありませんか。

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2019年参議院選の感想ーその2ー

三好康昭

(2)政治を変えるために-その1

政治を変えるには、これまで棄権していた人が投票し、投票率をあげることである。①の諦念者と③の選挙を政治ショーと捉える人たちの心情に訴えことである。①の人たちの失望感を期待感に変え、③の人たちの興味を引くような政治のショー化をはかること。この人たちは政治(選挙)の消費者であるから、できるだけ政治商品を「おいしく、面白く」見せることが必要だ。そのための手っ取り早い方法が「敵」をつくること。攻撃する対象を明示化し名指しすること。NHKに限らない。在日朝鮮人、移民、生活保護受給者。国で言えば、北朝鮮、中国、最近は韓国も。政権の攻撃対象と近い人や国が標的にされやすい。新興政党がこの手を使うが、時には政権与党もこうしたポピュリズム的宣伝を駆使する (2017年総選挙時の「国難突破」)。政治を消費の対象ととらえる人より、「政治はよそ事」と冷めている人((1)の➁の人)の方がポピュリズムに対する免疫力が強い。

 

(3)政治を変えるために-その2

政治への諦めと政治のワイドショー化にどうやって立ち向かうか。言い換えれば、政治を与えられた商品のように消費するのではなく、自らが当事者となってつくっていく-主体化する-にはどうしたらよいか。有権者・市民の立場から思いつくことを例示する。

ⅰ)政治を選挙だけに限定しない。選挙の時だけの主権者にならない。同じことたが、自分たちの問題を政治家と行政に丸投げしない。政治を日常化する。

ⅱ)「政治の日常化」とは自分たちの暮し・生活にかかわる問題について、自分たちが当事者となること。問題の解決のために仲間と協働する。

ⅲ)協働のために、学習と行動に向けた小サークルをいくつもつくり、活動をする。

ⅳ)活動の一環として選挙を位置づける。個人の意思を尊重しながら、政党との選挙の共同(ポスティング、電話掛け、等)をいとわない。

 

(4)まとめ

 議席配分からいえば、自民党は改選前より10議席減らし、参議院での単独過半数を失ったわけだから、明らかな敗北だ。さらに、改憲勢力が参議院で2/3を割ったことは安倍政権にとっては大きな痛手だ。しかし、公明党と合わせて政権与党が改選数の過半数を占めたことも事実だ。野党が勝ったとはいえない。政治の現状に不満を持っている人は多い。不満の捌け口の一つとして棄権という行動が選ばれ、他の一つとして「令和新撰組」や「NHKから国民を守る党」、さらには「維新」など、ポピュリズム的な党派への支持に向かった。共産党を含めた既成野党はこれらの人たちに「政治を変える希望」を与えることはできなかった、といわざるをえない。今後、戦術的意味での中央での野党共闘・選挙共闘を追求するだけでなく、地方レベルで有権者・市民との共同をどう作っていくかの戦略が必要だろう。

(おわり)

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◆2019年参議院選挙の結果について、一個人の感想を記します。

 

2019参議院選の感想-その1ー

三好康昭

(1)48.8%の低投票率をどうみるか

投票率が50%を割ったのだから、この選挙の勝者=多数派は棄権者ということになる。既成政党はもちろん選挙に出馬した個人・団体のすべてが敗北した。(7/24朝日新聞社説のタイトルは「政党が『棄権』に負けた」)。さらに言えば、議会制民主主義が敗北した。少なくとも危機的状況にある、とは言えるだろう。

棄権者が棄権した理由は何か。推測で列挙してみる。

①投票しても変わらない。         →政治不信、諦め。ニヒリズム。

➁政治に期待しない。政治に関心がない。  →政治はよそ事。

➂魅力ある政党・候補者がいない。     →選挙に面白味がない。

④投票する時間がない、交通手段がない、その他投票できない理由がある。

①と➁が大方の理由だろう。➁の無関心層は常に一定割合で存在する。①の層は時々の政治状況で増えたり、減ったりする。➂の層も同じ。風が吹けば投票に行く。「令和新撰組」はこの層の人たちをかなり投票場に足を運ばせたのではないだろうか。

今回の低投票率をもたらした一番の原因は①の層が増えたからだろう。安定とは名ばかりの安倍長期政権の停滞。野党の力のなさ。政治・政治家の失態続き。政治・外交をめぐる閉そく状況が、政治離れ、選挙離れを引き起こしている。不満がないわけではない。年金、賃金、社会保障、財政など不満を抱えている。が、それが望む方向に変えられる、という期待をもてない。政治への諦めと失望感が広がっている。それが①の人々が増えた理由である。

注意すべきは、この層の人たちは心情が流動的で不安定なことである。今は、「何をしてもかわらない」というあきらめの感情が強く、政治へのポテンシャルなエネルギーは低い。が、いったん不満感情に火がつけば、怒りからであれ期待からであれ、アクティブな政治行動に出る。敵が名指しされたとき、実際に衝突が起こったとき、感情の噴出がおこる。政治の過剰が生まれる。ポピュリストはこの不安定な心情に火をつけようと、敵をさがしている。敵は誰でもいい。(「NHKから国民を守る党」のように)。

投票をしても「政治は変わらない」と考える人たちが増え、「政治を変えたい」という人が少なくなれば、結果的に政治は変わらない。現状が維持され、現政権が存続する。これを「国民は政治の安定を欲した」と捉えてはならない。国民は現在の政治にNO!という意志を投票しないという行動で表わしたのである。しかし、彼らのNO!の意思表示は議席には反映されない。政治は投票した人の意志できまる。投票する人の党派別の選択は選挙ごとにだいたい決まっていて大きな変動はない。したがって、棄権者が多くなれば、これまでの議席配分がだいたい維持され、その結果、現政権が存続する。この意味で、棄権者は結果的に現政権を支えていることになる。森 喜朗前首相が「有権者が寝ていてくれた方が良い」と言ったのは本音である。

(つづく)

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◆6月19日、伊東市観光会館前で行われた「スタンディング・アピール」のスピーチ原稿を載せます。当日は強い日差しの中、30人近い人たちがアピール行動に参加しました。

自明の選択

三好康昭

参議院選挙の日程が固まりました。二週間後の7月4日に公示、投票日は7月21日です。選挙に向けてそれぞれの政党が選挙公約を発表しました。5つの争点について、自民党と5野党共通政策を対比してみましょう。

まず原発政策。

原発の再稼働を進める。これは自民か野党か。簡単ですね。自民党の公約です。野党は原発ゼロを目指す。

日本の大企業の総本山は日本経団連ですが、その会長は原発をイギリスに売り込もうとした日立製作所の中西会長です。自民党がどういう人たちの利益を国の政策として進めようとしているか、明らかです。

二つ目、辺野古基地建設。

辺野古基地の建設を直ちに中止する。これは野党の共通政策です。沖縄県民の圧倒的多数の願いに沿うものです。自民党の公約は着実に建設を進める。一体これは誰のためでしょうか。米軍ですね。沖縄県民ではなく、米軍のために巨額なお金をかけ沖縄の自然をめちゃくちゃにしようとしているわけです。

三つ目、消費税の値上げ。

10月から10%に引き上げる。言うまでもなく自民党、そして公明党の公約です。一体これは誰の利益を図るものでしょうか。年金2000万円の不足を補うものでしょうか。全然違いますね。政府は閣議決定で、この報告書を受け取らないと決めました。報告書はない、だから年金不足もなかったことにする。対策もとらない。ひどい話です。この一事でも、社会保障充実のための消費税増税が嘘っぱちだということがわかります。では何のためか。またしても大企業とアメリカのためです。法人税のさらなる値下げとアメリカからの5兆7000億円の兵器購入を可能にするためです。

時間が無くなりました。一つ飛ばして最後に憲法改正。

自民党の公約は早期の憲法改正。野党は安倍9条改憲に反対し、改憲発議をさせない。憲法改正は誰のためでしょうか。まさか、安倍晋三のおじいちゃん、岸信介のためではないでしょう。

原発再稼働から9条加憲まで、すべての政策で自民党の公約はわれわれ庶民の願いと正反対です。来たる参議院選挙でのわれわれの選択は明らかではないでしょうか。安倍政権を支える自民党と公明党の議席を減らすために、ともに力を尽くしましょう。

(以上)

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◆4月19日、伊東市観光会館前で行われた「スタンディング・アピール」でのスピーチ原稿を載せます。

            つけは私たちにまわされる

三好康昭

10日前の4月9日に青森県の三沢基地から飛び立った最新鋭の戦闘機F35Aが消息不明となり、翌日太平洋上に墜落したと発表されました。パイロットはまだ見つかっていません。

F35Aは前から機体の欠陥が指摘されていました。アメリカの会計検査院は966件もの欠陥があると言っています。値段は一機140億円。140億円が海のもくずと消えました。日本はトランプの要求を呑んでこのF35Aと同型の35Bを合わせて147機を購入します。全部で1兆7000億円も支払うのです。何でこんな爆買いをするのでしようか。トランプのご機嫌を取るためでしょうか。それもあるでしょうが、もっと大きな理由があります。それは自衛隊と米軍の一体化を共通の戦闘機を備えることによって進めるためです。短距離離着陸が可能なF35Bは海上自衛隊の護衛艦「いずも」に搭載します。「いずも」は事実上の「空母」になります。将来的には米軍の35Bも「いずも」から離発着するでしょう。アメリカの最新鋭戦闘機をこんなにも爆買いするのは日米の軍事同盟化を兵器の面から押し進めるためです。

防衛予算は今年度5兆2500億円。史上最高額です。しかし、これでも147機をいっぺんに買うことはできません。何年かに分けてつけで買います。5年払いのローンを組む。その額は何と5兆3000億円を超えます。今年の防衛予算の全額を上回ります。

爆買いのつけは私たちに回されます。一人当たり4万2000円のローンを背負わされます。安倍内閣は毎年生活保護費を削ってきました。年金は下げられました。しかし、歳出のカットだけでは足りません。そこでわれわれの懐からお金を巻き上げる。国民健康保険料を引き上げ、消費税を引き上げる。増収分はアメリカへのローンの支払いに充てられます。これが増税の本当の目的です。

欠陥が指摘されている戦闘機を買うお金を保育所を作ることにまわせば、たった二機分で全ての待機児童をなくせる認可保育所を作ることができます。

アメリカの戦争をともに戦う戦争同盟の道をやめて、私たちの生活と暮しを守るために消費税の増税に反対の声を上げましょう。そして強きを助け弱者をいじめるアベコベ政権を終わりにさせましょう。

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◆2月19日伊東市観光会館前で新安保法制強行に抗議する毎月恒例の「スタンディング」がありました。それに向けて用意したスピーチ原稿を載せます。

社会の空気が変わる

                                 三好康昭

 自衛隊を憲法で認めると何が変わるのでしょう。自衛隊の任務や活動はどう変わるのでしょう。改憲の旗を振っている安倍首相は「何も変わらない、これまでと同じだ」といっている。何も変わらないなら、700億円もかけて国民投票をするな、という話です。いつもの安倍の嘘とごまかしです。そこで、今度は得意の感情論を持ち出します。教科書で自衛隊が憲法違反だと書いてあるから自衛隊員の子どもがいじめられる、と。トランプ顔負けのフェイクです。さらにもう一つフェイクが加わりました。自衛隊に人が集まらないのは、自衛官の募集事務を自治体が妨げているからだ、「都道府県の6割が名簿提出に協力しない。」と出まかせを言いました。あげくに、これもかれもみんな憲法のせいだ、「憲法に自衛隊を認める規定がないからだ」と八つ当たりしたあげく、こう言いました。「自衛隊を憲法に書けば、社会の空気が変わる」。ウソ八百を並べる安倍首相が本当のことを言いました。自衛隊をめぐる社会の空気が変わる、そのための改憲なんだ、と本音を語りました。

ではどう変わるのでしょうか。これまで9条によって抑制されてきた自衛隊の存在が社会の前面に大手を振って登場するようになるでしょう。今、沖縄がそうであるように、自衛隊を含む安全保障の問題では国の命令が絶対となり、自治権は踏みにじられます。自衛官募集に非協力的な自治体は社会から糾弾されるでしょう。国から地方へと一元的な統制が進みます。その先には、徴兵事務の地方移譲が待っているかもしれません。  

さらに重要なことは政府批判の自由が制限されることです。つい最近、東京新聞の望月記者の質問を菅官房長官が封じ込めました。「辺野古の海に赤土が投入されているのではないか」と質したら、事実に基づかない質問はするな、封じました。菅によれば、政府に都合の良い情報が事実であり、それを疑う質問は許されないのです。米軍や自衛隊をめぐる問題については、政府に批判的な質問は抑圧されます。今進行している事態に、自衛隊の合憲化が加わったらどうなるでしょう。米軍と海外で戦争をする自衛隊と政府を批判する意見を、例えばこの場で言ったとしたらどうなるでしょうか。私たちは非国民として糾弾されるかもしれません。

 安倍首相が言うように、自衛隊を憲法に書き込むことは「社会の空気を変える」ことになります。皆さん、安倍の嘘の裏にある真実を見極めようではありませんか。

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◆2019年1月10日(木)、平和委員会城ケ崎サークルの月例会が開かれました。そこで報告した「3000万署名の取り組み―個人として、組織としてー」を二回にわたって掲載します。第二回目。

3000万署名の取り組み-個人として、組織として-

三好康昭

【Ⅱ】組織としての取り組み

(1)「伊東市民アクション」の立ち上げ

全国市民アクションからの3000万署名提起に応えて、伊東で署名活動を推進するためには、皮袋を新たにする必要があると考えました。それまで「戦争法廃止」に取り組んできた「総がかり行動 伊東連絡会」を改組し、①個人も加盟できるようにする、②「安倍改憲NO!」に特化して運動する組織とする。『総がかり』の斉藤昭夫さんや伊藤廣光さんらの賛同を得て、昨年1月「伊東市民アクション」が誕生しました。その経緯は別紙の「…発足の経緯」に書きました。新組織は署名集めを中心に活動しますが、同時に学習会を並行して実施していくことにしました。全5回の「憲法ミニ学習会シリーズ」と山内敏弘先生、宇都宮健児先生の憲法講演会がそれです。ここでは3000万署名に絞って述べます。

 

(2)「市民アクション」としての3000万署名の取り組み

①3月10日(土)、湯の花通りで街頭頭署名を行いました。11名が参加し21筆。市民向けの宣伝には有効ですが、参加人数の割に署名数は少なかったです。以降は地域に入っての戸別訪問を主体に署名に取り組みました。

➁4月4日(水)、荻地区で共同署名(8人、54筆)。5月22日(火)、宇佐美地区で共同署名(8人、74筆)。どちらもその直後の「憲法ミニ学習会シリーズ」に連動して行いました。街頭署名に比べてたくさん署名を得ました。ただ参加者が固定していることが限界です。

➂この他に、I.Hさん達が数次にわたって地域署名に取り組みました。また、新婦人の会では河津桜祭りや小室山のつつじ祭りなどイベント会場で署名活動を行いました。

以上が、昨年5月末までの署名活動の概要です。伊東市では7,000筆超、全国では1,350万筆達成が報告されています。個人としても、「市民アクション」事務局としても、3000万署名活動に一区切りついたと考えました。その後どのように改憲反対運動を進めていくか、模索しました。例えば、国民投票になったとき、改正反対に一票を投じる人の名簿作りに着手する活動も考えましたが、時期尚早と判断して見送りました。他方、全国では依然として3000万署名運動が続いています。伊東市の運動を再構築することが必要でした。別紙の「これからの「市民アクション」の活動-メモ-」はそんな思いから10月の事務局会議に提出したものです。

 

(3)第二次の3000万署名の取り組み

事務局会議の議論を経て、11月以降仕切り直しをして第二次の3000万署名に取り組みました。主なものは次の二つです。

①毎月「9の日」に地域共同署名に取り組む。これまで三回実施しました。11月10日(参加者6人、48筆)、12月9日(参加者4人、29筆)、2019年1月9日(参加者8人、34筆)。実施すればそれなりに署名を取れるのですが、参加者が少ないです。

➁受取人払いのポスティングカードを7,000枚用意。伊東市内で新婦人の会が2,000枚、コミセン単位で地域ごとに4,100枚を投函しました。返信される署名カードは僅かな数と予想されますが、地域単位で-城ケ崎サークルでも-投函活動に取り組んだことに大きな意味があったと思います。

 

【Ⅲ】これからどんなことができるか―意見交換―

 

(以上)

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◆2019年1月10日(木)、平和委員会城ケ崎サークルの月例会が開かれました。そこで報告した「3000万署名の取り組み―個人として、組織としてー」を二回にわたって掲載します。第一回目。

3000万署名の取り組み-個人として、組織として-

三好康昭

【Ⅰ】個人としての取り組み

(1)発端

全国市民アクションが結成され、「安倍9条改憲NO1」の3000万署名達成をよびかけたのは2017年9月のことだったと記憶します。安倍首相が自衛隊を憲法に書き込むいわゆる「9条加憲」の方針を打ち出したことに危機感を持ち、新たな組織が作られました。「総がかり行動実行委員会」とは異なり、安倍改憲NO!の一点に絞った運動体です。

私は個人としても、組織としても、全国市民アクションの提起に応えて、3000万署名に取り組みたいと考えました。「戦争法廃止の2000万署名」のときに、近所を歩いて180筆集めた経験があります。心理的なハードルは高くありません。政局は10月下旬の衆議院議員総選挙で改憲勢力が2/3を優に超えて、安倍改憲が一層現実味を増しました。私の戸別訪問開始は11月1日からです。それから現在まで1年2ヵ月余、3か月余りの中断を挟みながらコツコツと署名集めをしています。現在の獲得数は454筆です。

 

(2)継続して取り組むために

「退職教職員の会」の通信原稿として別紙の「3000万署名、私の取り組み」を書きました。毎月50筆を集めることを目標に、家々を回りました。1時間歩いて5~6筆。週に2回のペース。3/21の時点で237筆を得ました。どうしたらコンスタントに継続することができるでしょうか。その秘訣は”ルーティン化”することではないかと思っています。私は近くの小室山公園をウォーキングします。家に戻ったら靴を脱がず、そのまま玄関に置いてある署名簿を抱えて近所を廻ります。この繰り返し。何か月もすると、歩いていける所は終わり、車で出張します。川奈聖書教会の駐車場をお借りしたり、パチンコ屋さんの駐車場を利用したり。時には、城ケ崎灯台まで出張したこともあります。吉田の新興住宅地を廻ったときは、土日の午前中と時間を決めて歩きました。通勤者が多いだろう、と考えたからです。

 

(3)心掛けていること

私は9条を守ることに確信をもって署名集めをしていますが、違う考えの人もいるし、政治向きのことを嫌う人もいる。さまざまな考えがあって当然、というスタンスで臨んでいます。教え諭すということはしません。ただ、事実誤認―と私には思われる―の主張には反論します。例えば、『北朝鮮の脅威』を挙げて改憲に賛成という人がいますが、自衛隊の憲法明記と北朝鮮の脅威とは論理的な関係はないことを説明します。他に気を付けていることは、始めにこちらの住まいと名前を言うこと、辞去するとき貴重な時間を割いたことのお礼を言うこと。

 

(4)戸別訪問してわかること

これまでに廻った家は2000軒を超えるでしょう。気が付いたことを箇条書きにします。

①一番多い反応は「わからない」「難しいことはわからない」というもの。「憲法は難しい」という人と、「政治には疎いから」という人、の二類型がある。いざ国民投票となったら、改憲派に与する可能性が高い。

➁改憲賛成を明言する人は1割程度。改憲反対=署名者の1/3くらい。賛成理由は北朝鮮・中国の脅威を挙げる人が多い。中には北朝鮮による拉致は9条のせい、という人もいた。ネットや政府の宣伝―17年10月の総選挙時の宣伝―が浸透している。

➂改憲に反対し、署名してくれる人は応対者の3割程度。一番多い理由は「戦争の可能性が高まる」というもの。森友・加計問題がクローズアップされているときでもあったので、安倍内閣そのものへの不信を理由にする人もいた。

④改憲の是非とは別に、署名集めそのものに抗議する人、端から「あんたは共産党か」とレッテル張りをして拒否する人もいた。政治=友敵関係、という閉鎖的意識が強いと感じた。政治を気軽に語り合う文化から遠い。

(つづく)

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◆12月19日に伊東市観光会館前で行われたスタンディング活動でのスピーチの原稿を載せます。

             辺野古の海を守れ

                          三好康昭

1214日に、沖縄防衛局は辺野古の海に土砂を投入しました。亡くなった翁長知事の埋め立て承認の撤回を無視し、新知事に選ばれた玉城デニーさんの対話を求める訴えに耳をかさず、埋め立て工事を強行したのです。これが安倍晋三氏のいう、沖縄県民の心に寄り添うことの正体だったのです。法治国家も民主主義も彼には馬の耳に念仏でしかないのです。

私は16日の日曜日に伊東駅前で抗議行動をしました。この「埋め立てNO!」のプラカードを下げ、安倍9条改憲反対のカードを通行する人に配りました。「国はひどいことをするね」と言ってカードを受け取ってくれる人や、なかには署名したカードを切り取って渡してくれる人もいました。が、小雨のぱらつくなか、多くの人は黙って、あるいは手を横に振りながら、通り過ぎました。沖縄も、辺野古も私には関係ない、と言っているかのようでした。でも、自分の住んでいるところで、この伊東で、目の前の海が何百メートルにわたって埋め立てられ、滑走路が作られ、上空を戦闘機やオスプレイが轟音を轟かせ飛び交う姿を思い浮べたら、私たちは黙っていられるでしょうか。国の安全保障だとか、抑止力だとか、そんな抽象的とことではありません。自分たちの海と空と生活が自分たちと関係ないところで、かってに作り変えられてしまうのです。想像力を少し働かせれば、今沖縄で起こっていること、辺野古で起こっていることが如何にひどいことであるか、わかるはずです。私には関係ないと思っている人が多数であるために、安倍政権はこんなひどいことができるのです。

 黙って通り過ぎた人たちも、心の中では「私は賛成ではない、もっと他にやり様があるのではないか」と思っていたかもしれません。でも、いくら心の中で思っていても、外に出して声を上げなければ、結果として今起きていることを認めることになってしまいます。声をださなければ、「辺野古に基地を作るな、辺野古の海を守れ」と叫ばなければ、力にはなりません。一人では小さな声でも、百人、二百人と合わされば、大きな力になります。皆さん、私たちと一緒に、「辺野古の海を守れ」と声を上げようではありませんか。

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◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第八回目、最終回となります。

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◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第七回目。

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◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第六回目。

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◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第五回目。


◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第四回目。


◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第三回目。

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◆宇都宮弁護士の講演記録を載せます。第二回目。



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◆10月6日伊東市で宇都宮健児弁護士の憲法講演会が開かれました。録音機から文字起こしした講演記録を以下に連載します。宇都宮弁護士の校正をへています。第1回目



 


◆昨日(10月19日)、伊東市観光会館前で恒例の「19日行動」がありました。参加者は30人。初めての人も何人か。小雨がぱらつくなか、スピーチやコールを交え賑やかにスタンディング活動を行いました。以下にスピーチ原稿を紹介します。当日はスピーチする人が何人もいて出番はありませんでした。

           安倍晋三氏の3本の矢

                          三好康昭

自民党総裁に三選された安倍晋三氏が、最後の任期でやろうとしていることは何でしょうか。

第一に、沖縄の辺野古基地建設に遮二無二突き進むこと。沖縄県民がいくら反対をしても、玉城デニーさんが何と言おうと、まったく聞く耳を持たない。翁長さんが下した埋め立て承認の撤回の効力を無くすため、国土交通大臣に申し立てをしました。何が何でも土砂投入を強行する腹です。「沖縄県民の心に寄り添う」なんてよく言えたものです。

第二に消費税の増税。二度にわたって選挙目当てに先延ばしにした増税を、来年こそ10%にあげる、と閣議決定しました。財政再建のためだという。さんざん国債をばらまいて公共事業に大盤振る舞いしたあげく、その付けを私たち庶民に払わせようというのです。酷い話です。社会保障の充実がもう一つの理由です。この101日から生活保護費が3年間で210億円カットされます。安倍政権の6年間で生活保護費は何と1480億円削られたのです。これでは生きていけない、と今全国で裁判が起こされています。弱者をさんざん苦しめておいて、あげくに増税。その口実が社会保障。悪い冗談です。本当の理由は別の所にあります。今年12月に「防衛計画の大綱」が改訂されます。新たな装備をまかなうため、自民党の国防部会は防衛費をGNP2%までふやすことを検討するよう提言しています。今、防衛費は史上最高額の5兆3千億円。これを倍の10兆円以上に増やせ、というのです。消費税増税の本当の狙いはここにあります。

第三の仕上げが憲法9条の改悪。自衛隊を憲法に書いて、正々堂々と海外で戦争できるようにしたい。そのための軍事費の増大、そのための辺野古基地建設です。安倍首相は任期中に何としても改憲を実現したい。つい先ごろ、自衛隊の観閲式に臨んでその意欲を表明しました。現職の総理大臣がその資格で、事実上の憲法改正を口にしました。あり得ないことです。安倍首相には憲法を尊重する気などまるでありません。憲法改正などあんたに言われたくない、という話です。

 以上が3選後の安倍政権の悪政の3本の矢です。最後の任期になって、安倍首相はなりふり構わずやってくるでしょう。私たちは彼を任期途中で引きずりおろして、毒の塗られた三つの矢をへし折らなくてはいけません。頑張りましょう。

 

(以上)

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◆10月15日に新婦人の会・伊東支部で安倍首相が狙う「九条加憲」について、学習会がありました。その時、説明用に作った「九条加憲は何を狙っているか、追加補充」を紹介します。

九条加憲は何を狙っているか、追加補充

 

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◆今日(8月19日)、伊東市観光会館前で「19日行動」を行いました。40名近くの人が、スタンディングに加わりました。その時のスピーチ原稿を紹介します。

杉田議員の主張―新自由主義と国家主義の結合―

                                  三好康昭

自民党の衆議院議員・杉田氏は同性カップルを批判しました。このペアは子どもを生まない、つまり生産性がない。そのようなペアのために、国がお金を使って啓発活動をするのはお金の無駄遣いだ、と。子どもを産む・生まないは当事者の問題ですが、彼女にとっては経済的に価値のある行為かどうかという問題なのです。人間の活動を経済的な効用があるかどうかで評価する。たくさん税金を納めている人は価値ある人、生活保護を受ける人は厄介者。仕事のできる人、勉強のできる人だけが存在価値のある人。このように人間の価値をその人の経済的な効用、役に立つかどうかを基準にしてランク付けるのが新自由主義の考えです。アメリカを筆頭に、日本でも小泉政権以降以流となった考えです。その結果、とんでもない格差社会が出現しました。

アメリカと違って、日本の新自由主義は国家主義と結びついています。杉田議員のもう一つの物差しは国のために役立つのかどうか、ということです。彼女は、国会で、文部科学省の科学研究費をうけながら、従軍慰安婦を研究するような学者をほっておいていいのか、と攻撃しました。反日か愛国かで、助成金の支出を決めるべきだというのです。彼女にとって、国のためにならない学問は価値がないのです。同性カップルにお金を使うな、という主張もそのようなカップルは子どもを作ることを通して国に貢献できないからなのです。個人の自由な生き方よりも、国に役立つかどうかの方が優先するのです。憲法13条は、「すべて国民は個人として尊重される」、つまり個人が価値の基準だと定めています。杉田議員の考えはこれと真逆です。新自由主義と国家主義の日本的な結合がココにあります。

ところで杉田議員の名前は水脈と書いて「みお」と読みます。水脈というからには、どこかに水の源があるのでしょう。水源をたどっていくと、何と安倍首相その人に行き着きます。彼女が自民党の公認を得て、比例区の名簿に登載されたのは、あの右翼ジャーナリスト櫻井よしこ氏によると、安倍首相の推薦によるものでした。杉田みお、櫻井よしこ、安倍晋三をつなぐ水脈の別名は、「日本会議」または「美しい日本の憲法を作る会」です。ここを流れる水は美しいどころか、国家に役立つかどうかで人間の価値を決めるおぞましい濁った水なのです。彼女の生産性発言に対する批判は同時に日本会議をバックとした安倍首相の改憲のたくらみへの批判でなければなりません。

 

(以上)

 

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◆翁長知事の逝去を悼む―知人へのメールから―

三好康昭

先ほど、K.Mさんから翁長知事の死去のニュースを知らされました。その少し前にNHKのニュースで意識混濁状態に陥ったと聞いていたので、「やはり」と思いました。

2014年に知事に当選して以来、翁長さんの辺野古反対の姿勢は揺るぎませんでした。翁長さんのような包容力があって、しかも揺るぎない信念を持った人ではなければ、様々な政治的立場の人たちを『オール沖縄』にまとめていくことはできなかったでしょう。沖縄だけでなく、安倍の強権政治に異を唱えるすべての人にって、翁長さんは希望の中心でした。私は政治家嫌いというか、政治家という名のつく人にはすべからく不信感を持っていますが、翁長さんは別です。政治家にしておくには惜しい人物でした。翁長さんの死はどんな影響をもたらすでしょうか。狡猾な政権は817日の土砂搬入を延期するでしょう。知事選は早まるわけですが、基地建設反対派からしたら、翁長さんの弔い合戦です。「翁長さんの命を縮めた安倍とその傀儡を絶対許さない、」というスローガンを掲げて闘って欲しいです。

翁長さんの冥福をお祈りします。

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◆伊東市では、なぜ37名の待機児が減らないか

加藤好一

伊東市ではなぜ待機児が37名もいるか。市立保育園の定員が一杯なのでしょうか。いいえ。現在、5つある伊東市の公立保育園は全て定員割れしています。

ならば、なぜ定員に達するまで入園させないのか。それは、保育士の数が少ないからです。もし、あと6人保育士を増やせば待機児20人が一気に解消できると試算されています。

伊東市 正規職員 臨時職員 臨時の割合
幼稚園教諭 42人 7人 14%
保育士 56人 21人 27%

 

なぜ保育士のなり手が少ないのか。ここで伊東の市立幼稚園・保育園の職員に関する市の資料を見てみましょう。

まず、保育士の27%を臨時職員が占めていることに気づきます。4人に1人以上の割合です。

では、もっと正規職員を増やせばいいではないか。その通りですが、今年度も「熱海市程度―5名・伊東―若干名」と募集人員が少ないのです。なかには伊東の人が熱海に採用され、通勤している例もあるそうです。(人口は伊東市約6万9500人・熱海市約3万7000人)

さらに、近年は臨時職員の応募自体も増えていません。そこでその時給を調べると1080円でした。8時間働いて1日8640円で身分は不安定。これで若い人が進んで応募するでしょうか。低コストの臨時職員の採用で保育士不足を補うやり方は限界にきていると思います。

今年度、伊東市は5歳児の保育料を無料としました。かかる費用は4450万円です。しかし、低所得の世帯は既に減免されているため、高い保育料を出していた高所得の世帯ほど減免額が大きくなって、いっそう恩恵を受けることになります。

この4450万円で正規保育士を増やせば、伊東の待機児は大きく減るでしょう。また、前市長が収賄したと疑われる1300万円を投入するだけでも数人の保育士が増やせます。

このように、待機児解消問題に関しても、問われているのは予算の少なさではなく、予算を活かす政治の在り方だということが分かります。

(以上)

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◆7月19日、伊東市観光会館前で行われた「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。炎天下にも関わらず20数名の人が集まりました。

             辺野古座り込みに参加して

三好康昭

今、辺野古の海が埋め立てられようとしています。まもなく辺野古湾が仕切られ、内側に土砂が投入されます。海が陸に変わり、サンゴが死滅し米軍基地が生まれます。現地では、今日も、この炎天下にたくさんの人たちゲート前に座り込んでいます。ダンプの通行を妨害すればすぐに機動隊員が出てきてごぼう抜きにして排除します。

2週間前、私は辺野古に行きゲート前の座り込みに参加しました。朝8時から60人~80人が歩道に座り込みました。稲嶺前名護市長が激励の声を上げると、それを打ち消すかのように、右翼の宣伝カーが大音量で喚きながら目の前を行き来します。妨害だけが彼らのできることです。韓国から20人の婦人たちが連帯と激励に駆けつけました。1980年5月、光州市で軍事政権に抗議し投獄されたり殺されたりした人の親族です。女性たちは闘いを踊りで表現し、全員で歌を歌って私たちを励ましました。

先日、防衛局はこの歩道に柵をつくり道幅を狭めました。座り込めるスペースを狭め、反対者が入り込めないようにするためです。嫌がらせの右翼と、力で抑え込もうとする権力。彼らは一体です。

午後から県民集会が開かれました。沖縄各地からたくさんの人が集まり、屋根のあるテント小屋も、その先の歩道も、背後の斜面も人、人で溢れました。反対側のゲート沿いの歩道にもパラソルの花が咲きました。その数は2000人。病身の翁長知事からメッセージが寄せられました。「機会を見て、必ず埋め立て承認を撤回する」と。赤嶺衆議院議員はマイクを握って「今辺野古で行われていることは政治の暴力だ」と糾弾しました。と、そのとき、ゲートの内側から警察官が金網越しに、「パラソルを撤去しろ」とマイクで叫びました。反対住民の他には誰も通行する人がいないのに。明らかな集会の妨害。権力を笠に着た嫌がらせです。姑息なやり方は安倍政権そのものです。

集会は最後に、2000人の人が手を繋いで、「今こそ立ち上がろう」を大合唱して終わりました。

防衛局は、8月17日に仕切られた辺野古の海に土砂を投入すると言っています。知事はそれまでに「埋め立て承認」を撤回するでしょう。8月17日を前に、辺野古は緊迫しています。沖縄の人たちは決して諦めていない。沖縄の人たちが諦めない限り、私たちの連帯の行動も決して終わることはありません。

(以上)

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◆辺野古ツアーに参加して

                             三好康昭

76日から8日まで、辺野古ツアーに参加しました。台風の合間の好天に恵まれ、念願のゲート前抗議行動に加わることができました。

7日朝8時にキャンプシュワブ・ゲート前へ。ゲート脇の道端に続々と人が集まりその数は60人~80人。もし沖縄防衛局が基地内に埋め立て資材を運び込もうとしたときは、身体を張ってダンプの通行を妨害するよう教唆されていました。言われた通りノコノコ道路上に座り込んだら、機動隊員にゴボウ抜きにされ痛い目に合うかもしれない。「その時は物陰に隠れていよう」などとよからぬことを考えていましたが、幸い資材の運び入れはなく機動隊も現れませんでした。代わりに、韓国光州市から「5月民主女性会」の一行20人が座り込み行動への激励に来られました。19805月、光州事件で弾圧された人たちの親族です。代表者の挨拶に続いて、道路上で演舞を披露。最後に女性たちが全員で歌声を。デジカメを構えながら私は目頭が熱くなりました。

12時から始まった県民集会は盛況でした。5人の国会議員が来られ、その中のお一人伊波洋一さんに昨年5月の伊東講演のお礼を言いました。スピーチに立った人たちは、817に始まる辺野古湾の埋め立て・土砂投入に強い抗議と怒りを口にしていました。そして、翁長知事による埋め立て承認の撤回表明を待望していました。病身の知事は集会に寄せたメッセージの中で、機会を見て必ず撤回表明をする、と決意を述べていました。集会の最後に、参加者全員―その数は2000!―が手を繋いで、「今こそ立ち上がろう」を歌いあげました。感動的なシーンでした。参加者数からみると国会前大集会よりもずっと小規模ですが、参加者の一体感と熱気はそれを上回っているように感じました。良いときに沖縄に行き、素晴らしい集会に出会うことができて幸運でした。

ツアーを呼び掛けたのは「沖縄を語る会」のTさん。Tさんは沖縄を何十回も訪れ、基地や戦跡はもちろん沖縄のことを隅々までご存知の方です。那覇空港の出迎えから首里の見送りまで、懇切丁寧な説明と配慮をいただきました。同行した人たちは皆、親切でユーモアがあり気持ちの良い時間をともに過ごしました。二泊目の宿(民宿「美らたま」)の若い女性主人の暖かいもてなしは忘れません。辺野古ツアーで出会った人たちに感謝です。機動隊の皆さんに出会わなかったのも感謝です。

                             (79日 記)

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◆6月19日、伊東市観光会館前で行われた「19日行動」でのスピーチ原稿を紹介します。当日の参加者は20数名でした。

             政治家の犯罪

                                   三好康昭

 麻生財務大臣は部下の事務次官が行ったセクハラ行為をかばって、「『セクハラ罪』という罪はない」と言いました。犯罪でなければ、どんな行為でも許されると言わんばかりです。セクハラが女性の人権を蹂躙する極めて悪質な行為であることは、世界の常識です。事務次官は社会的非難を受け辞任しました。麻生大臣はなぜ辞めないのか。彼は人権意識だけでなく責任意識も全くないのです。

 もう一人、ウソをつきとおしながら犯罪ではない、と居直っている男がいます。安倍晋三氏です。財務省の公文書改ざん、佐川の国会での虚偽答弁の発端は、昨年217日の首相の国会答弁でした。彼はこう言いました。「私や妻が関係していれば、総理も国会議員もやめる」、と。妻の昭恵氏が国有地の借地契約と売買にかかわっていたことは明らかです。大見えを切った以上、安倍氏は首相も議員も辞めるべきではないですか。

 財務省は昭恵氏の関与の事実を書類から抹殺しました。昭恵氏の影響があったことを隠すためです。今国会で野党議員から追及され、528日に安倍首相はこう答えました。「お金のやりとりがあって行政に働きかけたわけではない」と。

 つまり、一年前の答弁はワイロは受け取っていない、という意味だったというのです。こんな卑怯で国民を欺く答弁が許されるでしょうか。ワイロを受け取っていれば、辞任どころか、佃元市長のように即逮捕です。彼の最初の答弁が引き金になって、財務省を挙げての文書改ざんが始まり、近畿財務局の職員の自殺まで起きたんです。それを今になって、あれはこういう意味で云ったんだ、などと都合よく意味を限定し、さらに閣議決定でそれを追認する。言語道断です。

国の中枢に嘘がはびこり、然るべき立場にある人間が責任を取らない。まさに、社会のモラルを掘り崩しています。法律上の犯罪よりもはるかに重い政治家の社会的犯罪だというべきです。

モラルも良心もない彼らに対して、私たちは何をするべきでしょうか。政治を見限ることは彼らの思うツボです。私たちはどこまでも怒りを持ち続け、同じ思いを持つ人が一人でも増えるように働きかけること、これが私たち誰にもできる闘いだと思います。

安部が辞めるか、私たちが止めるか、その覚悟を持って頑張りましょう。

(以上)

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◆自民党憲法改正本部が3月末に改憲4項目を取りまとめました。三島市近在のママさんグループ「tea+α」の皆さんが、現行憲法と対比して一覧にまとめました。二回にわたって紹介します。(その2)



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◆自民党憲法改正本部が3月末に改憲4項目を取りまとめました。三島市近在のママさんグループ「tea+α」の皆さんが、現行憲法と対比して一覧にまとめました。二回にわたって紹介します。(その1)



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◆4月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

2018.4.19

                                                    政治家は責任を取れ

                                三好康昭

財務省の事務次官がセクハラ問題で辞任しました。女性記者に対する性的嫌がらせが報じられ、録音データまで公開されたのですから、逃げようがありません。辞任は当然です。

 財務省トップの麻生太郎氏も責任を取って大臣を辞めるべきではないでしょうか。彼には任命責任があります。それだけではありません。この間の大臣の対応は無責任そのものでした。週刊誌で福田次官のセクハラ疑惑が報じられたとき、大臣は「気をつけてよ」と口頭で注意しただけです。疑惑を否定して居直る福田氏の音声データを聞いたとき、彼は「俺は福田の声だと思う」と言ったのです。ならば、調査の上然るべき処分をするのが当然でしょう。ところが、大臣は福田にも人権がある、と言ってかばった。そして、被害を受けた女性は名乗り出て調査に協力してくれ、と要請した。被害者の心情にはまったく思い及ばない。権力の鎧を着た人物の人権は配慮するが、弱者の人権には鈍感なのです。人権は弱者を保護するためのものではないですか。麻生太郎氏の人権感覚は真逆です。こういう大臣のもとで、公文書の改ざんが起きるのも不思議ではありません。そのつけを払ったのは誰ですか。近畿財務局の良心ある職員が自殺という形で払ったんです。麻生大臣の責めは重大です。再発防止策を講じる、とかいって居座るのは許せません。一番の再発防止策は、責任ある人物が責任をとることです。

こういう人物を大臣にしている安倍総理の任命責任も問われるべきです。安倍首相は一連の問題を受けて、「信頼回復に努める。信なくば立たず、だ」と見得を切りました。ならば、とっくに国民の信頼を失っている安倍首相は直ちに退陣すべきではないでしょうか。

以上です。


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◆3月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

2018年3月19日

小さな嘘と大きな嘘

三好康昭

佐川元国税庁長官は、国会答弁で小さな嘘を重ねました。記録は全部破棄した。政治家の関与は全くない。森友との取引は適正だった。ウソがばれで彼は長官の職を追われました。証人喚問の席で氏は真実を語るでしょうか。おそらく、核心部分になると刑事訴追、つまり公文書偽造罪で訴追される恐れを理由に証言を拒むでしょう。ならば、証言拒否は事実上の自白とみなすことができます。

彼はなぜウソを重ねたのか。大ウソつきのウソを隠すためです。その男は自分や妻がこの件に関与していたら、総理の地位や議員も辞める、と大見えを切りました。安倍首相です。妻の昭恵氏が森友への土地売却に関わっていたことは明らかですから、発言に責任を持つなら、とっくに議員を辞めてしかるべきです。彼は何遍も大きな嘘をつきました。福島の汚染水は完全にコントロールされている。世界経済はリーマンショック前にある。昨年7月共謀罪法を強行採決して都議選に敗れたときには、批判を真摯に受け止め丁寧に説明する、と言いました。その舌先も乾かぬうちに、憲法を無視して国会を開かず、開いたと思ったら冒頭解散。今日もまた、国会で反省の弁を口にしているでしょう。国民はまたこの男の大ウソに騙されるのでしょうか。

そもそも森友問題とは何だったのでしょうか。文書の改ざんではありません。国有地の不当売却でもありません。これらは結果です。始まりは籠池氏夫妻のトクイな愛国心教育です。教育勅語を幼稚園児に暗唱させ、安保法は良い法律だと言わせる洗脳教育。これに安倍晋三氏は共感し、昭恵夫人は感激の涙を流しました。日本会議国会議員懇談会に名をつらねる連中は、こぞって森友応援団に廻りました。平沼元大臣、鴻池議員、中山議員らが近畿財務局に圧力をかけました。麻生副総理や安倍晋三の名前も使われました。こうした連中の直接間接の圧力が不当売却の原因であり、このことを隠ぺいするための公文書改ざんだったわけです。文科省はその後教育勅語を教材に使うのも構わない、というとんでもない方針を出しました。

今問題なのは、日本の中枢を担う国家行政が政治的中立どころか、日本会議に連なる連中のために捻じ曲げられていることです。前川氏の授業に文科省が不当に干渉したのも政治家の介入があったからです。憲法改正を一番に推進しているのはこの連中です。自衛隊を憲法に書いても何も変わらないどころではありません。日本会議が目指しているのは戦後民主主義の否定、皇民教育の復活です。憲法改正の先にあるのは天皇ナショナリズムです。私たちは、小さな嘘を非難するだけでなく、大きな嘘を、巨悪の根を徹底して叩かなければいけません。

以上です。

 

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◆安倍首相の国会答弁のウソとごまかしを批判する一文を載せます。

      安倍首相の国会答弁、批判

                                                               2月10日    三好康昭

(1)安倍首相の国会答弁

①1月30日の衆議院予算委員会(1/31付朝日新聞)

自衛隊の存在を憲法に明記しても、「フルスペックの集団的自衛権の行使は認められないのではないか」。自衛隊の任務や権限は今と変わらない。

➁2月5日の衆議院予算委員会(2/6付朝日新聞)

仮に自衛隊明記案が国民投票で否決されても、自衛隊そのものの合憲性は変わらない。

 

(2)批判

2/7付朝日新聞社説が言うごとく、自衛隊明記案が承認されても否決されても自衛隊の合憲性、その任務や権限は今と何も変わらないというならば、800億円もの税金を使って国民投票を行う必要はない。この答弁はまたしても国民を欺くウソとごまかしだ。

➁安倍首相のウソ-その1∸

合憲化によって自衛隊の任務や権限は変わる、変えるために改憲案を発議し国民投票で承認を得ようとしている。にもかかわらず、何も変わらないとウソを言い、ごまかす。なぜ、ウソをつくのか。加憲によって自衛隊の任務や権限が変わるのではないか、という不安が国民の間にあるので、この不安を払拭しようとしているからだ。

➂安倍首相のごまかし-その1∸

加憲条文も示されていない段階で、なぜ「フルスペックの集団的自衛権は認められない」と言えるのか。「認められない」条文の書き方-たとえば阪田私案(『世界』1月号)のような-を憲法審査会に自民党案として提示するつもりがあるのか。そんなつもりは毛頭ないくせに、何の根拠も示さず、「認められないのではないか」といった主観的な推測を国会で述べ、国民を欺むこうとするのは許されない。

➃安倍首相ウソとごまかし-その2∸

憲法の条文は阪田私案のような詳細な規定はできない。抽象的に、「前項の規定はわが国の平和と安全を守るため必要最小限の実力部隊を設けることを妨げるものではない」といったふうに定めるしかない。どこまでが必要最小限の実力部隊であり、どこまでが必要最小限の自衛権の行使なのか、といったことはその時々の政府の判断に委ねられることになる。安倍加憲の狙いはこの抽象性を利用して、解釈によってわが国の平和と安全を守るためには「存立危機事態」に至らない場合でも、海外での武力行使ができる、つまりフルスペックの集団的自衛権の行使が可能である、とすることにある。要するに、日米軍事同盟に対する憲法的制約から脱却することが九条加憲の本当の狙いである。このことを見抜き、広く宣伝していくことが改憲を阻止するために必要なことだ。

(以上)

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◆1月の「19日行動」のスピーチ原稿を載せます。

2018119日           

             安倍晋三と憲法

                          三好康昭

 安倍首相は14日に伊勢神宮を参拝した後、記者会見でこう語りました。「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示する」と。総理が伊勢神宮に参拝することは、靖国参拝と同様政教分離の原則から大いに問題があります。また、憲法尊重擁護義務がある総理大臣が、公然と憲法改正を唱えることも憲法に反します。憲法改正を唱える一方で、これほど憲法を軽く見る総理大臣はかっていませんでした。

一体憲法のあるべき姿とはどんな姿でしょうか。憲法92項は戦力を持つことを禁止しています。安倍首相は、「ただし自衛隊はOKだよ」と憲法に書き込みたいのです。彼は4日の記者会見の冒頭、「北朝鮮の脅威に備える自衛隊の諸君の強い使命感、責任感に敬意を表したい」と述べました。一体、北朝鮮の脅威を煽っているのは誰なのか。トランプの尻馬に乗ってJアラートを乱打し、まんまとトランプから巨額の兵器を売りつけられたのは誰か。北朝鮮の政治利用の仕上げが、自衛隊に敬意を表して憲法で認めましょう、というわけです。その先には、92項の削除が待っています。あるべき姿どころか、あってはならない姿です。

安倍首相は自衛隊を憲法に書き込んでも、憲法解釈は何にも変わらない、と予防線を張っています。安倍氏のこれまでのウソ八百を聞いてきた人には、これがまったくのウソ・ごまかしであることはすぐわかるでしょう。何にも変わらないのなら、国民投票にも800億円もかける必要があるのか。伊東市の年間予算の3倍もの金を意味もなく使うのか。という話です。憲法は変わるのです。合憲化される自衛隊は、2年半前の戦争法によって集団的自衛権が付与された自衛隊です。私たちはこの法律は憲法に違反すると主張して、毎月19日にここで抗議行動をしてきました。安倍首相の狙いは、この批判を封じることです。海外でアメリカと一緒になって戦争をしても、「これからは憲法に違反することはないよ、大手を振って戦争できるよ」というためです。憲法に違反する法律を作っておいて、今度は法律に合うように憲法を変える。立憲主義とは正反対のアベコベなやりかたです。

最後にもう一度訴えます。これほどあからさまに憲法を無視し、敵視し、侮辱してきた安倍晋三に、あるべき憲法を語る資格はない。以上です。

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◆望月 暁さんから「メガソーラー建設」反対運動について私信をいただきました。ご本人の了解のもとに、以下に紹介します(三好康昭)

「メガソーラー建設」反対運動についての意見

                                 望月 暁

何時も貴重な情報を頂きありがとうございます。

「メガソーラー建設」の反対運動について、少々意見がありますので一言申し上げます。

私は今回のメガソーラー計画については絶対反対です。会合に参加したとき、条件闘争になるのではないかと危惧しました。排水がどうとか、貯水槽がどうとか、希少動物や植物がどうとかを長々と論じていることに違和感を感じています。条件闘争にはまると、力の強い人、法律を楯にする人たちに最終的に論破されてしまいます。千年、二千年、いや何万年も続いた自然を破壊してはならない。私はこの基本理念で闘うべきだと考えています。ゴルフ場、スキー場、リゾート開発…これらすべての案件は全部条件闘争で闘って敗れた結果生まれた「金儲けシステム」の成れの果てで、水害・洪水・温暖化・海の汚染など、さまざまな負の遺産を背負い込んでしまい、そのために年間数兆円の高負担に喘いでいる実情を知るべきです。

私は人間の幸せの原点は自然との共生にあると考えていますので、自然を破壊するすべての経済活動に反対します。残念ながら自然破壊は金になります。金儲けになります。現代の一番のウィークポイントが金で、金のためなら人の命なんて虫けら同然です。偉そうに言う私も金には負けます。やはり金は欲しいのです。

そうした矛盾を抱えていることを解かったうえで今回のソーラー建設反対運動にかかわっていく所存ですのでご理解ください。

来年もより良い年でありますよう祈念致します。

                           20171229

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◆かねて予想されていたことですが、八幡野メガソーラー建設に対する市長の方針が「白紙撤回」から「容認」へと転換しました。小野市長の方針転換を批判した知人へのメールを引用します。

市長の本音

三好康昭

今朝(12月23日)の伊豆新聞に小野市長の本音が、議会答弁よりもさらにはっきりと書かれていました。22日の記者会見で彼はこう述べたそうです。

 「白紙撤回を求める気持ちに変わりがないが、計画に法的合理性があれば許可しないのは違法になる。」さらに直截に、「許可して終わりということはない」。

後者の発言の意味は開発を許可し、その後は条例等を通じてしっかり監視していく、というこうでしょう。法的合理性に欠けなければ許可する、と明言したわけです。条例は許可の言い訳に使われます。私は三日前のメールにこう書きました。

 (条例の)成立によって、「今後は太陽光発電を厳しく規制していく」と宣伝し(許可したことの)批判をかわそうとするのではないか。

 この懸念が現実化しそうです。

 市長の許可方針が明確になったことを受け、反対派はどう対応すべきでしょうか。今日の集会で「リコール運動」などの声がありがそうです。戦略がないとすぐこういう反射的反応が起こります。私は条例制定の署名運動ではなく、市長に対して白紙撤回貫徹を求める署名運動をするべきだろう、と思っていました。今となっては、これは時期を逸してしまった気がします。第二に、市長に対して「公開質問」を発する手があるでしょう。市長の言う「法的合理性」とは何か。市民の99%が従っている「土地利用指導要綱」を平然と無視する事業者の手続きをそのまま認めることに「法的合理性」があるのか。八幡野川の改修が前提と言いながら、砂防ダム建設等の対応で川の氾濫が20年間にわたって起こらない、という「法的お墨付き」が与えられるのか。調整池から地中を浸透する雨水によって土砂災害の危険性が除去される法的保証があるのか。20年の間に起こるかもしれない巨大地震によって調整地が壊れ大量の水が下手に流出する惨事が起こらないと保証できるのか。

 市長は「法的な手続きを踏んでいることと」と「安全であること」とを同視している。机上の計算をクリアしても実際の災害の危険がなくなるわけではない。その危険を見積もって、住民の安全を確保することが市長の政治的責任であり、その責任に基づく判断が「違法」となることはあり得ない。市長の誤りは、「法的合理性」(この言葉を彼はどう理解しているのか)と「違法」の間に、政治判断・裁量がある、ということをわかっていないことです。

 反対派の人たちは一方で市長と市当局へこうした追及をしつつ、他方で反対する理由の正当性を広く市民に訴える活動を展開するべきだろうと思います。言葉だけの「市長のリコール」は空虚です。

(以上) 

※追記

市長がこのような踏み込んだ発言をしたのは、事業者の申請を許可する期日が近づいたことを意味しているだろう。

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◆11月11日に、「憲法、ミニ学習会」を伊東市川奈で開きました。学習会の説明資料「9条改憲は何をねらっているか」(スライド)を紹介します。

九条加憲は何を狙っているか

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◆9条加憲は何を狙っているか

 ~さくらとおいちゃんの会話~            三好康昭

             

さくら…10月22日投票の衆議院議員選挙で、自民党は284議席の絶対多数を獲得したね。

おいちゃん…安倍首相の不人気や、直前の内閣支持率の低さから考えると、考えられない数だね。

さくら…やはり小選挙区制が相対多数に絶対的に有利に作用したということかしら。

おいちゃん…そうだね、対立陣営がバラバラでは勝てるわけない。その意味で、民進党の分裂は自民党にとって天の助けだった。神様、仏様、前原様。

さくら…自民・公明の与党で総議席の2/3を上回り、憲法改正の発議が出来ちゃうわね。

おいちゃん…たとえば9条改正に公明党は積極的ではないから、条文改正案まで仕上げるにはもう少し時間がかかると思うよ。

さくら…でも、野党であるはずの希望の党や日本維新の会が9条改正に前向きでしょう?

おいちゃん…そうだね。野党第一党の立憲民主党が反対しても、最後は数の力に物を言わせて改正発議に持って行きそうだ。

さくら…何で、そんなに9条を変えたいの。自衛隊を憲法に書くと何が変わるのかしら。

おいちゃん…安倍首相は、9条の1項と2項を残すから、3項に自衛隊を明記しても、今と何も変わらないといっているね。

さくら…でもこの人はウソばかりつくから信用できない。

おいちゃん…森友学園の籠池氏との関係が問われたとき、「私や妻が国有地売却にかかわっていたら総理はもちろん議員を止める」と見得を切ったね。今、安倍氏は籠池氏を詐欺師と罵倒しているけれど、安倍晋三こそが詐欺師と言いたいね。

さくら…で、結局自衛隊を憲法に書くことで何が変わるの?

おいちゃん…それは、どういう自衛隊が合憲化されるのか、という問題につながっている。

さくら…どういうこと。自衛隊にもいろいろある、っていうこと?

おいちゃん…自衛隊の活動のうち、国民に圧倒的に支持されているのは災害救助で活躍する自衛隊だ。が、自衛隊は武装組織だからいざというときには戦う部隊となる。

さくら…戦う部隊といっても、軍ではないわけでしょう。9条の2項は「戦力を保持しない」と定めているから。

おいちゃん…「戦力ではなく、実力組織」というのが政府解釈。何かよくわからないよね。それを憲法の9条の3項で「自衛ための戦力を持つことが出来る」と書けば、自衛隊は「自衛戦力」となる。これが、第一の変化。

さくら…自衛戦力となった自衛隊は「集団的自衛権」を行使できるの?

おいちゃん…2015年に成立した戦争法で、自衛隊は海外でアメリカと共同して戦うことが出来ることになった。この法律は憲法に違反していると専門家は指摘しているけど、自衛隊を合憲化すれば憲法違反の主張を封じ込めることが出来る。これが変える第二の理由。

さくら…憲法に反する疑いのある法律を作っておいて、今度は法律に合わせて憲法を変えるというのは卑怯じゃないの。

おいちゃん…立憲主義とは真逆だね。それだけではない。自衛戦力となった自衛隊が本格的な正規軍となっていけば、軍法会議など軍事裁判所も作られることになる。

さくら…なんか、軍事色が強まりそうね。徴兵制なんてこともありうるのかしら?

おいちゃん…これまでは「徴兵制は公共の福祉に反し違憲である」と解釈されてきたけど、軍が憲法で認知されることになれば、「公共の福祉に反する」とはいえなくなるだろうね。

さくら…平和で民主的な社会が、軍事的で強圧的な社会に変わっていくようで怖いわ。

おいちゃん…そう、現にある自衛隊を憲法に書き込むだけ、という話ではない。これまで日本の社会を作ってきた平和や人権といった価値の重みが変わるかもしれない。

さくら…大変なことね。わたしたち一人一人がこの国の主権者として9条改正の是非を判断しなくてはいけないわね。今日はありがとうさんでした。

 

(以上)

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◆衆議院解散・総選挙を迎えるにあたって、九条の会は「戦後日本の歴史と憲法の岐路に立って」と題する声明を発表しました。以下に紹介します。

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◆9月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

何のための解散か

三好康昭

2年前の今日、9月19日に戦争法が強行採決されました。日本が直接攻撃された時でなければ武力発動はできない、という憲法解釈を無理やり変えました。アメリカの戦争に日本が加わることが出来るようにしたのです。実際に海上自衛隊は5月から日本海で北を監視するアメリカのイージス艦に給油活動をし,移動するアメリカ艦船の警護活動も始めました。戦争法は現実化し、日米の軍事的一体化に歯止めがかからなくなっています。最後の仕上げが憲法改正です。

安倍首相は自衛隊を憲法に書き込もうとしています。集団的自衛権が憲法に反するという人たちがいるから、はっきり憲法に書いて疑いをなくすんだ、という理由です。逆立ちした論理です。憲法に反するような法律はそもそも作ってはならない。数の力で無理やり法律を作って、今度はその法律に合うように憲法を変える。こんなやり方が通ったら、憲法の縛りなどないに等しい。憲法政治は終わりです。

自衛隊を憲法に明記することの意味は何か。自民党の憲法改正推進本部長の保岡興治氏は、「これまでの憲法解釈は1ミリも変わらない」と言っています。1ミリも変わらないのなら、わざわざ憲法を変える必要はないだろう、という話です。平気でウソを言って国民を欺く。法の格言に、後からできた法は前の法に優越する、というのがあります。戦力を持たないと定めた9条の2項は新たに設けられる自衛隊合憲の条文で効力を失うのです。そうなれば、集団的自衛権はおろか、核兵器も保有でき、徴兵制さえも可能になるのです。

安倍首相は衆議院を解散する腹です。北朝鮮を口実に憲法改正の推進力をとり戻すためです。北朝鮮の危機を煽り権力集中を訴えるでしょう。しかし、本当に北朝鮮が脅威であるなら、Jアラートを鳴らすよりも、日本海沿いの全原発を即時廃炉にする方がよほど賢明です。私たちはごまかされません。本当の争点は憲法9条です。立憲主義を蹂躙し、平和憲法を破壊し、森友・加計疑惑を隠し、国民を欺く安倍政権。こういう連中にはもう引導を渡しましょう。

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◆8月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

私たちは忘れない

三好康昭

安倍首相は内閣を改造して、政権の姿勢が変わったかのような印象操作をしました。「国民の声に謙虚に耳を傾ける」などと、歯の浮く御託を並べています。これらすべてが、新たなゴマカシであることを、もうみんなが知っています。森友・加計疑惑や防衛省の日報隠しなど一連の不正から、私たちの目をそらし、しばらく大人しくしていればそのうち忘れるだろう、とタカをくくっているのです。

しかし、私たちは忘れません。

安倍首相夫人昭恵氏付きの政府職員が何をしたか。森友学園の籠池氏の依頼で、財務省に国有地を売却する案件を問い合せ、その結果を籠池氏にFAXで知らせました。彼女が昭恵氏の指示のもとに動いたことは明らかです。経産省のノンキャリアであるこの人は、8月6日付で、イタリアの日本大使館に異動になりました。異例の人事です。これを栄転というべきか口封じというべきか、皆さんはどちらだと思いますか。

私たちは忘れません。

国会質問で、財務省の理財局長は森友に関する交渉記録は全部破棄して何も残っていない、とシラを切りとおしました。この佐川理財局長は7月5日、国税庁長官に栄転しました。しかし、森友問題の追及を恐れ、就任の記者会見を開こうとしません。「国民に丁寧に説明する」という安倍の言葉がまったくのウソであることはこの一事でも明らかです。

普天間基地配属のオスプレイがオーストラリアで墜落事故を起こし、3人が死亡しました。日本政府は事故原因が明らかになるまで、オスプレイの飛行自粛を求めました。ところが、米軍の安全宣言を受け、新防衛大臣は事故から6日後にオスプレイの国内運行を認めました。私たちは翁長知事が8月12日の沖縄県民大会で述べた次の言葉を胸に刻みます。「アメリカに言われてすぐ引き下がるようでは、日本の独立は神話である」。

安倍政権は、日米軍事同盟を戦前の天皇制のような新たな国体に仕立て上げようとしています。内・国民に向かっては徹底して真相を隠し、外・アメリカに対してはどこまでもへつらう安倍政権。こんな政権にはもうお引きとり願いましょう。

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◆新局面を迎えたメガソーラー建設反対運動

三好康昭

(1)事業者の回答

7月22日付け伊豆新聞によると、

①事業者は市長の求めた「白紙撤回」の要請を拒否。⇔これまで莫大な費用を投下している。

②市長は業者の回答を遺憾としつつ、以下のような方針をしめした。

➂「市の主導で市民と事業者が協議する場を設け、市も参加して議論を進めていきたい。」

 

(2)市長の立ち位置の変化

市長が「協議の場を設定する」と表明したことをどう見るか。

市長がこれまで示してきた「白紙撤回」の方針が、ポーズに過ぎなかったことが明らかになった。

①市長はこれまで事業計画に反対する立場で行動してきた。これからは、反対派住民と事業者の利害を調停するポジションに立つことを明らかにした。

②利害の調停とは両者が合意できる「妥協線」を探るということだ。

➂市長の腹にある妥協案は何か。

ⅰ)事業規模の縮小

a)森林伐採面積を縮小し、パネル敷設面積を小さくする。

b)伐採面積は縮小せず、パネル敷設面積を縮小する。空き地は別途活用する。

ⅱ)八幡野川の河川改修を行う。

 

(3)妥協の可能性はあるか

①事業規模の縮小について

a)事業者は森林伐採面積の縮小には難色を示すだろう。伐採面積は変えず、メガソーラーの規模を縮小し空いたところを別途活用する案には前向きな反応するかもしれない。

b)いとう漁協、海の会、八幡野地区住民は、森林伐採面積の大幅な縮小を求めるだろう。ただし、八幡野川の改修が実現できればこの要求を切り下げる可能性がある。

②八幡野川の改修について

イ)河川改修の費用を事業者が負担することになれば、三者-伊東市、事業者、地元住民-の間で妥協が成立する可能性がある

ロ)市の負担で河川改修をすることには、伊東市民全体が反対するだろう。

7月27日付伊豆新聞は以下のように報じている。

①いとう漁協と八幡野地区は八幡野川の改修前にメガソーラー建設を許可しないように市長に申し入れた。

②市長は「改修せずに開発を進めさせることはあり得ない。」と答えた。

この問題の焦点は八幡野川の改修とその費用負担

(事業者はすでに、川にかかるダムの浚渫工事の費用負担を申し出ている)

 

(4)反対運動のこれから

①反対陣営の間で意思疎通を図る。

②できれば以下の団体で連絡会をつくる。

いとう漁協、海の会、八幡野地区、赤沢地区、分譲地自治会、中止を求める会

➂市長の設ける三者協議に応じる前に、連絡会で一致した方針を立てる。

河川改修を条件として建設を容認する動きを阻止する。

 

(5)「中止を求める会」のこれから

①賛同者会議を開いて意見集約を図る。

②条件付き容認を拒み、あくまで白紙撤回を貫くことを会の総意として決定する。

➂以上の決定をしたうえで、協議のテーブルについて会の意見を主張する。

(以上)

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メガソーラー反対運動のこれからについて

  ー市長の腰折れを防ぎ白紙撤回させるためにー

これまで様々な場においてメガソーラー反対運動について話し合いがなされ、いくつもの建設的提案が行われてきた。そこに若干の私見やこれまでの指摘を加え、次のようなかたちにしてみた。

 (1)反対運動をこれまで以上に全市的に広げる。

①「中止を求める会」の署名締め切り日の延長

②市の南部だけでなく中心部や北部でも街宣活動を行い、反対署名を広げる。

③まだ組織的に取り組んでいない諸団体をリストアップして署名を要請する。例えば東豆教組。高教組。伊豆急労組。東海自動車労組。その他観光協会・商工会議所などへ要請する可能性は?

➃業者の事業計画の問題点を学習する場を共同で作る。反対集会を開く。(同時に行ってもよい)

⑤その場で、反対団体をつなぐ連絡会を立ち上げる。(仮称 メガソーラー建設反対期成同盟)

➅今までの学習会の成果を活かし、新たなチラシを作成して配布したり新聞に折り込む。(パンフは?)

 (2)八幡野・赤沢地域での運動をさらにすすめる。

①タウンミーティングの場で反対の意志表示と提案を行い、市長と対話する。

②八幡野川流域の人々の声を集約して区長と住民代表が市長に届け、懇談する。

③地元区長が区長会へ諮り各区での署名活動を要請する。

 3)市議会において何をするか

①共産党が各会派によびかけ、現地見学会を実施する。(全会派の賛同がなければ一致する会派で)

②市民主催の反対集会への出席を反対する会が要請する。(県議・自由党にも参加を要請する)

 4)県知事・県当局にむけて

①川勝知事が言及した再測量について、さらに詳細を詰める。(時期・費用は誰が支出など)

②森林法に規定された県の権限をつかみ、どんな場合に県が森林の伐採を許可できないか明らかにする。

③ジオパーク構想や観光振興の問題も絡めて①②などを県議に質問してもらい、知事の見解を得る。

 5)市長・市当局に対して

①八幡野川改修をめぐってどんな問題点があるかを洗い出して話し合い、厳正に基準を適用させる。(想定流量が川の流水能力に照らして適正かを確認。護岸工事を行う上での土地買収などの問題点・地元とも合意の必要性なども確認)

②宅地造成法に則した申請を行うことなどを業者に指導させる。(切り土・盛り土の基準をクリアしているか専門家による審査。正確な等高線の設計図の提出要請。市土地利用指導要綱に基づく土地利用申請を出すよう指導)

2017729日 加藤好一〉

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◆7月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

7月の「19日行動」     

           安倍晋三とわれわれ

                                                                            三好康昭

安倍首相はこれまで何度も今の憲法を罵倒し、侮辱してきました。

野党を嘲笑い、批判には印象操作だと居直り、好き勝手に権力を使ってきました。

ここにきて、ウソとごまかしの正体が暴かれると、反省するポーズを示して、またしても国民をだまそうとしています。こういう鵺のような人物が首相の座にあることは、私たち国民にとっての侮辱です。

なぜ、こういう人物が首相であり続けたのか。そこが問題です。安倍が平気でウソをつく人物であることを、われわれはとっくに知っていました。オリンピックを東京に招致するために、国際舞台で福島の汚染水が完全にコントロールされている、と見得を切りました。誰もが、それが嘘であることを知っていました。でも、オリンピックを開けるならそれもいい、オリンピックで景気が良くなるなら嘘も方便だ、といって許しました。昨年7月の参議院選挙のときには、世界経済はリーマンショック前と同じ状況にある、と大ウソをついて公約の消費税増税を見送りました。公約違反を追求されると、「これは新しい判断だ」と居直りました。この公然たるウソと約束違反に対して、国民は怒りませんでした。目先の利益のために、安倍政権の道義と責任を追及しませんでした。武器輸出三原則を撤廃しても、もうけになるならいい。核拡散防止条約に加盟していないインドに原発を売り込んでも儲けになるならいい。こういった国民の経済的打算が、安倍のウソと道義を忘れた政治を許し、権力の私物化を許した原因ではないでしょうか。教育勅語を園児に朗誦させる学校に格安で国有地を売却したのも、友人の経営する加計学園に行政の公平さを捻じ曲げて便宜を与えたのも、国民の道義心を見くびっていたからです。こんなことに文句をつけないだろうと、タカをくくっていたのです。

ここ伊東でも安倍と同じようなことがやられようとしています。市民の共有財産である森林を、もうけのために平気で伐採し太陽光発電所を作ろうとする事業者が現われました。今、全国に小安倍が生まれています。儲けのためには平気で公共物をくいものにする小安倍たちです。

安倍晋三のような男を徹底して糾弾しようとするなら、われわれ自身が、目先の利害打算ではなく、何よりも道義と正義に裏付けられた政治を要求することが必要です。安倍批判は同時にわれわれ自身への批判でもなければならない、と思います。

 以上です。

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◆北野幸雄さんの「辺野古レポート-2」その4を載せます。最終回です。

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◆北野幸雄さんの「辺野古レポート-2」を紹介します。その3

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◆北野幸雄さんの「辺野古レポート-2」の第二回目を紹介します。その2

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◆北野幸雄さんから最新の「辺野古レポート-2」が送られてきました。4回にわたって紹介します。その1

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◆6月の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。この後、実際にスピーチするかどうかはわかりませんが、参考までに。

仮面の下の顔

三好康昭

(1)安倍首相と政権の化けの皮が剥がれました。その下から何が現われたでしょうか。

一つ目。ウソとごまかしの正体。

共謀罪がテロ対策だというウソの宣伝。しかも、これがオリンピックのためだという。オリンピックは国際社会に嘘を言って東京に誘致しました。オリンピックを安倍首相が持ち出すときは必ず真実を隠すときです。

二つ目。都合の悪い情報を調べない、隠す。

安倍昭恵氏の森友学園への100万の寄付をうやむやにしました。加計学園をめぐる「総理の意向」文書を隠し続けました。隠し切れなくなって表に出したのは共謀罪が成立した後です。国政の私物化どころか、国会の私物化です。

三つ目。自分の言葉に責任を取らない。

森友への土地売却に私や妻がかかわっていたら首相も国会議員も止めるといったのは誰ですか。昭恵夫人は秘書を通じて財務省に問い合わせ、土地売却の便宜を図りました。籠池氏はこの時から「神風」が吹いた、と言っています。自分の言ったことに責任を取る政治家なら、安倍首相は首相も議員も辞めるべきではないでしょうか。

四つ目。ばれると居直る、恫喝する。

前川前文部事務次官が総理の意向を文書の存在を明らかにしました。菅官房長官は、これを「怪文書」だと決めつけました。それだけではなく、一私人の前川さんを貶める個人情報を暴いて人格攻撃まで行いました。その方棒を担いだのが読売です。卑劣の極みです。現役の文科省の役人が前川さんの証言を裏付ける発言をすると、義家副大臣は秘密漏洩の罪で処罰する、と脅しました。権力の驕りそのものです。

自らにやましい所がある者は、攻撃する者に居丈高になります。安倍首相は、加計学園への利益誘導を質す野党議員に、もし学園と関係がなかったらあなたはどう責任を取るんだ、と毒づきました。自分はウソをついて責任をとろうとしないくせに、質問者にこんなことを言う資格があるのか、と言いたくなります。

(2)こうした安倍首相個人と取り巻きの独りよがりの政治姿勢は国会運営にはっきり現われました。

共謀罪の委員会審議を一方的に打ち切り、中間報告という禁じ手をつかって、委員会採決も省きました。まさに、究極の強行採決です。

ここからわかることは何でしょうか。

安倍とその取り巻きは反対意見を聞く耳を持たない。異論を封じ込める。そのためには、議会制の重要な決定の手続きさえ平気で無視する。このような政治のやり方は民主政治とは言いません。民主制の仮面をかぶった独裁政治というべきです。

民主政治を守り抜く決意を持つ者は、安倍とその取り巻きの腐敗政治に徹底して闘わなくてはなりません。

(以上)

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◆共謀罪強行採決を受けて緊急の提案が寄せられました。紹介します。

「共謀罪」法について緊急提案

藤倉 孝純(たかすみ)

多くの国民が反対する中で、しかも衆参両院での審議不十分にもかかわらず、安倍内閣は強引に「共謀罪」法を成立させてしまいました。既に、TV、新聞等で指摘されているように、この法律は2名以上の者が資金・物品の手配や場所の下見をしただけで、警察は「準備行為」があったとみなすことができる、実に恐ろしい法律です。警察が「こいつらは怪しいぞ」と目をつければそれだけで、本人が知らぬ間に処罰の対象にされてしまいます。警察にとってはまことに「使い勝手のいい」法律だ、と言えましょう。警察が環境保護や反原発等の市民運動に“狙い”をつけるのは必至です。

この「共謀罪」法に対して、市民運動を進める側はどのように対応したらいいでしょうか………。とりあえず言えることは、警察を無暗に怖がらず、といって軽視する事もなく冷静に対応することでしょう。日常生活の中で、「おかしい」、「何か変だ」、「今までにこんなことなかったのに」と気づいたら、気づいた内容、日時、場所等をメモしておきましょう。それによって、自分の正しさを証明することです。いずれそのメモが仲間の人たちの役にもたつでしょう。

しかし、法律は素人にはなかなか理解しづらいし、ましてや必要に迫られて、警察と一対一で対応するのは危険です。こんな場合には、どうしても弁護士の先生方に登場をお願いしなければなりません。固い用語を使えば、刑事訴訟法に基づく被疑者、被告側の防御権の行使です。弁護士に活躍していただくには、前以て弁護士と市民の緊密な連絡が必要となります。

そこで、具体的な提案です。

伊東市(さらに近接市)で市民運動に理解ある弁護士と私たち市民側との会合が必要ではないでしょうか?

市民側からすれば、好意的な先生は誰と誰なのか、その事務所、連絡先等

弁護士側からすれば、どのような市民運動が活躍しているのか、活動内容、代表者、連絡先等

弁護士と市民との「共謀罪」法対策の会合を早急に立ち上げましょう!

 

2017、06、18

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◆4月15日の「共謀罪 市民学習会」を主催者の立場から振り返った一文を掲載します。5月11日の「市民ネットワーク」事務局会議に提出したものです。

       415日『共謀罪 市民学習会』を振り返る

三好康昭

(1)発端

今回のイベントの話は偶然に持ち上がった。3月中旬、市職の部屋を訪ねたとき、居合わせたA.Sさんに「共謀罪反対のデモをやりませんか」と冗談半分に言った。A.Sさんは「それもいいけど、その前に学習会をすることだね」と答えた。Kさんが「萩原弁護士から講演の申し出がきている」と口を挟んだ。「それに乗ろう」となってとんとん拍子に話が決まった。

(2)日程調整

瓢箪から駒のように開催が決まったが、先方との日程調整は難航した。当初案の4月22日は没となり、一週間前の4月15日しか都合がつかなかった。しかし、この日は日中、私もY.Kさんも別件が入っていて具合が悪い。やむなく、夜間(18:00~)に開かざるを得なかった。萩原弁護士から「なし崩し的に遅くなった」とイヤミを言われた。

(3)準備

開催日まで時間はなかったが、それほど準備に労力は要らなかった。案内チラシの作成、「ネットワーク情報」と赤旗日曜版(折り込み)での宣伝、弁護士との打ち合わせ、などが主な実務だった。ただ、当日「ひぐらし」の開場時間から講演の開始まで20分しかなかったため、会場準備を手際よくやる必要があった。受付の記帳を省略した。そのため、参加者の固有名を把握できなかった。

(4)参加者組織

今回はチケット方式を取らなかった。個別に働きかけ、口頭で参加を確認することになった。参加者の目標を50人~60人とした。さして根拠のある数字ではなかったが、この程度は集まるのではないか、という見通しによる。結果は39人。見通しが甘かったわけだが、その原因は何か。二つあるのではないか、と考える。一つは、「共謀罪」というテーマが、意識ある人にとっても、実感としてわかりにくい、ということ。テロ対策という宣伝のインチキさはわかっても、現行の刑事法体系を根本的に覆すものだという危機感まではないし、自分とどう繋がるのかもピント来ない、という問題。もう一つは、参加の働きかけが弱かったのではないか。無断引用になって恐縮ですが、以下は直後にSさんから頂いたメールです。

「この1週間、市長選への共産党の取り組み方やメガソーラーの運動のことに頭と体力がいってしまって、共謀罪になるべく多くの人を集めなければという意識が薄れていました。」

また、Y.Kさんは同じ日「市民劇場」でご自身の報告・発表があり、そちらに精力を注がれたことと思われます。『共謀罪』という硬いテーマで、この時期に50人からの参加者を集めようとしたことが無理筋だったのかもしれない。

(5)当日

会場準備がスムースに行き、予定時間より5分早く始めることが出来た。弁護士の講演時間と質疑の時間も予定通りだった。会の進行には問題なかったと思う。萩原弁護士のdishonest Abe 批判は痛烈で、小気味よかった。「万引き・窃盗も対象犯罪になっている」と、法案の危険性をわかりやすく解説された。参加された人にとっては既知のことも多かったかもしれない、むしろ反対運動をどう展開していくかをもっと話し合った方が良かったかもしれない。が、後者の運動論は「学習会」後に我々が課題とすべき事柄だろう。

(6)その後の運動

当日の弁護士の講演をビデオに撮り、「19日行動」の後、10数名で視聴した。視聴後の意見交換で、共謀罪反対の声を広めるためチラシを作ったり、ポスティングや街宣車での宣伝を行うことが提起された。これを受け、4月27日(木)に、久しぶりに「総がかり行動・伊東連絡会」が開かれ、反対運動の進め方を論議した。その場で、

・新チラシを星野新聞店を通して折り込み配布する。

・5/8に一斉にビラまき行動をする。

・街宣車で共謀罪反対の宣伝を行う。

などが決まり、実行に移された。

(7)成果

4月15日の「共謀罪 市民学習会」には思ったほど参加者を集めることはできなかった。しかし、その後の取り組みを通して、共謀罪に反対する市民・団体の運動が広がった。『共謀罪 市民学習会』はそのきっかけを作った、と評価できる。とくに、「総がかり行動・伊東連絡会」再開の契機となったことを喜びたい。テープ起こしをした「記録」の配布ととともに、次につながるイベントをつくったことを成果に上げたい。

(以上)

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◆伊豆の国市在住の渡邉隆秀さんから辺野古報告が寄せられました。紹介します。

              【辺野古の姿】

                              渡邉隆秀

3月31日(金)に辺野古へいってまいりました。那覇市から約1時間半、自動車で向かいました。ナビを見ながらやがて辺野古岬が見えてきたとき少し緊張してきました。はじめは穏やかな自然と静かな街という印象を受けましたが、しばらく行くと鉄柵の前で、テントが見えました。そこが戦いの場所です。そこに車を寄せるとすぐパトカーが来ました。びっくりしました。「別な場所に案内しますので誘導します」と現地の方に私たちを3km先の駐車場で、車を置いて運んでもらいました。「車が停車するとすぐ来るんですよ」と警察の対応に怒りをぶつけていました。ゲートに戻り、私はテントにいる方に手紙とカンパを渡しました。ゲートでは約20人ほどの方々が出入り口のところで座り込みをし、リーダーの方がマイクで話をしていました。座り込みの方々にバスの運転手が手を挙げる、通り過ぎるドライバーからクラクションが鳴り、座り込みの方々がそれに応える。みんなの気持ちはそれで通じ合っているようでした。話を聞いてみると、今日で座り込み999日を数えるとのことです。「明日、湾の岩礁破砕許可の期限切れになるが、国は作業を持続してくるだろう。翁長知事はまずこの件で中止を国に申し出ます。知事だけに任せるのでなく私たちの運動があってこそ、併せて初めて力をだせるものです。明日1000日目の集会を開き、海にカヌーや船を出し、あらゆる方法で作業を阻止する活動が重要です。がんばりましょう」と説明していました。「そろそろ時間だ。機動隊がぞろぞろ来て私たちを強制排除する。あなた方は離れていてください」と現地の方に言われました。機動隊もビデオを回し、少しでも抵抗すると業務執行妨害の現行犯として逮捕する構えです。座り込みの方々が排除された後ゲートは開かれ、中からたくさんの大型トラックが出てきました。その数にびっくりしました。そして外側からもたくさんのコンクリートミキサー車がゲートの中に入っていきました。基地反対のプラカードを持った女性の方が大型トラックの前に立ちはだかっていきました。すぐ機動隊に取り押さえられましたがその方は叫んでいました。「いつまで沖縄は基地で我慢すればいいの」「答えてよ」「しっかりこっちを向いて答えてよ」厳しい顔で若い機動隊の人に訴えていました。大型車が出入りしているその間は一般車両は通行止めです。

緊迫した空気に私の体は硬直しました。戦争末期、軍は島民の味方でなかった。今も警察は島民の味方になっていない。沖縄の苦しみはいつまで続くのか。この女性の言葉、表情が私の心に深く突き刺さった。ある方から「沖縄のことはなかなか本土の方々に伝わらないもどかしさがある」と言われました。私たちを駐車場まで送っていただいた方に私は、頑張ってとは言えなかった。辺野古の苦しみ、沖縄の苦しみはいつまで続くのか。私は感極まる思いに、送ってくれた方にただただきつい握手をして「あきらめないでください」という事が精いっぱいの言葉でした。 

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◆4月19日の「19日行動」のスピーチ原稿を紹介します。

          安倍首相に共謀罪

                                                                            三好康昭

 私は共謀罪の危険性を訴えます。この法案には危険なところがたくさんありますが、なかでも一番の危険は政権を安倍首相が握っていることです。

 昔使われたことわざで、現在では差別語なので使われなくなった言葉があります。「〇〇〇〇に刃物」ということわざです。コントロールが効かないものに、刃物を持たせたら危なくてしょうわない、という意味です。これをもじって言えば、安倍首相に共謀罪、です。

 発足以来、白を黒と言いくるめてきたのが安倍政権です。オリンピック誘致のために、放射能汚染水が湾内にコントロールされている、といったウソ。アメリカと海外で戦争するための集団的自衛権を積極的平和主義と名付けたペテン。昨年の参議院選挙前に、消費税引き上げを見送る理由づけに何と言ったか。世界経済はリーマンショック前と似た状況にある、とでっち上げた。戦死者200人を数える内戦状態の南スーダンに駆けつけ警護の任務を帯びた自衛隊を派遣するために、現地は平静な状態にあると国会でウソを言った。

 近い所では、森友学園。教育勅語を幼稚園児に朗誦させる学園をほめそやし、新設の小学校の名誉校長に夫人が就任するなど、べったり癒着していながら、いったん火の粉がわが身に及ぶと、一転知らぬ存ぜぬ、揚句に籠池氏を偽証呼ばわりして脅しつける。夫人付きの国家公務員の財務省への口利きを、なんと私人が勝手にやったことだとしらを切る。これが安倍首相とその取り巻きがやっていることです。

 この政権が共謀罪について何と言っているか。一般人には適用されない、という。法案のどこにそんなことが書いてあるのか。テロ対策だという。テロの定義も法案には書かれていない。それどころか、万引きや大麻の栽培や、競馬のノミ行為など、テロとは関係ない行為を含め、277の罪がただ話し合っただけで共謀罪にされてしまう。準備行為が犯罪の要件だから捜査機関の歯止めになる、と弁解する。しかし、岐阜県大垣市で何が起きたか。中電の子会社が風力発電所の設置を計画した。市民が反対運動に立ち上がった。大垣警察署は事業会社と4回も会合をもつて反対運動つぶしにかかった。

 警察にとって怪しい団体、目星をつけた団体の準備行為などいくらでも作り上げることが出来ます。日本では、司法を含めて権力機関が人権擁護の砦になっていません。そこに共謀罪です。〇〇〇〇とは言わないけれど、ウソと恫喝の安倍政権に共謀罪のような危険な刃物を持たせたら、いったいどういうことになるか。私たちの自由は根底から危険にさらされます。安倍首相に刃物を持たせてはなりません。一緒に反対の声を上げましょう。

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◆伊東市八幡野にメガソーラーを設置する計画が進行しています。材料科学の専門家がメガソーラー設置の問題点を指摘しています。二回にわたって紹介します。その2

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◆伊東市八幡野にメガソーラーを設置する計画が進行しています。材料科学の専門家がメガソーラー設置の問題点を指摘しています。二回にわたって紹介します。その1

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◆3月19日の「19日行動」でのスピーチ原稿を紹介します。

  安倍首相の事実の歪曲またはウソ

                             319日 三好康昭

 政府は南スーダンに派遣した自衛隊を撤収することを決めました。元々、内乱状態にある南スーダンに自衛隊を派遣することはPKO5原則に反して違法だったのです。昨年7月には政府軍と反政府軍との間で激しい戦闘があり死者が270人も出ました。現地の自衛官はこの事実を日報で防衛省に報告しています。ところが、安倍首相はこの事実に目をふさぎ、昨年9月、「南スーダンの情勢は落ち着いている」と国会で答弁しました。戦争法によって新任務を付与されたPKO部隊をなんとしても派遣したいがために、意図的に事実をゆがめて答弁しました。普通の言葉ではこれをウソといいます。

  フリージャーナリストが日報の開示を請求しました。政府にとっては都合の悪い事実が書かれているため、防衛省はすでに破棄して存在しない、とウソの回答をしました。ウソに嘘を重ねて、安倍政府は11月に駆けつけ警護の新任務を帯びたPKO部隊を南スーダンに派遣しました。しかし、現地が危険な状態にあることに変わりはありません。自衛隊員に死者が出ることをおそれた政府は自衛隊の撤収を決めました。その理由を、官房長官は任務に一区切りついたからだ、とこれまたウソの説明をしました。虚偽答弁は稲田防衛大臣だけの十八番ではないのです。 

安倍首相の二番目のウソを指摘します。

 共謀罪は一般人にも適用されるのか。安倍首相は1月末にそういうことはあり得ない、と国会で断言しました。が、審議を進める中で、担当大臣は「普通の団体が犯罪を計画するに至ったら適用される」と答えました。すると、首相は「オウム真理教も初めは普通の団体だったが途中から犯罪集団に変質した。こういう団体には適用される。」と弁解しました。それなら初めからそういえ、という話です。さらに首相はこう付け加えるべきでした。「どんな団体でもいつ変質するかわからないから、警察は常にあらゆる団体を監視する必要がある。それができるように共謀罪を作るのだ」と。

  安倍首相が、「あり得ない」とか、「断じて」とか、「絶対に」とか、ことさら強調して断言するときは大体ウソをつくときです。今、森友学園の籠池氏に100万寄付したかどうかが問題になっています。首相は例によって「あり得ない」と否定しています。本当にありえないことなのか、昭恵夫人が「主人からです」といって渡さなかったのか。昭恵夫人は記憶にない、と言っているようです。「記憶にない」という言葉は、小佐野賢治の昔から、大概その事実があることを裏で認める言葉なのです。事実を明らかにするには、籠池氏だけでなく昭恵夫人も証人喚問するべきではないでしょうか。

(以上)

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◆3月8日平和委員会・城ケ崎サークル例会の学習テーマ=「共謀罪法案とは何か」の報告資料(スライド)にアクセスします。

共謀罪法案とは何か(スライド)

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◆「19日行動」挨拶ー戦争法と事実の隠ぺいと言葉によるごまかし―

三好康昭

 伊東市民の皆さん、お騒がせしています。わたしたちは、一昨年919日に国会で強行採決された新安保法、いわゆる戦争法に反対して、毎月19日にここに集まって抗議行動をしています。私たちが戦争法と呼ぶ理由は明快です。この法律で自衛隊が海外の戦争に加わることが出来るようになったからです。その危険性が早くも南スーダンで現実化しています。

 2012年から、自衛隊は南スーダンのPKOに参加しています。現地で停戦合意が成立し、戦闘が終わったと判断したからです。ところが、その後停戦合意は破られ、再び内戦になりました。昨年7月には銃撃戦の末270人が死亡しました。派遣部隊の自衛官は、日報つまり日々の報告で「現地では戦闘が激しさを増している」と防衛省に報告しました。ところが、安倍首相は、戦争法によって新たな任務を付与されたPKO部隊を派遣したいがために、国会で「現地情勢は比較的落ち着いている」とウソの答弁をしました。

 このごまかしを隠すため、防衛省は日報の公開を請求した人に、もう破棄して存在しない、と回答をしました。ところが、内部通報によって、ごまかし切れなくなった防衛省は「良く調べたらあった」と子供だましの弁解をして日報の存在を認めました。

 今国会で、日報をもとに現地情勢はどうなのか問われた稲田防衛大臣はこう答えました。《武力衝突はあるけれど、戦闘はない。戦闘があるというと憲法9条に抵触することになるから》と。恐るべき答弁です。戦闘があるのは事実だけれど、それを認めると自衛隊を引き上げなくてはいけない。だから武力衝突という別の言葉を使う、というのです。こんな詭弁とごまかしは許されません。安倍首相も同じ論法を使いました。アメリカと一緒に海外で戦争をすることを、「積極的平和主義」と言ってごまかし、憲法の平和主義を蹂躙しました。安倍首相も稲田大臣も、言葉を変えれば事実そのものが変わる、と錯覚しているようです。その結果、自衛隊が戦闘に巻き込まれ、日本がアメリカの戦争に加担することになったら、いったい犠牲になるのは誰でしょうか。首相や大臣ではなく、私たち庶民が悲惨な目に会うのです。戦争法は今すぐ廃止しなければいけません。自衛隊員が戦闘に巻き込まれて死んでからでは遅いのです。市民の皆さん、戦争法廃止のために、ともに声をあげましょう。

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国民の考えと選挙

松山 正

最近の政治は国会内の数だけで決まっているので、選挙と政治の感覚とに大きなズレがあるのでは、と思わざるを得ない。今の政治にこれほどの人が賛成しているとは思えない。選挙結果・方法に大きな問題があると思うが、選ぶ国民の意識がその影響に結びついていないことが根本にあると考える。

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誰でも平和を求めている

竹平萬里

能力のある人、特別関心のある人、そんな人ばかりでなく、一人でも多くの人に関心を持ってもらうための運動、間口の広い運動を望んでいました。たとえば、「憲法を守る会」等、誰でも平和を望んでいます。誰でも、老後の不安を持っています。まともな生活がいつ壊されるか恐れています。多くの人が気軽に加入できる組織、難しいことを知らなくても感情的に理解できる、そんな運動を求めています。

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今年、私が取り組みたいこと

安部川てつ子―子どもたちを放射能から守る伊豆の会  代表―

・今年も子どもたちに平和な未来を引き継ぐために活動していきます。

・沖縄の問題も気になり活動したいのですが、原発関係の動きがかなり多くあるため私は原発を主体に活動していきます。

そして各地で地震が多発している昨今、原発立地県内にある伊東市に原子力防災に対する知識を福島から学んで欲しく働きかけていきたいと思っています。

伊東市を再生可能エネルギーによる地域活性化を目指し勉強会をスタートさせたい。

(了)

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◆ポピュリズム(大衆迎合主義)を憂う

楠丘 勝 

世界はトランプ旋風、EU離脱で揺れている。大方の思惑とは反対の現実が生じました。日本ではアベノミクスが支持率をバックに言いたい放題、大手を振って他を寄せ付けません。

これはみな民主主義の下での、選挙や国民投票による多数決の結果です。確かに、多数決は様々な意見の対立を一つにまとめ上げるという点では優れていますが、個人の投票が、自らの考えや主張に基づくというよりも、情緒や風評に流されているように、最近思うようになりました。

いわゆるポピュリズム(大衆迎合主義)による政治が、世の中に吹き荒れて、時代の大きな転換点、民主主義の危機がきているんじゃないか―これは私の独断、素人考えです。

もっと足元を見よ、問題山積みじゃないか、と人は言う。その通り、東電の電気料が気になる酉年となりました。

(了)

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伊東市の放射性物質除染についての姿勢

関川永子―新宿代々木市民測定所 伊東分室―

 私は、「新宿代々木市民測定所 伊東分室」という放射能測定室を大室高原で開設しています。お御忌む小学校の通学路の苔を今年の429日に測定したところ、セシウム1371kg当たり1,349ベクレル、セシウム1341kg当たり289ベクレル検出されました。その報告に520日に教育委員会と環境課に行きました。そして、通学路から苔をはがすか、注意喚起の看板を立てるか、対策を取るように要望しました。しばらくして環境課から回答があり、国の除染基準である空間線量0.23マイクロシーベルトに満たないことを理由に、苔をはがすことも、大池小学校のPTAに伝えることもしない、もちろん注意喚起の看板を立てることもしない、という内容でした。

 伊東市は福島第一原子力発電所から300kmも離れています。そこに今回の事故で定められた除染基準を当てはめるということは、伊東市は原発被災地と同等の汚染まで受け入れるということと同義です。この市は子どもを守る勇気があるのか、甚だ疑問をもたざるをえません。皆様はどう思われますか。

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◆まず事実を知ることから

大久保伸子

「政治の世界は金まみれで汚いから、なるべく遠巻きにして関わらずにいよう」というのが以前の私の立ち位置でした。そんなきれい事を言っていられる時代ではなくなったということに気づいた時には既に遅く、私たちの生活を圧迫する法律が次々と決まっていく様を茫然としながら見ている昨今です。平和や人権を守っていてくれると思っていた憲法は「改憲」という手続きを踏むこともなく、あっという間に有名無実化されてしまいました。国家権力の暴走にブレーキをかける三権分立も機能せず、最後のブレーキ役として頼みにしていたジャーナリズム、マスコミもお金と権力の前には沈黙したままです。「自由で民主的な平和国家だと思っていた日本が、なぜこのようになってしまったのか、どこに問題があったのか?」自問自答する毎日です。答はなかなか見つかりませんが、まず事実を知り、他の人と共有することから始めたいと思っています。

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「天城民主文学会○○支部」(仮称)の創立を!

平田大海

 私は、沖縄「高江」の住民を思うと「新年おめでとう」と言えません。オスプレイの下で「死の恐怖」で生きる人たちが悪いのでしょうか?伊豆半島の9割はオスプレイの訓練地域に指定されています。(人はわが身にならないと)

 「平和と人権」を守るには、『読んで、書いて、人に伝える』ことが必要です。

「天城民主文学会○○支部」(仮称)の創立を呼びかけます。

会の約束事は、

一、月刊誌、民主文学(970円)を購読する

二、月一回、読書会を開く

三、できるだけ「書き、記録」してあらゆる分野で発表する

以上、三点です。

詳細を知りたい方は、08065889215(平田大海)

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◆主権者教育学習会(2016.12.15)のレポートの紹介 (第二回)

日弁連発行「主権者教育における弁護士・弁護士会の役割」講読  (2)

~第1 5節「政治的中立性について」(P52~P61)

三好康昭

4】教育公務員の政治的行為の制限と罰則適用の問題

本書はいう、「仮に罰則適用がなされるようになれば、教師への萎縮効果は絶大であり、主権者教育はますますの停滞を余儀なくされる可能性が高い。したがって、教育公務員の政治的行為の制限に対する罰則適用には慎重であるべきである。」(P61)

 ↓ 批判

・教育公務員の政治的行為の制限の問題をそれ自体として批判の俎上にのせていない。

・「罰則適用に慎重であるべきだ」というのは、何も言っていないに等しい。極めて生ぬるい批判だ。

※この問題について、今年8月の静岡高生研夏合宿で私見を報告したので、そのレポートの後半部分を引用したい。

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 教師の政治的活動の自由と限界

①「佐々木事件」

宮城県小牛田農林高校の佐々木先生は、市民集会で生徒会活動を報告しようとしたところ、県教委から事前指導を受けた。教育公務員は政治的行為が制限されているので、政治的中立性に反することがないように、と。教育公務員特例法が引用する国家公務員法102条とこれに基づく人事院規則は政治的目的を持ってする一定の政治的行為を禁止している。公務の政治的中立を確保するためだ。法令を厳密に解釈すれば、公立学校の教師はたとえ日曜日の校外の集会であっても、自分の政治的信条や意見を表明する自由がないことになる。しかし、公務員であっても公務を離れれば一私人であり、市民として政治活動の自由があるはずだ。一方は公務員という身分に由来する制約を強調し、他方は市民としての政治活動の自由=表現の自由を重く見る。

➁猿払事件最高裁判決(昭和49年11月6日猿払事件大法廷判決)

最高裁は前者の立場に立って、以下のような判決を下した。

「行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なう恐れのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え…その目的は正当なものというべきである」

※多数意見は、このような判断のもとに、選挙ポスターを掲示した郵便局員を法令に違反する政治的行為を行ったものとして有罪にした。

③批判

・石田和外長官のもとの司法反動化時代を象徴するこの判決には判決当時から強い批判があった。8人の裁判官の多数意見に対して4人の裁判官は反対意見を述べた。

・芦部信喜(東大教授)は言う、「(多数意見は)公務員は『常時勤務状態にある』と言う君主制憲法下の公務員観をそのまま受け継いだ論旨であり」「公務員に国への『全人格的服従と忠誠』を要求する十九世紀の立憲君主制憲法下の法制度において典型的に妥当する論旨」である。(芦部信喜「憲法訴訟の現代的展開」)

・荻弁護士は、明治憲法時代なら妥当した「特別権力関係論」に逆戻りした判決だと批判している。

☞奥平康弘さんは「時代錯誤の判決」と酷評した。

☞大法廷判決が、「公務員の政治的中立性」確保を目的に掲げていることに注意。その結果、中立性が属人性をもつことになり、公務を離れた場でも中立性をもとめられることになる。

④猿払事件判決の修正

判決当時でさえ、公務員に対してこのような一律の政治的行為の禁止を定める立法例はアパルトヘイト下の南アフリカ共和国のみだった。それから42年経った今、この判決がなお維持されているとしたら、それは日本の司法が19世紀的な後進性のままにあることを意味しているし、日本の社会が市民社会と呼ぶに値する市民的自由を未だ獲得していないことをも意味している、と言わざるをえない。

平成24年12月7日、最高裁は小法廷で猿払事件判決を実質的に修正する判決を下した。社会保険庁に勤める年金審査官が、しんぶん赤旗号外を配布したことを理由に起訴された。一審有罪、二審無罪、最高裁は無罪。その理由をこう述べる。

「本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識しえる態様で行われたものではないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとは言えない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定(人事院規則のこと)の構成要件に該当しないというべきである。」

⑤判決の評価

この判決は小法廷で、つまり猿払事件判決を変更することなく下された。が、猿払事件では、公務員という身分でもってなされた政治的行為は、抽象的であっても政治的中立性を損なう恐れがあり許されない、と判決した。しかし、この判決では、具体的に行為の態様を検討し、それが実質的に政治的中立性を損なう恐れがないときには、法令に違反しない、と判決した。猿払事件判決はそのままでは維持できない、と判断したという意味で、一歩前進と評価できる。ただし、太字の言葉は、組合活動の一環としてなされる政治的行為はこの判決でも禁止されるという意味であり、団結権・団体行動権を保障した憲法に忠実な判決とは言えない。…(以下略)…

☞堀越事件判決は、公務員の「職務遂行の中立性」確保を立法目的に上げる。これによって、職務を離れた場で、私人として行う政治的行為の自由を合法化することが可能となる。

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➅堀越事件判決の射程

ⅰ)同じ日、同じ法廷が、同様のケースで、原審の有罪判決を維持した (世田谷事件) 。堀越事件の被告は年金審査官(相談室付係長)だったが、世田谷事件の被告は本省の筆頭課長補佐だった。この違いが逆の結論を導いた。管理職的地位にある人が政治的行為を行うと、職務遂行の中立性が損なわれるという理由だ。しか、須藤裁判官が補足意見でいうように、勤務外の政治的行為からうかがわれる「政治的傾向が職務の遂行に反映する機序あるいは蓋然性について合理的に説明できる結びつきは認められず、公務員の政治的中立性が損なわれる恐れが実質的に生じるとは認められない」というべきだ。

ⅱ)堀越事件判決の判断枠組みは、政治的行為を理由とする懲戒処分についても準用できるだろうか。公務員の勤務外の政治的行為が、職務遂行の中立性を損なう恐れが実質的に生じていない以上、服務規律違反の名で懲戒処分にすることはできないのではないか。木村草太は「公務員の地位・権限の乱用を伴わない政治活動」に懲戒処分を課すことはできない、という。(「法律時報」85巻2号P80)

☞本多滝夫(龍谷大学)

  国家公務員法94条の懲戒事由に当てはまるかどうかを判断するときも、同法102条の罰則規定度同様に、国家公務員の国民としての政治的活動の自由を重く見るべきである。同じ理由で-罰則を設けていない地方公務員法36条の解釈にあっても、政治的活動の自由が尊重されるべきだ。(「法の科学」45号 )

ⅲ)そうであれば、副教材=「私たちが開く日本の未来」が掲げる以下の禁止・制限事例は、市民としての教師が持っている政治活動の自由や選挙活動の自由を不当に制限するものではないか。

・「教員等の地位を利用して(←意味不明)演説会など選挙運動の企画に関与すること」

・「教員等の地位を利用して(←意味不明)候補者の後援団体の構成員となること」

・「選挙運動員として、候補者の自動車などに乗り、投票を呼び掛けること」

・「特定の候補者の名を挙げて、賛成または反対の署名活動をすること」

・「特定の政党または候補者のためにデモ行進等を企て、指導し、援助すること」

・「特定の政党の機関紙やビラを配布すること」

・「選挙用ポスターを貼ること」

・「選挙運動用のポスターや葉書に推薦人として肩書を伏して名前を連ねること」

・「選挙運動のため、個人演説会または街頭で演説すること」

・「不特定多数の人に、特定の政党や候補者を支持または反対する意見を述べること」

・「特定の政党、候補者のために資金カンパを集めること」

  (終り)

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◆主権者教育学習会(2016.12.15)のレポートの紹介 (第一回)

日弁連発行「主権者教育における弁護士・弁護士会の役割」講読 

~第1 5節「政治的中立性について」(P52~P61)

16.12.15    三好康昭

1】政治的教養の尊重と政治教育の禁止

①教育基本法第14条

第1

良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

第2

法律に定める学校は、特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育または政治的活動をしてはならない。

②第1項の意義 (P54下から13行目~)

ⅰ)憲法は、国民一人一人が、個人として市民として、自主的・自律的な人格を形成するよう成長し発達していく権利を有することを前提として、学習権を保障している。子どもについては、この学習権を具体的に充足させるべく教育を受ける権利を保障している。

☞政治的教養を育むための教育の必要性を子どもの学習権に根拠づけることに全面的に賛成。そして、学習権の二つの側面―社会権的、自由権的―から、政治教育の範囲と限界を定めるべきだ。

ⅱ)立憲民主主義を担う主権者となるための政治的教養を学び陶冶することは、教育を受ける権利の不可欠の内容である。

まとめると、

子どもが自主的、私立的な個人へと成長し、立憲民主主義の担い手となるうえで政治的教養を育み・陶冶することは不可欠である。 (P55下から5行目)

☞政治的教養の目的を、立憲民主主義の担い手となる市民を育てるため、と規定するのは狭い。立憲民主主義は民主主義の類型のうちの一つであり、また、政治社会が常に民主主義的であるとも限らない。政治教育の目的は政治社会を構成的に担う市民の育成、と広くとらえるべきだ。

③第2項の位置づけ。

第2項の趣旨は、第1項が実現しようとする自主的・自律的人格としての成長発達を妨げるような、一方的な党派教育を禁止し、子どもが政治的教養の獲得を保障することにある。

つづめて言えば、子どもの成長・発達権・学習権保障の妨げとなる一方的な党派的教育を禁止したもので、14条の中心となる規範は第1項の政治的教養の尊重であり、2項は第1項に対して従たる位置づけとなる。

従たる位置づけに適合した解釈をすべきである。

2】政治的中立に反する政治教育とは

142項の解釈―

①第二項の行政解釈(『逐条解説 改正教育基本法』)  (P56下から15行目~)

・政治的活動…「その行為の目的が政治的意義を持ち、その効果が政治に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為を言い、特定の政党との関係の有無にかかわらない。」

☞「新通知」も同じ定義。このような目的効果説に立った定義づけは、「宗教的活動」を定義した津地鎮祭訴訟大法廷判決に依拠している。宗教的活動を目的・効果基準で定義することによって、国家や自治体がかかわることが出来る宗教的活動を広く認めた。政治的活動を目的・効果基準で定義することによって、教師がしてはならない政治的行為の幅を広げ、それによって教師の教育の自由を狭めた。

・政治教育…「直接・間接を問わず特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育」

②行政解釈の批判 (P56下から2行目~)

禁止される政治教育、政治的活動の範囲が広すぎる。その結果として、

ⅰ)→政治にかかわる教育の範囲を不当に狭く限定し、第1項の政治的教養の尊重の趣旨を阻害する。

ⅱ)→直接、子どもたちと人格的接触を図る教師の専門性に裏付けられた教育の具体的な内容と方法についての、裁量や判断を奪う。

☞これにより、子どもの(社会権的な)学習権が侵害される、と理論構成することに賛成する。

③本書の解釈 (P57の10行目以下)

本書は2項の「政治教育」と「政治的活動」を以下のように狭く限定解釈すべきことを主張する。

…「第14条2項の『政治教育』とは、直接に特定の政党を支持しまたはこれに反対するための政治教育を指すものと解すべきで、間接的な効果を持つものは除外すべきであるとともに、同項の『政治的活動』も無限定のものではなく、『特定の政党を支持し、又はこれに反対するための」活動に限定されると解すべきである。

④私見

日弁連の限定解釈は、14条2項の文言に忠実である。が、たとえば、新安保法―集団的自衛権容認―は憲法に違反する、と教えるのは14条2項に抵触しないか。直接に特定の政党を支持しまたはこれに反対する教育ではないから、日弁連の見解では違法ではない。が、一定の政治的目的と効果を持つ政治教育である。党派教育ではないにしても、政治的に偏った教育として指弾されるおそれがある。私は、偏っているか否かは何を教えるかではなく、どういう仕方で教えるか、を基準に判断すべきではないか、と考える。

☞教え方の具体的な内容と方法は、教師の専門性に裏付けられた判断が尊重さるべきだ。教師の教育の自由をひろげるという点で、日弁連の限定解釈と結果的に変わらない。

3】教え方と政治的中立性

(1)教師の個人的意見表明の是非。P57(3)①~)

①文科省の見解

現に争いになっている政治問題を授業で取り上げる際、教師が自分の見解を述べることは適切か。文科省は禁止していないが、抑制するよう求めている。

イ)新通知…「個人的な主義主張を述べることは避ける」こと。

ロ)副教材(未来を拓く…)…特定の見解を自分の考えとして述べることは避けることが必要。

②この点についての本書の意見は次の通り。

教師が指導において自己の見解を述べることが適切かどうか、という問題は、それが生徒への押し付けにならない限り、授業の進め方についての教師の専門的裁量に任されるべき事柄だ。新通知が政治教育の場面で「個人的な主義主張を述べることを避ける」よう求めている点は見直されるべきである。その理由は以下の通り。

1)個人的見解を控えさせることは教師と生徒との信頼関係構築を妨げる。

2)萎縮効果により、政治的論争のある問題を授業で取り上げにくくする。

3)ドイツの「ボイテルスバッハ・コンセンサス」やイギリスの「クリック・レポート」は教師が自己の見解を述べることは有効な政治教育の手法として認めている。

4)授業の進め方についての教師の専門的裁量が尊重されるべきである。

③私見

政治とは争いのある問題の解決を目指す営みだから、政治を教育で取り上げるなら、現に政治的な対立を生んでいる問題を取り上げるのは当然だ。その際は、「論争のある問題を論争のあるものとして扱う」ことが必要だ。つまり、

ⅰ)対立する側の両方の見解とそれぞれの根拠を示すこと。

ⅱ)生徒の思考や判断を深めるために、教師個人の見解を述べることが必要になることもある。それは、指導の教育効果の問題で、教師の専門性に任せられる。

ⅲ)教師が個人的な見解を述べることは生徒を同じ意見に導くためではないから、強制したり押し付けたりはできない。

私見では、以上が「政治的中立性」から要請されることのすべてである。文科省が教師の言説に枠をはめようとするのは、教師の見解が生徒に影響する―洗脳する―ことを過度に恐れるからだろう。

☞教育内容を官僚的に統制し、教師の教育の自由を狭めようとする試みは、教育そのものの否定につながる。個性を奪われた教師は教師とは言えない。マシーンに過ぎない。

(2)補助教材の統制の問題(P58~59)。⇒省略

(つづく)

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◆11月27日の「木村草太 講演会」の感想

木村草太さんの講演を聞いて

                            1128日 三好康昭

 10時過ぎ、木村草太さんが登壇する頃は、韮山時代劇場の大ホールは200名近くの人で席が占められた。広い会場で、実数はつかめない。講演の90分は長くは感じなかった。学者らしく、気負うことなく、淡々と憲法の解釈論を進めた。中心は9条と24条。

 憲法9条の2項は戦力の不保持を定めている。この規定の例外を憲法は定めているか。政府は13条の幸福追求権が例外規定である、という。「生命、自由及び幸福追求の権利については…国政の上で最大の尊重を必要とする」との規定だ。これによると、国民の生命が脅かされないように努める責任が政府にある。したがって外国から攻められてきたとき国民を守る責任と権利が政府にはあり、そのための実力組織の保有も許されるのだ、と自衛隊合憲論を根拠づける。さらにいう。自衛戦争は主権国家の統治権の発動であり、「行政」作用である。憲法73条は内閣が一般行政権を有すると定めており、自衛戦争を指令する権限もこれにふくまれる、と。木村さんは政府のこの解釈を支持する。自衛のための戦争、すなわち個別的自衛権の行使は「行政」であるが、集団的自衛権は「行政」に含まれず憲法違反である、と解する。納得できない。アクロバティックな解釈だ。13条の生命の安全を脅かされない権利は、国家に対してそのような行為を禁止する規定であって、国家に自己の安全の保障を求める―社会権的な-規定ではない。自衛のためであれ、戦争は国民からすれば、安全を脅かされる行為に他ならない。もう一つ。自衛戦争は「行政」の範囲内の行為だというのも無理がある。自衛戦争を肯定しながら、交戦権を否定する(92)のでは辻褄が合わない。主権国家の非常大権としての戦争を一般行政に含める解釈は無理だろう。自衛隊を強いて合憲と解釈したいなら、憲法慣習論を持ち出すしかないのではないか。

 外国籍の人に参政権を認めないのはおかしいのではないか、という質問が会場からあった。木村さんは地方選挙であれ、国政選挙であれ、外国籍の人に参政権を付与することに消極的だ。理由は、もし参政権を与えるとなると入国審査を厳しくしなければならないからだ、という。この理屈もおかしい。入国の条件と参政権付与の条件は直接の関係はない。質問の焦点は永住を認められた在日の人たちに参政権―とりわけ地方自治体の―を認めないのは平等原則に反しないか、ということにあった。木村さんはこの問題に答えていない。

 総じていえば、木村さんの話は憲法解釈の枠内にとどまり、実践的な運動論の視点がなかった。

 木村講演が終わると、会場にいた人たちはぞろぞろ席を立って帰り始めた。ステージ上で運営者がマイクで聴衆に訴えかけをしているにもかかわらず。マナーに反する行為ではないか。「教育の集い」の名が泣く振る舞いに思えた。

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◆「福島視察の記録」の第八回目(最終回)を載せます。

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(完)


◆「福島視察の記録」の第七回目を載せます。

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◆「福島視察の記録」の第六回目を載せます。

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◆「福島視察の記録」の第五回目を載せます。

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◆「福島視察の記録」の第四回目を載せます。

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◆「福島視察の記録」の第三回目を載せます。

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◆「福島視察の記録」の第二回目を載せます。

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◆北野幸雄さんら反原発労働者行動実行委員会の方々が、2015年5月に福島の放射線量の高い地域を視察してこられました。その中には、11月23日伊東市で講演される吉澤正巳さん経営の「希望の牧場」もあります。貴重な視察報告を、関係者の了解のもとに、8回にわたって載せます

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◆三陸沿岸を車で回りました(友人への報告メールから)

9月28日、三好康昭

3時間ほど前に、家に着きました。柳田国男の「遠野物語」の舞台=岩手県遠野市を朝8時に出発して、花巻から東北自動車道を南下し、雨をついで9時間半、距離にして850kmを走破して帰ってきました。往復1700kmを三日かけて廻った計算です。26()にこちらを発ち、圏央道から常磐自動車に入って、ひたすら北上。福島原発の脇を通ったときには、道に設置された放射線の計測器は一気に10倍に跳ね上がりました。車の通行量も少なく、深閑とした感じを受けました。宮城県に入り宮城野原から仙台空間にかけての地域は、建物も何もなくただ一面に平地が広がるだけ。復興計画も緒についていないようでした。一日目の宿は松島海岸駅の近く。土産物店街や五大堂などの観光スポットは観光客であふれていました。それにもまして密度が濃かったのは交通量。車の列が切れず、横断することもままならない。ダンプやミキサー車がひっきりなしに通り、まるでダンプ街道。二日目は、三陸海岸沿いを岩手県の釜石まで北上し遠野へ。R45号線沿いの三陸の港町や住宅街はすべて津波で洗われ壊滅しました。5年経った今どうなっているか。海岸線のいたるところで、盛り土工事や海岸堤防工事が行われていました。山側はあちらこちらで斜面を削って宅地造成工事。東北一帯のダンプやブルトーザやクレーン車をすべて集めたような、ものすごい工事です。道路から見える人家の数よりもダンプの数の方が間違いなく多い。松島海岸で見たダンプとミキサー車はこれでした。ヘルメットを被った作業員は目にしても、住民と思しき人はほとんどいませんでした。今、被災地では復興のための大土木工事が金と重機の力で猛烈に進められています。5年前の鎮魂の時と空間は、今はダンプと重機のけたたましい音に変じました。これから5年経ったときにはどんな姿になるのか……。自分の目で見たいと思って出かけた三陸旅行でしたが、実際に行って見ると、自分とはどうしようもなく離れた世界だと思わざるを得ない現実がありました。

 宿泊ホテルから眺めた朝の遠野は雲が立ち込め、ひっそりとしたたずまいで5年前と変わらない風情でした。

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◆沖縄にかかわる活動を振り返って-3-

9/10 三好康昭

《はじめに》

機会あって、沖縄にかかわって伊東でどんな活動が行われてきたかを振り返りました。もちろん、私が関与した限りでの活動に限られます。期間は2015年6月から現在まで。「中間総括」的な意味で、活動を通してどんな成果があったのかを考えてみました。長文ですので、三回に分けて載せます。

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【Ⅴ】8月6日…「標的の村」上映会

(1)経緯

伊東の若い人たちが東村・高江を訪れた際、伊佐真次さんから「標的の村」の上映を強く勧められました。ヘリパッド反対運動を描いた映画であること、まもなく配給会社の配給権が切れること、などから早急に上映するよう口説かれました。一行は心を動かされました。映画は「戦場ぬ止み」と同じ三上智恵監督の作品で、配給会社も同じ。勝手を知っていることから、私に上映会開催のお鉢が回ってきました。時間的余裕がありません。配給権切れ (実際にはこの期限は延期されたとのこと) 直前の8月6日に上映することにして段取りを組みました。

(2)上映の取り組み

実行組織はこれまでと異なり、「市民ネットワーク」単独の主催。この方が短い時間の中で機動的に動けるからです。その分、人を集められるかが心配。チケットの販売料金も「戦場」の800円を「標的」では500円にしたので、赤字になることも……。「市民ネットワーク」を通じて宣伝しました。幸い、この時までに賛同者は100名近くに達していました。伊東市内だけでなく、三島方面の人や、松崎の人も賛同者になっていました。この人たちが事前に、あるいは当日に券を買って映画を見に来てくれました。沖縄報告会でつながった若い人たちも来ました。来場者は135人。チケットを買ってくれた人は185人に達しました。「戦場…」よりも数は減りましたが、若い人・見知らぬ人の数はかえって増えたように感じました。そのあたりを事後の総括文を引いて確認しておきます。

「戦場…」に比べて、若い人や見慣れない人の参加が多かったような気がします。……その中には、三島・沼津から来た永島香さんたちのグループがありました。松崎町から来た   西原さんたちがいました。佐藤龍彦さんのつながりで来た若い人たちもいました。今回の上映会の目的の一つに「市民の横へのつながりを広めるとともに、世代間をつなぐ動きを作っていく」ことをかかげました。横への広がりに関しては、伊東の外へと運動が広がっている兆候があります。また、世代間をつなぐ動きとしては、「沖レポ」の取り組みから続く若い人たちとの協働の芽が生まれつつある、と言っていいように思います。これをどう育てていくかが課題となります。

赤字の心配があったため、当日会場でカンパをお願いしたところ、予想外に多額のお金を寄付していただきました。このお金(6万9千円)を元金に「沖縄基金」を創設することにしました。今後沖縄に関する講演会や映画会開催するときの費用や、沖縄現地に人を派遣するときの旅費等に充てたいと考えています。

【Ⅵ】北上田源さん来東

5月の沖縄訪問に際して現地を案内していただいた北上田源さん、「標的の村」上映会の折に「高江の今」をDVDに撮って送ってくれた北上田源さん、その北上田さんが8月下旬に伊東を訪れました。加藤好一さんたちの民間教育研究サークル「ゆい」の招きによるものです。三日間の滞在中、沖縄を訪ねた人たちとの交流のほかに、函南の平和集会で講演され、また伊東の有志の方たちが企画した集まりで沖縄と高江の現状を報告されました。加藤さんによると、「少人数で準備できる小集会を各地域で重ねて延110名余の参加を得た。」ということです。

【Ⅶ】まとめ

昨年6月の講演会から現在にいたるまでの、沖縄にかかわる伊東での活動を略述しました。これまでの活動を通してどんな成果が生まれたか、まとめてみます。

沖縄にかかわる様々な活動を通して、私たちが得た一番大きな財産は「人のつながり」が広く・豊かに作られたことだと思っています。分節してみましょう。

  1. これまで市民活動とは無縁だった私が、イベントや活動を行う中でたくさんの人と出会い、苦楽を共にしました。他方、講演会や映画会に参加した人たちは、日ごろの思いや疑念が自分一人のものではないことを実感したはずです。主催する側であれ、参加する側であれ、人と人の出会いの場を提供できたことが活動の第一の成果だったと思います。
  2. 団体を横につないで共同して取り組む活動を行いました。最初の講演会と「戦場ぬ止み」上映に当たっては、団体ごとに実務を分担して取り組みました。共同の取り組みを通して、協働する関係が作られました。その結果、団体間を横につなぐ目的でつくられた「共同センター」が「連絡会」を経て「総がかり行動 伊東連絡会」へ発展していったのだろうと思います。沖縄イベントはいわばその足場を作ったものと考えています。これが第二の成果です。
  3. 人と人のつながりが、その場・その時で終わらず、恒常的な「ネットワーク」へと発展しました。集会やイベントに参加できない人も、月に一度発行する通信によって情報を共有できます。のみならず、自らが情報を発信することもできます。「市民ネットワーク」は運動の媒体の性格を持ちますが、それだけではなく、人と人をつなぐ装置です。人のつながりを可視化できるネットワークが作られたことが第三の成果です。
  4. ネットワークを通して、地域的限定なしで賛同者を広げることが可能になりました。峠の向こうにも、伊豆半島の西海岸にも賛同者が生まれました。そのことによって共有する情報の量と範囲が広がり、運動のすそ野が広がりました。第四の成果と言えます。

以上のように、沖縄にかかわる活動を通して、私たちはたくさんの成果をおさめることが出来ました。この間の市民運動をけん引するエネルギーを沖縄は与えてくれました。なぜ「沖縄」なのでしょうか。私は、沖縄が「反安倍」の象徴となっているからではないか、と考えています。憲法を無視し戦争への道を突き進む安倍政治、民意を顧みず民主主義をないがしろにする強権政治は沖縄において最も鮮明に現われています。平和と人権に心を寄せる人たちは、沖縄への連帯を通して安倍政治にノーを突き付けているのだと思います。その意味で、現在の自公政権が続く限り、沖縄にかかわる当地の活動が止むことはないと思っています。

「沖縄から」私たちは大きな力を得ました。他方「沖縄へ」どんな貢献をすることができたでしょうか。市民に沖縄支援を呼び掛けました。辺野古基金にカンパをしました。現地を訪れ連帯の意志を示しました。直接の支援活動は他にもあるでしょう。が、当地で私たちが出来る最も大きな貢献は、安倍自公政権に異議を申し立て、平和と人権と憲法を擁護する活動を倦まずたゆまず続けることではないでしょうか。それが「沖縄へ」私たちが出来る最大の連帯行動だと考えています。

(以上)

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◆沖縄にかかわる活動を振り返って-2-

9/10 三好康昭

《はじめに》

機会あって、沖縄にかかわって伊東でどんな活動が行われてきたかを振り返りました。もちろん、私が関与した限りでの活動に限られます。期間は2015年6月から現在まで。「中間総括」的な意味で、活動を通してどんな成果があったのかを考えてみました。長文ですので、三回に分けて載せます。

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「沖縄から、そして沖縄へ」-その2-(2/3)

【Ⅲ】2016年1月16日…「戦場ぬ止み」上映会

(1)経緯

大使宛の手紙送付活動と並行して、沖縄の映画上映の構想を温めていました。候補作は「うりずんの雨」か「戦場ぬ止み」。東京に行って二つの映画を見てきました。迫真性から「戦場ぬ止み」が適当と判断し、年内上映を企図しました。このころ、私は安保法案(いわゆる戦争法案)反対の市内デモを企画・実施したり、強行採決前夜には共産党の街宣車を借りて市内を街宣して回りました。その縁で、共産党関係の人とつながりが出来ました。「戦場ぬ止み」上映の実行組織は先の講演会と同様に「連絡会」構成団体の人たちと作りました。が、前回と違って、加藤好一さんや平田大海さんが個人の資格で―有志として―実行委員会に加わりました。私もアンチAB会というより、個人として加わりした。重岡秀子さんは個人と組織の二つの顔を持って参加されたのではないかと思います。

市議会選挙が終わって、10月から準備に入りました。会場の使用の関係から年内上映は断念して、翌年1月16日を上映日に決めました。

(2)映画上映と並行して

最初の実行委員会の席で、「連絡会」の構成団体を超えた幅広い市民がつながる場が必要ではないか、という意見が出されました。「戦争法(案)」反対の運動を展開するなかで、幅広く市民が手をつないで、情報や行動を共有して行動することが大事だという経験知からの提言だったと思います。原発反対の運動をしている人たちとも共同の場をつくりたい。が、「連絡会」や実行委員会にそうした人たちが参加するのは現実的に難しい。だとしたら、既存の組織とは別に新たなネットワークをつくり、そこから情報発信と行動の呼びかけをしていこう。このような思いを持つ有志5人が集まって、新組織の構想を練りました。

  • 個人登録とし、直接個人に情報を送る。
  • 会費は取らず、カンパを原資に活動する。
  • 基本的なコンセプトは緩やかなつながり。

名称は「『平和と人権』市民ネットワーク」としました。映画上映日の1月16日の立ち上げを目指して呼びかけ文の作成→呼びかけ人の依頼→賛同者の募集、並行して規約づくりや事務局のメンバー決め。映画上映の準備を上回る忙しさでした。

(3)上映会

6月の講演会の経験が生きて、上映の準備は順調に進みました。映画のチケットを実行委員会の構成団体が組織を通して販売した他に、実行委員個人が人的なつながりを生かして販売しました。当日の入場者は180名を超え、チケットの販売総数は240枚に上りました。大盛況でした。原発反対運動の人たちもたくさん参加しました。運動の幅を広げるという目的はそれなりに達成されたと評価しています。後日の総括文から、一部を以下に引用します。

上映活動を進める中で、実行委員会を母体に二つの新しい組織が生まれました。一つは「総かがり行動 伊東連絡会」。戦争法廃止の2000万署名と19日行動動を推進する実行組織です。もう一つは市民団体の活動をつなぐ連絡媒体としての「市民ネットワーク」。二つの会は上映活動がなかったとしても誕生したかもしれません。しかし、会の活動を担うメンバーは上映実行委員と重なります。上映活動を進める中で生まれた人的なつながりや信頼関係が、新しい組織を生み出す力になったのではないかと思われます。一つの協働活動から、運動の新たな広がりが生まれたわけです。

【Ⅳ】若者の沖縄派遣と報告会

「戦場ぬ止み」上映の収益金と当日寄せられたカンパを元手に、伊東の若い人たちに沖縄を直接生で見てもらうことにしました。20代~30代の若手3人と団長の佐藤さんの4人が、5月12日から三泊四日の日程で沖縄を訪れました。加藤好一さんのコネクションで、北上田源さんが現地を懇切に案内してくれました。辺野古基地や東村・高江のほかに、戦跡や平和の礎を訪れ、現地の様子を目で見、肌で感じてきました。「私の人生観を変える4日間だった」と衝撃を語った人もいます。

6月26日に報告会を開きました。Aさんはガマなど戦跡の見聞と沖縄戦の歴史を語りました。Bさんは東村・高江の様子を、Cさんは辺野古基地を訪れたときのエピソードを枕に、沖縄が置かれた状況を安保条約に絡めて説明されました。三人は普段の仕事の合間を縫って、資料を調べスライドを作って報告の準備をしました。実際に見聞した現地の様子を生き生きとわかりやすく語ってくれました。

この時の来場者は58名。人数的には少し寂しかったですが、特筆すべきは若い人たちの参加が多かったことです。報告者の縁者や司会をされた佐藤龍彦さんの知人・友人が何人も来場しました。当日の受付もこの人たちがやりました。ついでに、農産物の即売もやっていきました。

(つづく)

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◆沖縄にかかわる活動を振り返って-1-

9/10 三好康昭

《はじめに》

機会あって、沖縄にかかわって伊東でどんな活動が行われてきたかを振り返りました。もちろん、私が関与した限りでの活動に限られます。期間は2015年6月から現在まで。「中間総括」的な意味で、活動を通してどんな成果があったのかを考えてみました。長文ですので、三回に分けて載せます。

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「沖縄から、そして沖縄へ」-その1-(1/3)

【Ⅰ】20156月13日…「沖縄から、そして沖縄へ」講演会

(1)経緯

前年11月『オール沖縄』をかかげて翁長知事が誕生しました。新知事は辺野古基地建設阻止を公約に当選しました。私は、この闘いを支援するためカンパをしたいと思いましたが、どこにカンパをしたらいいのかわかりません。4月初め、旧知の比嘉靖さんに電話をして、「どこにカンパしたらいいか」尋ねました。比嘉さんいわく、「三好さん、カンパもいいけど、そちらで沖縄のことを知ってもらう講演会を企画してもらいたい」と。たしかに、お金だけで済ませるのは虫が良い、できたら、比嘉さんを呼んで講演会を開きたい、でもどうしたらできるのか……。

当時、私はアンチAB会という名の学習会を仲間と開いていました。が、四人だけでは講演会は無理。で、少し前に面識を得た「伊東市九条の会」事務局長の斎藤太郎さんに話を持ちかけました。斎藤さんたちはこの時、年金者組合や新婦人の会、平和委員会など市内の民主団体を横につなぐ連絡会(「改憲を許さず、憲法を守り生かす共同センター準備会」)の立ち上げを企図しているときでした。その集まりが4月13日にあり、そこに講演会の開催を提案しました。出席された関係団体の方々の賛成が得られ、講演会実施が本決まりとなりました。また、比嘉さんに加えて伊東在住の元琉球大学教授の加藤好一さんにも講演をお願いすることになりました。

斎藤さんは「共同センター」主催の講演会としたかったようですが、アンチAB会も加わることから、関係7団体とアンチABで実行委員会を作り、これを主催者としました。実質的な準備は5月の連休が明けてからです。年金者組合の甲斐田さんにチケットを作ってもらい、受付の準備は新婦人の方にやっていただきました。プロジェクターの用意と映写は平和委員会の伊藤さん。こうした人たちとの協働はもちろん初めてのことでした。

(2)当日

会場は150名収容できる観光会館第1会議室。私はどれくらい人が集まるのか見当がつかず、果たして費用を賄えるか不安でした。当日来場された方は約130人。この数が過去のイベントに比して多いのか少ないのか分かりません。が、結果として4万5千円ほどの黒字を計上でき、予期した以上の人が集まったことは確かです。沖縄をテーマにした講演会にこれだけの市民が集まったことは画期的なことだった、と思います。

最初に講演した加藤好一さんは、ペリー来航以来の沖縄の歴史を資料を交えながらわかりやすく丁寧に説明していただきました。比嘉靖さんは、パワーパイントを使ってお住まいの地域での「共同づくり」の実践を熱を込めて語っていただきました。お二人の講演をテープ起こしして参加者に配布しました。

(3)意義付け

講演会が終わった後、加藤さんにお礼のメールを送りました。その中で、今回の取り組みの意義を私は以下のように書きました。

今度の企画を通して、市民のボランティアな活動と平和委員会や新婦人などの団体、それに共産党などの政党が、一点共闘ではありませんが、共通の目的に向けて協力しながら運動をすすめることが大事だと実感しました。アンチABの四人だけではとても130名の人員を組織することはできません。でも、四人の自発的な働きかけが講演会を生む原動力になったことも事実です。自発性と組織性の両輪が必要ではないでしょうか。

市民一人一人の自発性と、団体の組織性がうまくかみ合って講演会の成功を生んだと自賛しています。ともあれ、私にとっては当地での初めての市民活動は無事に終わりました。

【Ⅱ】20158月3日…ケネディ大使宛、辺野古基地建設の中止を求める手紙の送付

 講演会後、アンチAB会は「連絡会」(「共同センター」から改称)に加わらず、独自にケネディ駐日大使宛の手紙送付の活動に取り組みました。大使宛に、沖縄の民意を尊重し、基地建設を断念するよう本国政府に働きかけるよう求める文書をつくりました。これを一方では英文に翻訳し、他方では日本文の署名用紙の形式に作りました。炎天下、二回にわたって、「湯ノ花通り」で街頭署名を行いました。そのとき、名護市役所から送られてきた辺野古パンフ40枚を配布しました。市内の共産党の集会にも出て参加者に署名をお願いしました。こうして得た108筆の署名簿を添えて、英文の手紙を大使館宛に送付しました。おそらくケネディ大使の目にふれることはなかったでしょうが、伊東市民に辺野古を知ってもらう活動として意味があったと考えています。

(つづく) 

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教育の政治的中立、教師の政治的活動の自由

8月27日 三好康昭

【Ⅰ】政治的中立の意味

①「不当な支配」

教育基本法16条は「教育は、不当の支配に服することなく」行われるべきことを定める。ここでいう不当な支配の主体として想定されているのは政党、政治団体、議員や首長など政治部門のアクターである。教育の政治的中立とは、政治勢力が教育行政に干渉することを排除するために要請された原則だ。ここでいう中立とは、教育行政は政治から独立して行われなければならない、という意味である。教育公務員である教師も行政の一端を担うので、党派的教育は禁止される。

②政治の介入を排除する論理

しかし、議院内閣制をとる日本の政治システムにあって、議会の多数党が政府を組織し、目指す教育理念や価値を官僚組織を通して実現しようとすることは避けられないのではないか。荻弁護士は言う、「時の与党なり、内閣なり、絶対、一定の政治的信条と言うものを持っている。一定の政治的信条を持たずに存在することはできない、というのが国家権力で、ことの性質上しょうがない」。事実、政権与党は教科書統制や道徳の教科化など、露骨に教育に介入している。

このような政権与党が官僚組織を通して教育に介入するルートを遮断する論理として主張されたのが、教育を第四権に位置づけようとする国民の教育権論だった。そこでは、教育行政はもっぱら教育条件の整備にかかわり、教育内容に関与してはならない、と主張された。

③最高裁判決(昭和51年5月21日)と憲法基準論

しかし、最高裁はこの論を退け、国すなわち当時の文部省が一定の範囲で教育内容に介入する権利があると判決した(旭川学テ判決)。では、国は自由に教育に介入できるか。歯止めはないのか。荻弁護士は、介入の限界・基準線は憲法によって決められる、と説く。「教育の現場における『政治的中立性』とは何であるか、というと『憲法に沿った教育をしてください』。これだけが中立なはずです。政治的というのがいっぱいある中で、何が中立であるかを決めるのは憲法です。」

④教育の自由の限界

この説明はそれとしては理解できる。しかし、憲法の解釈はさまざまに異なる。例えば、集団的自衛権を法制化することは憲法に反するのか、反しないのか。自民党はHPで、憲法に反すると教える教師は政治的中立に反するので密告しろ、と煽っている。つまり、憲法が基準だといっても、解釈が異なるような問題について憲法は具体的な基準にはならない。

私は、教師にとっての政治的中立の問題は以上のような政治と行政の分離という観点からではなく、子どもの学習権を基準として教師の教育の自由の限界を画するアプローチを取るべきだと、と考えている。別の論考から引用する(一部の語句を変更)。 

教師の教育の自を制約する原理は、「政治的中立性」や「全体の奉仕者」といったあいまいな概念ではなく、生徒の「教育を受ける権利」に求めるべきだ。その内容は二つある。

ⅰ)生徒が政治に関する知識や政治的判断力(政治的教養)を身につけるために必要な教育を要求する権利。いわば社会権としての政治教育を求める権利

ⅱ)生徒が政治的教養を身につけるうえで、教師の一方的な政治的意見や教えを拒否できる権利。いわば自由権としての政治教育を拒む権利

この観点から、「学校における指導に関するQ&A」(p85~)を検証すると、いくつか問題となる指摘がある。たとえば、Q3の答え→

「教員が、特定の見解を自分の考えとして述べることについては、避けることが必要です。」「生徒から教員の主義主張を尋ねるような質問がある場合には、慎重に対応し…」

このような‟自己規制”は、ⅰ)の生徒の教育を受ける権利を侵害する。教育的に見て有効な指導であるかどうかという観点から、個人的な考えを言うべきか控えるべきか、を決めるべきだ。多くの場合、教師が個人的な考えを述べることによって、生徒の政治的判断力は高まるだろう。もちろん、それを押し付けることはⅱ)の生徒の権利に反する。

⑤結論

以上をまとめると、次のようになる。第一に教育の政治的中立性は政府権力に向けた要請であって、教育行政は政治的アクターから干渉を受けず独立して行われなければならないということであり、これが教基法16条でいう「教育は不当な支配を受けることなく」ということの意味である。第二に、教師に課される教育上の政治的中立とは、子どもの学習権を基本にして、一方では子どもの学びの要求に応える政治教育を実践し、他方では子どもの政治的判断力を阻害する政治的教説の注入を禁ずること、と読み替えるべきである。

【Ⅱ】教師の政治的活動の自由と限界

①「佐々木事件」(資料参照)

宮城県小牛田農林高校の佐々木先生は、市民集会で生徒会活動を報告しようとしたところ、県教委から事前指導を受けた。教育公務員は政治的行為が制限されているので、政治的中立性に反することがないように、と。教育公務員特例法が引用する国家公務員法102条とこれに基づく人事院規則は政治的目的を持ってする一定の政治的行為を禁止している。公務の政治的中立を確保するためだ。法令を厳密に解釈すれば、公立学校の教師はたとえ日曜日の校外の集会であっても、自分の政治的信条や意見を表明する自由がないことになる。しかし、公務員であっても公務を離れれば一私人であり、市民として政治活動の自由があるはずだ。一方は公務員という身分に由来する制約を強調し、他方は市民としての政治活動の自由=表現の自由を重く見る。

②猿払事件最高裁判決(昭和49年11月6日猿払事件大法廷判決)

最高裁は前者の立場に立って、以下のような判決を下した。

「行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なう恐れのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え…その目的は正当なものというべきである」

※多数意見は、このような判断のもとに、選挙ポスターを掲示した郵便局員を法令に違反する政治的行為を行ったものとして有罪にした。

③批判

  • 石田和外長官のもとの司法反動化時代を象徴するこの判決には判決当時から強い批判があった。8人の裁判官の多数意見に対して4人の裁判官は反対意見を述べた。
  • 芦部信喜(東大教授)は言う、「(多数意見は)公務員は『常時勤務状態にある』と言う君主制憲法下の公務員観をそのまま受け継いだ論旨であり」「公務員に国への『全人格的服従と忠誠』を要求する十九世紀の立憲君主制憲法下の法制度において典型的に妥当する論旨」である。(芦部信喜「憲法訴訟の現代的展開」)
  • 荻弁護士は、明治憲法時代なら妥当した「特別権力関係論」に逆戻りした判決だと批判している。

④猿払事件判決の修正

判決当時でさえ、公務員に対してこのような一律の政治的行為の禁止を定める立法例はアパルトヘイト下の南アフリカ共和国のみだった。それから42年経った今、この判決がなお維持されているとしたら、それは日本の司法が19世紀的な後進性のままにあることを意味しているし、日本の社会が市民社会と呼ぶに値する市民的自由を未だ獲得していないことをも意味している、と言わざるをえない。

平成24年12月7日、最高裁は小法廷で猿払事件判決を実質的に修正する判決を下した。社会保険庁に勤める年金審査官が、しんぶん赤旗号外を配布したことを理由に起訴された。一審有罪、二審無罪、最高裁は無罪。その理由をこう述べる。

「本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識しえる態様で行われたものではないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとは言えない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定(人事院規則のこと)の構成要件に該当しないというべきである。」

⑤判決の評価

この判決は小法廷で、つまり猿払事件判決を変更することなく下された。が、猿払事件では、公務員という身分でもってなされた政治的行為は、抽象的であっても政治的中立性を損なう恐れがあり許されない、と判決した。しかし、この判決では、具体的に行為の態様を検討し、それが実質的に政治的中立性を損なう恐れがないときには、法令に違反しない、と判決した。猿払事件判決はそのままでは維持できない、と判断したという意味で、一歩前進と評価できる。ただし、斜体字の言葉は、組合活動の一環としてなされる政治的行為はこの判決でも禁止されるという意味であり、団結権・団体行動権を保障した憲法に忠実な判決とは言えない。

➅強まる逆流

このように裁判所の流れは、公務を離れた場での公務員の政治活動の自由を広げる方向にある。が、18歳選挙権施行を機に、「佐々木事件」に見られるように公立高校の教師に対する逆流が強まっている。教育公務員特例法を改正して罰則規定を設ける動きもある。このような政治的潮流に対して、どのように対抗していくべきだろうか。

  1. 表現の自由や政治的活動の自由がどれだけ保障されるかということは、自由で平等な市民社会をどうやって作っていくか、という私たち自身の問題である。公務員や教師だけの問題ではない。一の規制を許せば、二、三と自由を奪われる。
  2. 今かけられている圧力に対して、保身からであれ賢明さからであれ、当事者である教師や組合が声を上げず、権力を内面化して受け入れるなら、それは教育の世界だけではなく社会全体の不自由化に手を貸すことになるだろう。
  3. 当事者である教師と生徒、そしてこれまた当事者であるはずの市民が、どれだけ協働を組めるか、協働の場を作れるかが問われる。
 (以上)

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◆8月6日「標的の村」上映会を振り返って

8/22 三好康昭

(1)参加者数

1月16日上映の「戦場ぬ止み」の来場者数は約180人で、今回の「標的の村」は135人の来場者でした。45名減りました。チケット購入者数で見てみても、「戦場…」が240人で今回は185人。55名の減少です。減った原因は何でしょうか。同じ三上智恵監督の反基地闘争を描いた作品で、いわば≪二番煎じ≫の感があったせいでしょうか。それとも、参議院選挙で野党勢力が期待したほど伸びず、気勢が上がらなかったためでしょうか。真相はわかりません。ただ、上映に取り組んだ組織の違いが参加者数に影響を及ぼした可能性はあります。「戦場…」の場合は、「九条を守る伊東連絡会」を構成する団体が実行委員会を組織しました。平和委員会や年金者組合といった団体は上映会の担い手でした。今回は、市民ネットワークが単独で主催し、上記団体はチケットの販売に協力する関係でした。この違いが販売に取り組む姿勢に差をもたらした可能性があります。 下のチケット販売数の内訳表を比較すると、「連絡会」を構成する団体の販売数が概して減っていることがわかります。上映会の実行組織の違いがチケット販売数(と来場者数)の減少をもたらした、という仮説を裏付ける数値かもしれません。ただ、これはあくまで仮説で、実情はそれぞれの団体・個人によって様々でしょう。               【チケット販売数の内訳】

戦場ぬ止み 標的の村
平和委員会   10 枚  15枚
共産党    33   20
新日本婦人の会    35     16
年金者組合    16     15
1000人委員会     5      0
九条の会    13      6
伊東市職員労組    10    11
アンチAB→市民ネット    27    34
平田さん    13     5
加藤さん    18    11
佐藤さん(+基地)     7    12
重岡さん    10 (共産党へ算入)
書店     3      3
民商      3
当日券    40    34
合      240  185

上の表から読み取れることがもう一つあります。当日券を買って入場した人が前回に近い数でいたことです。前売券を買わず当日券を買ったのはどういう人たちでしょうか。前売券を買わなかった人というのは、つまり右の表に掲げた団体・個人と日常的な接触の無い人たちではないかと推測されます。「伊豆新聞」を見た下田の人から問い合わせがありました。「市民ネットワーク情報」で知った人や東部MLで情報を得て参加した人もいたようです。私(三好)がチケットを売った人の中にも「ネットワーク情報」を通じて上映会を知った人が何人もいました。個人・団体による直接のつながりの他に、宣伝媒体を通じた不定形なつながりから参加にいたる経路ができつつあるのかもしれません。

(2)新しいつながり

 「戦場…」に比べて、若い人や見慣れない人の参加が多かったような気がします。受付で名前を書いてもらわなかったので正確なことは言えませんが、135人のうち20人を超える人たちが「戦場…」では見なかったのではないかと思います。その中には、三島・沼津から来た永島香さんたちのグループがありました。松崎町から来た西原さんたちがいました。佐藤龍彦さんのつながりで来た若い人たちもいました。

今回の上映会の目的の一つに「市民の横へのつながりを広めるとともに、世代間をつなぐ動きを作っていく」ことをかかげました。横への広がりに関しては、伊東の外へと運動が広がっている兆候があります。また、世代間をつなぐ動きとしては、「沖レポ」の取り組みから続く若い人たちとの協働の芽が生まれつつある、と言っていいように思います。これをどう育てていくかが課題となります。

(3)上映会の取り組み

 「標的の村」上映は佐藤さんたち「基地に入り隊」人たちの沖縄訪問がきっかけでした。本来なら6/26の「沖レポ」に組み込むべきところ、それができなかったので後編を別建のイベントとして実施した、という経緯があります。当然、上映会を構成するにあたって、「沖レポ」との連続性を意識しました。蓑田さんが開会のあいさつをし上映のいきさつを語ったこと、杉山さんと泉さんがカンパ箱を持ってカンパのお願いをしたこと、「沖レポ」に引き続いて勝又姉妹が受付を担当したこと、などにそれが現われています。また、現地で「基地に入り隊」人たちを案内された北上田さんが、「高江の今」をDVDにして送ってくれました。ここにも「沖レポ」との連続性が現われています。それだけでなく、DVDは「標的の村」のその後を来場者に知ってもらう上でまたとない資料となりました。加藤さんが発案し、佐藤さんを煩わらせましたが、映画に「現在性」を付与した好企画でした。北上田さんの好意と労力に感謝・感謝です。

このように、今回の上映会は1月の「戦場ぬ止み」を受けて、それをさらに発展させた取り組みでした。チケットの販売数は前回を下回りましたが、上映会づくりの面では、新しい力が生まれました。峠の向こうの人たちとの交流が出来たこと、蓑田さんなど若手がイベントにかかわったこと―これらは「標的の村」上映会が生み出した成果でした。

(4)その他

映写に当たって、勝俣義人さんに献身的な骨折りをいただきました。川合まゆみさんにはいつもながら司会の労をとっていただきました。感謝です。

・竹下泉さんに「ヤンバルからの伝言」を出張販売してもらいました。

・「保養ステイ」に参加する中で、チケットを6枚販売しました。他団体と協働することが今後ますます必要になるのではないかと思います。

(以上)

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◆伊豆新聞への「新聞投稿原稿、不掲載の経緯」と東京新聞社説の「戦争と新聞」 

                      2016.8.14 大久保伸子

当サイト「オピニオン」欄で、伊豆新聞への「新聞投稿原稿、不掲載の経緯」を読んで、伊豆新聞のような地方紙にも自主規制と萎縮が始まっているのかと、失望と不安を感じました。木原みのる議員の発言に関する事実関係を問題にしているようですが、それは新聞記者がその気になって調べれば幾らでも調べることができます。投稿掲載拒否は、事実関係を問題にするふりをしながら、「危ないことはしたくない」という保身のための対応だと思いました

 それに対し、終戦直前に掲載された「日本は必ず敗(ま)ける」という評論を巡る中日新聞編集部の腰の据わりようは見事です。19455月のドイツ降伏後、富塚清東大教授が書いた評論です。「一刻も早く戦争を終結させ、日本と日本民族の存続を図らなければならない」との論旨で、編集部員は「こんな原稿を載せたら部長は銃殺、新聞は発行停 止になる」と抵抗しました。しかし編集部長は「俺が一切の責任を取る。俺が銃殺になれば済むことだ」と一喝、原稿は印刷工場に回された、ということです。この記事を見て、ジャーナリストの使命と心意気を胸に刻んで欲しいものだと思いました。 

★週のはじめに考える 戦争と新聞(東京新聞 2016814日朝刊 社説)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016081402000149.html

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◆新聞投稿原稿、不掲載の経緯

(1)新聞社から原稿訂正の申し入れと質問 (8/8付け)

寄稿の第3回、三好康昭様の原稿を読ませていただきました。

いくつか疑問点があるので、質問させていただきます。

まず、「偏向教育」について自民党がホームページで「密告」を募っていたことです。そういう事実があったことは、新聞報道にもありましたが、「偏向」の例示と、木原議員(木原稔衆院議員?)の言葉は、筆者が直接、取材や見聞きしたものでしょうか?

私どもにはその言葉が正しいかどうか、確認のしようがありませんので、その点を明らかにしていただきたいと思います。

次に「偏向教育」そのものについてですが、筆者は偏向教育の是非については何も触れず、「政権与党が自由な発言を封じていることが問題」と断じています。これは自らの主張を世に問う姿勢としてどうなのでしょうか?

また、憲法改正の国民投票が行われる局面については、考え方の飛躍があるように思えますが、いかがでしょうか?

弊社は比較的保守的な新聞社ですが、革新的考えをお持ちの方々の意見も分け隔てなく掲載してまいりました。むしろ保守的な方々の意見を載せることの方が少ないくらいだと思います。

しかしながら、今回のご意見は、そのまま掲載するのは躊躇を禁じえません。ぜひ内容を今一度ご検討いただき、原稿に手を加えていただけたらと思います。

伊豆新聞本社編集局 近田 毅

株式会社 伊豆新聞

 

(2)伊豆新聞社からの質問に対する回答 (8/9付け)

伊豆新聞社からの申し入れで、原稿を変える余地はないか、という件です。変える余地がある言葉が一つあります。私の原稿の4行目…適切な「指導」を求めるそうだ適切な「対応」を求めるそうだ

この一点のみで他の変更要請はお断りします。その結果、紙面に掲載できないというなら、それで結構です。

近田氏からいくつか質問が寄せられています。その点について答えます。

・木原議員というのはお尋ねの通り、木原稔衆議院議員のことです。

・自民党のHPに「子どもを戦場に送るな」とか、「安保法関連法は廃止すべきだ」と主張する教師を対象に、「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」述べたかを明らかにして投稿を求めたことは、公知の事実です。

・自民党の文教科学部会長である木原議員が、情報を文科省に報告し適切な対応を求める考えであることは、例えば朝日新聞が7月20日に報じています。

・同じく警察に情報を提供することを、8月2日紙面が報じています。

・近田氏は、筆者つまり私が「偏向教育」の是非について何も触れていない、と言っている。しかし、偏向教育の是非が問題ではない。偏向教育は良いことだ、などと言う人はどこにもいない。問題は、何をもって偏向と言うのか、また、誰がそう判断するのか、ということだ。たとえば、自民党のHPでは「安保法関連法は廃止すべきだ」と主張する教師を密告するように奨励しているが、「安保関連法に賛成する」教師を密告せよ、とは言っていない。つまり、政権党の主張に反対する意見が「偏向」であって、賛成する意見は「偏向」ではない。こうした「偏った」判断のもとに、政権党が密告の脅しで自党と異なる意見を封じようとしたことが、ここでの問題の核心だ。私は偏向教育の是非を世に問うためにこの文章を書いたわけではない。

・憲法改正の国民投票を論じた箇所で、論理の飛躍があると思われるのは、読み手の自由です。書き手である私は、そのように考えている、と言うしかありません。

以上が質問への回答です。 三好康昭

(3)その後

私(三好)の回答を受けて、伊豆新聞社は最終的に掲載不可とした。その理由を―電話を取り次いだ人は―「朝日新聞が報じているからといって、それが事実かどうかわからないから」と言ったそうだ。伊豆新聞社が報じていることについても、この人は同じことを言うだろうか。

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「権力と自由」―新聞投稿原稿-

伊東市川奈在住 三好康昭

参議院議員選挙を前にして、自民党のHPに「偏向教育」を行う教師を密告する欄が設けられた。「偏向」の例として、「子どもたちを戦場に送るな」とか、「安保関連法は廃止にすべきだ」と主張する教師が挙げられた。この欄を開いた木原議員によると、たくさんの通報が寄せられ、その一部は文科省に報告し適切な「指導」を求めるそうだ。

18歳選挙権が施行され、一部の高校生は一票を行使できるようになった。新有権者に影響力がある教師の言動に自民党が神経をとがらせ、監視の目をひからせていることをアピールする狙いがあった。事実、知人で、密告を恐れ外部の集会に参加することをためらう教師がいた。威嚇効果はあったようだ。なぜか。自民党が政権与党であるからだ。文科省は「自民党文教局」だと揶揄されるくらい、政権党の意向を強く受ける。木原議員は文科省に善処を求めるだけでなく、一部の情報は警察にも上げると言っている。「安保法制」に反対することが政治的中立に反するかどうかが問題ではない。政権与党が反対意見を権力的手段で脅し、自由な発言を封じることが問題なのだ。

選挙戦のように対立が鮮明となる局面(政争)では、相手陣営にダメージを与えるネガティブキャンペーンだけでなく、権力をかさにきた攻撃もし烈となる。憲法改正が発議され、国民投票に掛けられるときには、政権与党はあらゆる権力手段を動員して、反対陣営の活動を封じようとするだろう。対外戦争ともなれば、異論を唱える者は「非国民」と罵倒され、言論の自由はなくなる。軍事化が進むほどに人権は縮減される。

「異見」に耳を傾け自由な議論が展開されることが民主的社会の存立条件だ。「異論」を封じる非寛容な勢力に対して、心の中で不満を抱きつつ外に向けて何らの抗議をすることがないならば、結局その内心さえもが、自由ではなくなるだろう。

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◆FoE Japanの満田夏花さんから、以下のメールが届きました。拡散します。

みなさま(重複失礼します。拡散歓迎です) 

FoE Japanの満田です。

ご存知のとおり、日本政府は全国から500人以上の機動隊を動員し、必死で反対を続ける住民・支援者を暴力的に排除して、高江の米軍ヘリパッド(実際はオスプレイパッド)建設を強行しています。85日以降には、N1裏手にある住民のテントも撤去の危機が迫っています。反対を続ける住民たちは、全国からの結集を呼びかけています。可能な方は高江へ、または、国際的なメディアへの取材を呼びかけていただければ幸いです。

こうした中、私たちは、国内外の声を可視化するため、高江ヘリパッド建設中止を求める緊急声明を発出しようとしています。多くの団体・個人の共同声明としていきたいと思います。ぜひぜひ、みなさまも賛同に加わってください。

http://www.foejapan.org/aid/takae/160730.html

 緊急声明に個人・団体の賛同を募集しています。

第一次締め切りは201683日朝9時。賛同はこちらのフォームから。

個人賛同)https://pro.form-mailer.jp/fms/e5d35147104620

団体賛同)https://pro.form-mailer.jp/fms/81013f76104628

英語版>http://www.foejapan.org/en/aid/160730.html

以下、声明の本文です。 

緊急共同声明 生物多様性の宝庫、やんばるの森と住民の生活を守るために行動を!

高江ヘリパッド建設中止を! 

「やんばるの森」は、沖縄島北部の国頭山地に広がる亜熱帯の森。ヤンバルクイナをはじめ、地球上でこの森や琉球列島にのみ生息し独自に進化した固有種が見られ、特有の生態系が形成されています。また多くの絶滅危惧種を含む希少種や固有種が生息しており、世界的な生物多様性保全の上でも重要な地域とされています。 

その価値が認められ、現在、世界自然遺産登録に向けけての取り組みが進められています(注1)。東村高江は人口150人ほどの小さな集落。自然豊かな環境で住民は平和に暮らしてきました。住民たちは、やんばるの森を「神々のすむ森」として畏敬し、守ってきました。

しかし、集落を取り囲むように、6か所の米軍オスプレイ用離着陸帯が造成されようとしています。住民の強い反対にも関わらず、すでに2つは出来てしまい、耐えがたい騒音をまき散らしてオスプレイが昼も夜も飛び続けています。今年7月になって隣接する国頭村安波の4か所を造成するために、政府は日本中から500人もの機動隊を派遣し、座り込みの抗議行動を非暴力で行う住民と支援者を暴力的に排除しました。この結果、首を絞められた女性、ろっ骨を折られた男性など、3人が救急搬送されました(注2)。

また、沖縄防衛局は市民のテントや全国からの支援物資を持ち去りました。この行為を含み、日本政府の今回の強行手段は違法性が高いものであると複数の弁護士が指摘しています(注3)。

日本の本土のメディアは、ほとんどこの状況を報じません。(→”信じがたいことに”と“政府からの圧力のためか”は削除)

私たちは、日米両政府に訴えます。このように、人権を踏みにじり、かけがえのない自然と人々の暮らしを壊す高江のヘリパッド建設の強行を直ちにやめてください。

私たちはまた、日本・世界のメディアに訴えます。この信じられないような沖縄県東村・国頭村の状況を取材し、真実を報道してください。

私たちは、日本および世界中の心ある市民に訴えます。生物多様性の宝庫であるやんばるの森を守るため、必死で抵抗を続ける人たちのために、声をあげ、行動をおこしてください。 

注1)ただし、日本政府による、やんばるの世界自然遺産推薦候補地は、比較的開発が進んだ国頭山地西側だけで、良好な自然が残されている東側の米軍北部訓練場は除外されている。

注2)複数の住民・支援者の証言および多くの映像資料による。主要な報道は以下のとおり。

・琉球朝日放送)高江で強制排除始まる 2016722日 放送

http://www.qab.co.jp/news/2016072281990.html

RBC THE NEWS「東村高江ヘリパッド工事再開」2016722日放送

https://youtu.be/rxQq3u_DN2Y

・沖縄タイムス「<米軍ヘリパッド>工事強行、3人搬送 警官500人で市民排除」

   2016723 16:50

https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=179701

・琉球新報「国が高江工事を強行 機動隊が市民排除 10時間超 県道封鎖」

   2016723 05:04

http://ryukyushimpo.jp/movie/entry-321711.html

注2)指摘されている違法行為は、①県道にもかかわらず、県側の許可を取らずに金網のフェンスを張った、②県道にもかかわらず、明確な理由なしに封鎖し、検問を行ったこと、③住民側のテントおよび支援物資を持ち去ったこと、④N1に至る道を営林署への事前協議なしに立木の伐採を行った疑いがあること――などである。

 

呼びかけ団体(2016730日時点):

国際環境NGO FoE Japan

美ら海にもやんばるにも基地はいらない市民の会

辺野古リレー 辺野古のたたかいを全国へ

沖縄環境ネットワーク

沖縄のための日米市民ネットワーク(JUCON

ジュゴン保護キャンペーンセンター

ラムサール・ネットワーク日本

国際環境NGO グリーンピース・ジャパン

APLA

水源連

ピース・ニュース

公共事業改革市民会議

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◆2016年7月参議院議員選挙を終えて

2016年7月参議院議員選挙を終えて

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◆参議院選-争点と比例区の投票の仕方ー (原発報道あれこれ-369 より)

参院選と改憲-1

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◆緊急事態条項の過去と現在

平和委員会・城ケ崎サークル例会            

                           16.6.8 三好康昭

(1)ヒットラーの政権掌握前後の動き

  • 1929年10/24…ウォール街の株価、大暴落世界恐慌
  • 1932年 7/31…議会選挙で、ナチス党が第一党に躍進。ただし、1/3の議席にとどまる。
  • 19 32年11月…議会選挙。ナチス党、議席を減らす。共産党が躍進。
  • 19 33年 1/30…ヒットラー、ヒンデンブルク大統領によって首相に指名される。この時 の、ナチス党の議席は1/3未満。ヒットラーは直ちに議会を解散する。
  • 1933年 2/ 4…大統領、「ドイツ国民を防衛するための緊急令」を発令。集会と言論の自由を規制する。政権批判を禁じる。
  • 1933年 2/27…国会議事堂炎上。オランダ人共産党員ルッベら逮捕される。      同日…大統領、非常事態宣言を発する。「国民と国家を防衛するための緊急令」共産党員や野党指導者を令状なしで逮捕。基本権を完全に停止。
  • 1933年 3/ 5…国会選挙。ナチ党=288/647、国家人民党=52/647。両党連立で340/647となり過半数に達した。
  • 1933年 3/27…授権法を審議。成立の条件は647人の2/3(432人)以上の出席で、出席議員の2/3以上の賛成。当日は、538名が出席し、賛成441名、反対94名(社会民主党員)で成立した。

 (2)大統領緊急令の発令根拠 

ワイマール憲法48条 第1項 もしも、各ラントが、ライヒ憲法またはライヒ法律によって課せられた義務を履行しない場合には、ライヒ大統領は、武力を用いて各ラントにその義務の履行を強制できる。
                                 第2項 もしも、ドイツライヒにおいて、公共の安全と秩序がいちじるしくかく乱されるかあるいは脅かされた場合は、ライヒ大統領は、公共の安全と秩序を回復するために必要な措置を講じ、必要とあれば武力を用いて干渉できる。この目的のために、ライヒ大統領は、第114条(個人の自由の不可侵権)、第115条(住居不可侵権)、第117条(通信の秘密)、第118条(表現の自由)、第123条(集会の自由)、第124条(結社の自由)と第153条(財産権の保障)に定めた基本的人権の全部あるいは一部を、一時的に停止できる。
                                 第3項 ライヒ大統領は、本条第一項または第二項の権限に基づいてなしたすべての措置については、遅滞なくライヒ議会に報告しなければならない。これらの措置は、ライヒ議会の要求があるときには、その効力を失う。
               第4項 急迫の事情があるばあいには、各ラント政府は、その領域内に於いて第二項に定めのある措置を講じうる。これらの措置は、ライヒ大統領あるいはライ議会の要求があるときには、その効力を失う。
第5項 詳細は、ライヒ法律によって定める。

注1…ドイツは1871年に、ビスマルクによって統一されドイツ帝国(ライヒ)となった。この帝国はプロシアやバイエルンなど多数のラントからなる連邦国家だった。48条第1項は、ライヒの統一を維持するため、大統領がラントの治安維持のため軍の出動を命じうることを定めた。

注2…第2項で、大統領は「公共の安全と秩序回復」のため、基本権の一部を停止できると定めている。憲法学者のC.シュミットはここに列挙されている基本権は例示に過ぎず、大統領は必要ならすべての基本権を停止できる、と主張した。実際に、シュミットの主張通りのことが行われた。

注3…第3項は、議会の承認が得られないときは緊急令は効力を失う、と歯止めをかけている。しかし、大統領は対抗手段として議会解散という伝家の宝刀があった。よって議会のコントロールは空文と化した。

注4…第5項は、緊急令の発動要件など詳細は法律で定める、と規定している。が、最後までこの法律は作られなかった。緊急令の発動を制約する法律はなく、大統領は何にも縛られることなく、法律に代わって緊急の命令や措置をとることが出来た。

(3)ワイマール憲法の命運

ワイマール憲法は第一次大戦に敗北したドイツが、新しい国家づくりの基本を定めるために、1919年8月11日に、ゲーテが活動しシラーが住んだドイツ中部の文化都市=ワイマール市でつくられた。当時にあっては世界一民主的な憲法とうたわれた。カイザー亡き後の共和国を、国民主権に基づいて議会中心に運用する政治を目指した。何よりワイマール憲法の先進性を現わしているのは、社会権が初めて憲法に取り入れられたことである。

曰く、「所有権は義務を伴う」(153条3項)

曰く、「経済生活の秩序は、すべての者に人間たるに値する生活を保障することを目的とする正義の原則に適合しなくてはならない。」(151条1項)

しかし、誕生したばかりのワイマール憲法を育てる土壌はあまりに荒廃していた。カイザーは去っても、その復活を願う王党派=右翼勢力が軍部・官界(司法を含む)を支配していた。その頂点には大戦の英雄=ヒンデンブルクがいた。右翼の対極にいる急進的な共産主義者の勢力も強かった。右も左も議会政治を攻撃した。加えて、分離主義の動きがあった。カトリック系の南部諸邦(ラント)はライヒからの分離・独立を策動した。対外的には、領土の割譲に加え戦勝国から巨額の賠償金を課されて、経済は疲弊した。そこに起きたのが未曽有のインフレーション。国民生活は完全に破たんした。

国家と社会の不安・動揺を種火として反乱と暴動か頻発した。この危機的事態に、ライヒの秩序と統一を辛うじて支えたのが、ライヒ大統領の緊急令(憲法48条)だった。緊急令はいわば憲法秩序を守るために発動された。

1920年代後半の安定期にはいって、緊急令が発動されるケースは少なくなった。しかし、1929年の株価大暴落とそれに続く世界恐慌が事態を一変させた。失業者が街にあふれ、人々は失業の恐怖におびえた。現状に不満と不安を持つ人々は、ナチスの単純明快なスローガンに魅かれた。「敵か味方か」、「ユダヤ人とボリシェヴィキの撲滅」、「ベルサイユ条約破棄」…。他方ではまた、もう一つの世界観政党=共産党も勢力を伸ばした。議会は妥協の術がない二大政党を中核に、多数党が分立し、機能不全に陥った。内閣は議会に依拠することが出来ず、大統領の緊急令に頼って政治を動かした。これを「大統領内閣」という。緊急令は”緊急時”に限定されずに、日常的に発動された。議会は無視され、議会に対する国民の信頼は失墜した。ここでは、憲法48条は憲法秩序を守るためではなく、それを葬るために使われた。そして、ヒットラーがそれを仕上げた。

(4)自民党憲法改正草案の緊急事態条項

草案98 

第1項   内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会 秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他法律で定める緊急事態において、特に必要がある  とみとめるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することが出来る。

第2項  緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前または事後において国会の承認を得なければならない。

第3項と第4項は省略

99

 第1項     緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は  法律と同一の効力を有する政令を制定することが出来るほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることが出来る。

第2項   前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。

第3項   緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態に於いて国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公けの機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

第4項   緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及び選挙期日の特例を設けることが出来る。

〔特徴〕

①緊急事態宣言を発するのは総理大臣である(98条第1項)。宣言の効果として、総理大臣は財政支出の権限を持つ(99条第1項)。緊急事態条項は、緊急を名として、行政府が立法権をも一時的に掌握するものだが、改正草案は加えて総理大臣への権限の集中をはかる。総理の専権事項を拡大することが改正草案のもう一つの特徴である。

②緊急事態条項の各項は、詳細を法律に委ねる。具体的な発動要件とその効果は法律で決める。だから、「総理大臣が何でもできるようになるわけではない」とQ&Aは説明している。しかし、逆にいえば、法律でいかようにも決めうるということで、法律の憲法適合性は問われない。

③緊急時に、国民の人権の全部または一部が制約されることの根拠規定が与えられた。Q&Aは言う、「国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのために必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得る」。

④国会が開かれているときでも内閣に立法権が移る。緊急事態を定める法律は、立法権を内閣に委ねる授権法に他ならない。

➄草案の99条第4項は、緊急事態が宣言されたときは衆議院が解散されない、と定める。この規定を設ける合理的な理由があるとは思えない。が、安倍政権はこの条項を突破口に改憲を図ろうとしている。野党議員の賛成も得られるだろう、と踏んでいるのである。

〔批判〕

①ドライヤー教授…議会や裁判所のチェックが入っていない。

教授は、ワイマール憲法の歴史に照らして、「国会の承認」が有効な歯止めにならないと考えている。もし、国会が不承認の動きにでれば、総理大臣は議会の解散で脅しをかける。

②長谷部教授…日本の裁判所は「統治行為論」を取っているので、司法の統制が効かない。「緊急事態条項を入れるのであれば同時に、統治行為論の立場はもうとらないと決めなければならないでしょう。」(朝日、16.5.25(夕))

③永井弁護士(永井幸寿「憲法に緊急事態条項は必要か」)…憲法に規定する必要性がない。大地震等の災害に際して、中央に権限を集中しても効果がない。大災害や有事に備えてすでに法律が整備されている。

④三好説(?)

ⅰ)人権を権力から守るための条項を定める憲法において、人権を権力が制限できる規定を設けるのは憲法の自己矛盾だと思う。小林節教授は、憲法の例外は憲法で定めるべきだというが、そのことによって、憲法そのものがむしばまれる。法の下の平等と天皇制の矛盾がその例だ。

ⅱ)法律の合憲性をチェックできなくなる。自民党の改正草案は長谷部教授が言うように、発動要件が甘い。「どういう場合に発動できるか法律に丸投げしている。」その通りだが、しかし憲法の条文で、こと細かく要件と効果を規定することは不可能で、どうしても抽象的な規定にとどまる。それゆえ、出来上がった法律が憲法に適合するかどうかを判断することは難しい。一つには統治行為論があり、二つには憲法の抽象性がある。私は、この点が緊急事態条項を憲法に書き込むことの一番の問題だと思っている。憲法が法律の違憲性判断の基準とならず、かえって法律の合憲性にお墨付きを与える。憲法に根拠規定があることによって、法律で人権を制約できる規定を設けることができる。さらに言えば、ワイマール憲法48条のように、ついにこのような法律が作られなかったため、大統領の独裁に何の歯止めがかからなかった先例がある。法律がないことを理由に、憲法を根拠に独裁が生まれることもありえないことではない。

(5)補足的に

①明治憲法第11条の「統帥権の独立」規定の歴史的な役割。

明治憲法では、軍隊の指揮命令権は天皇の大権事項であり、議会はもとより内閣でさえ口出しできなかった。海軍軍令部長、陸軍参謀総長が天皇の名前でこの権限を行使した。軍ファシズムをもたらした憲法上の根拠がこれである。伊藤や山縣が健在で内閣を率いていた時には、軍部が独走することはなかった。彼らがいなくなって、軍部へのにらみがきかなくなると、この規定の危険性が露わになった。昭和5年、ロンドン軍縮条約の調印をめぐって、「憲政の神様」とうたわれた犬養毅は、「統帥権干犯」を理由に浜口民政党内閣を攻撃した。政党政治=議会政治の自殺行為だったが、自殺を幇助したのが明治憲法11条だった。

このように、憲法の規定がただそれだけで、政治的・社会的な力関係に変動をもたらすわけではない。が、政治的・社会的状況の如何によって、憲法の規定が特定の政治的勢力の興廃に決定的な役割を果たす。緊急事態条項を憲法に規定するかどうかを判断する際には、このような危険性を十分認識しなければならない。

②治安維持法の改正は緊急勅令によってなされた。

昭和3年、治安維持法を改正して最高刑を死刑・無期懲役とする案を議会に諮ったが、美濃部達吉らの反対論があって、審議未了・廃案となった。ところが、議会閉会後、政府(田中政友会内閣)は天皇大権である緊急勅令を使って、治安維持法を改正した。翌年、議会はこの勅令を事後承諾した。

(以上)

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◆アンチAB会、5月例会(16、5/22)のレポート「TPPを考える」へリンク

赤字は当日説明した箇所、緑字は文献からの引用。

TPPを考える

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◆伊東市の憲法集会を終えて

16.5.12   三好康昭

(1)開催までの経緯

憲法記念日に伊東で集会が開けないだろうか、と考えたのは高田講演会の事後処理が終わった4月15日でした。どなたか声を上げる人はいませんか、とメールで打診したのが16日。呼びかけ人になることを決めたのが18日。すぐに、加藤さん、重岡さんが賛成してくれて、この日の16時から梶野さんが加わって打ち合わせ会を開きました。どういうスタイルで集会を持つかを話し合いました。

  1. …重岡さんは市内の中心スポットを街宣車で回ってマイクから訴える方法を提案。
  2. …伊藤さんは電話で、午前中に地域でスタンディングなどの街頭活動をやって午後有志が集まる方式を提案。
  3. …三好は、午前中行動できるところはやって、午後のトーク集会をメインにする。トークのテーマとして「日本国憲法 私の好きな言葉」を提案した。

結局、c案で行くことにし、その内容や役割分担を4月22日に協議しました。

22日の打ち合わせ会では、参加者の目標数を50人としました。私のメモには「20人か」とあります。当日まで日がないこと、連休中で他の用事も入ること、などから参加者数は多くは望めない、というのが共通の認識だったように思います。「ネットワーク情報」で告知するほか、メーデーでビラを配布し、赤旗日曜版に折り込んで宣伝をしてもらうことになりました。短い時間の中でやれることはやりました。

トークのテーマを「日本国憲法 私の好きな言葉」としたのは、三島のママさんグループ「Tea+α」が同名の冊子を作っていたことがヒントになりました。この冊子をコピーして来場者に配布することを思いつき、「Tea+α」に電話連絡したところ、30部送ってくれました。ありがたかったです。

 (2)集会当日

中川洋三郎さんの歌で始まりしまた。司会はOさん。途中の出入りがありましたが、参加者は40人でした。(伊豆新聞が30人と報じたのは誤り) 予想した範囲の数でした。安部川てつ子さんがトークの一番バッター。当初は、憲法に引き付けて思いを語ってもらうつもりでしたが、なかなかそれも難しく、フリートークにしました。梶野さんの「2000万署名」報告を含めると、全部で9人の方がマイクを持って訴えました。その中から加藤さんの話を紹介します。

この琉球新報の記事を見てください。県民が憲法に保障された権利を生かし、工事を止めたのです。3日前には海上に張られたロープも撤去。ちょうどその時期、伊東の青壮年4名が沖縄の基地闘争の現場を訪れます。1月の沖縄映画会での収益やカンパのおかげです。伊東でも小さな力の集合が若者の行動につながりました。

 今私の手にあるのは『新しい憲法の話』という昭和23年刊の文部省の冊子。70年近く読まれてボロボロですが中身は新しいままです。「オール沖縄」に学び、今度の参議院選挙で改憲をストップさせ、「侵すことのできない永遠の権利」として未来に受け継いでいきましょう。

最後は佐藤龍彦さんの音頭によるコール。やはりこれが一番盛り上がりました。伊東で初めての(?)憲法集会。盛況とまではいきませんでしたが、無事に終えることが出来ました。来年どうするかは別途検討することになります。

(3)これからの課題―市民ネットと市民運動-

今度の憲法集会は「市民ネットワーク」が主催したものではありません。が、呼びかけ人の4人は市民ネット事務局メンバーです。実質的には市民ネット主催と言ってもいいでしょう。ただし、参加者の内訳を見ると、必ずしも「市民ネット」賛同者は多くはなかったようです。それはともかく、これから市民運動(政治運動を含めて)を進めていくうえで、「市民ネットワーク」はどんな立ち位置にあるかを整理しておきたいと思います。

①市民ネットワークは緩やかなつながりを基本にしています。義務的な行動は何も要請されません。イベントの案内は送っても、参加要請はしません。この基本線は「墨守」してゆきたいです。他方で、人と人をつなぐ有機的関係作りを目指すことは大事だし、必要なことだろう、と思っています。メールや郵便を介してのつながりだけでなく、できれば直接お会いして顔と表情を知りたい。関係が密になることを嫌う人もいるかもしれませんが、距離を保ちつつ、パーソナルな関係を作っていきたいと考えています。たとえば、ミニ学習会を開いたり、あるいは個別に伺って話を聞いたりしながら。今後、こうした機会を作っていきたいと思っています。

②「市民ネットワーク」は情報媒体となることを主とし、直接の運動や行動は提起しません。実際には難しいポジション取りですが、現在のところ、私は次のような押さえをしています。

  • 講演会や学習会、映画上映会などは「市民ネット」主催で取り組む。
  • 屋外集会や署名活動など、直接の行動や運動は有志として提起する。
  • 選挙については、「市民ネットとして」特定の候補者・政党を支持・推薦はしない。

問題ごとに、その都度事務局メンバーで協議しながら決めていきます。

③他団体・政党との協働

「市民ネット」主催であれ、有志企画であれ、積極的に他団体・政党に協働を呼び掛け、また他団体からの呼びかけに応えていきたいと思います。その際は、規約6条にあるように「相互の主体性を尊重」することが基本となります。

(4)関係の広がり

憲法集会を実施するなかで、三島のママさんグループ「Tea+α」とのつながりが出来ました。「Tea+α」が制作した小冊子の配布許可を求めたところ、先方がとても喜んで30部送ってくれました。当地で、ママさんグループの活動を紹介することに役立ちました。お礼かたがた「ネットワーク情報No4」を送ったところ、「引き続いて送ってください」との返信。「これ幸い!」とグルーブのお一人・Nさんに賛同者になってもらいました。集会が、三島方面の市民団体との継続的な関係作りの端緒となったことを喜びたいです。

個人的なつながりも生まれました。東京と伊豆高原の住まいを往復しているKさんが、たぶん赤旗日曜版の折り込みを見て、集会に参加してくれました。Kさんは東京で組合の仲間と反原発活動をしているそうです。さっそく安部川さんを紹介しました。「市民ネット」の賛同者にもなっていただきました。お二人を加えて、現在「市民ネット」の賛同者は94名です。少しずつ賛同者が増えています。それだけ関係が広がっている証です。

以上、伊東で初めて開いた憲法集会を振り返って、課題と成果を書いてみました。重岡さんの感想と同様に、私も「やってよかった」と思っています。来年、もしやるとしたら、早くから実行委員会を立ち上げて、組織的に取り組むことが必要でしょう。

(以上)

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一碧湖で大規模宅地開発 雑木林が伐採され景観が台無しに!!

佐藤房子

今、一碧湖神社の上段で約4万平米の雑木林を伐採して宅地造成工事が行われようとしています(地図参照、黒い線で囲まれた範囲が開発区域)。

一碧湖は周囲の雑木林と一体となって、その美しい景観を保っていますが、この造成工事が行われると一碧湖神社の上段約200メートルにわたる雑木林がなくなり、そこに雑木に替わって分譲地の家並みが出現することになります。これではとても「伊豆の瞳」とは言えないでしょう。また、伊豆ジオパークの世界認定にも支障がでかねません。

ここは、与謝野鉄幹・晶子の歌碑がある対岸の芝生広場から眺めると、十二連島の緑と朱の鳥居とが相まって一碧湖でもとりわけ美しい景観を誇る一角です。また、自生するチョウジソウの貴重な群生地でもあり、開発の影響が危惧されます。

なんとかこの開発をやめさせることができないかと市役所に問い合わせたところ、すでに開発許可が下りているということでした。もともとこの開発は平成4年にマンション建設を目的に申請されたものが頓挫し、平成27年に今度は宅地分譲開発として申請されたということですが、両者の計画にズレがあるので、その調整が済むまで工事は中断させるということでした。

しかし、伊東市の「土地利用事業等に関する指導要綱」によれば、「市長は、事業者が・・・工事に着手しないまま2年を経過したとき及び5年を経過して工事が完了しないときは、その承認を取り消すことができる」(第9条)とあるので、当然承認は取り消されているはずで、両者の計画を突き合わせる必要があるとは思えず、この点疑問が残るところです。

開発を中止できないのであれば、せめて地図の黒い線で囲まれた開発区域のうち赤で着色した直接湖と隣接するエリアの雑木の伐採はしないよう市は行政指導すべきでしょう。一碧湖は伊東市の大切な観光資源であり、その保全にかなりの税金を投入しているのですから。なお、この着色部分は雑木がまばらなので、苗木ではなく十分生長した山桜などを100本ほど植え、今後建てられる家並みが対岸から見えないようにする配慮が必要です。

事業者の方もこの開発計画を再度考え直してはいかがでしょうか。少子高齢化による人口減少にともない全国の7軒に1軒は空き家というのが現状です。とりわけ伊豆高原の別荘分譲地は高齢者が多く、今後空き家が急増するのは確実です。4万平米に及ぶ開発で売れるのはいったい何軒でしょうか・・・。また、開発により一碧湖の赤牛の怒りを買わないともかぎりません。

一碧湖の景観を守りたいと思う方は、伊東市役所(0557-36-0111)の都市計画課にぜひ電話をしてください。多くの市民が反対の声を上げれば、市も無視することはできないはずです。伊東市民である必要はありません。一碧湖は国立公園の中にあるので、全国どこからでも電話をお願いします。また、この呼びかけをぜひシェアして反対の輪を広げてください。


開発区域図

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◆4月3日「高田健さんの講演と交流の集い」を振り返って

2016.4.14    三好康昭

(1)参加者組織について

受付名簿に名前を書いた人は58人、実際に数えた参加人員は66人でした。「戦争法廃止」という硬いテーマで66名の人が集まったというのは-八幡野野コミセンという立地の悪さも考えれば-良く集まったといえるかもしれません。原発や辺野古基地という具体的なイシューではなく、消費税増税等の生活に直結するテーマでもなく、「高田健」というメジャーな名前の講師でもありませんでした。にもかかわらず、これだけの人が集まりました。戦争法の施行だけでなく安倍政権がやろうとしていること全体に、つまり安倍政治そのものに対して危機感を持っている人が、ここ伊東でもかなりの広がりで存在しているということを裏付ける数字ではないでしょうか。

参加者の内訳で見ると、市民ネット賛同者が33名で、全体の半数を占めました。市民ネットが主催したので「ネットワーク情報」を使って宣伝し、無組織の人たちがたくさん参加してくれました。市民ネットがこういう人たちとつながる媒体となっていることを喜びたいです。ただ、「市民ネット」が運動団体ではないため、働きかけに限界があったことも事実でした。

(2)講演の内容、集会のプログラム

アンケート結果を見ると、高田さんの講演は参加者にとても好評だったことがわかります。「理解しやすかった」、「『「総かがり』に一本化する苦労がわかった」、「2000万署名の意義がわかった」などなど。運動が分裂していては力にならないということが良くわかる話でした。と同時に、一人でも自分にできることをやろう、という提起に励まされたのは私だけではなかったはずです。学者の理論的な話もいいけど、運動家の実践的な話も有意義です。

プログラムの中に当地での活動報告を入れました。中央と地方が連携して運動を進めることが必要であるとの認識に立って、そのための情報交流を意図しました。副題にある「交流の集い」というのは、参加者同士の交流もさることながら、中央と地方との情報交換を念頭に置いたものでした。その狙いがどの程度達成されたかはわかりませんが、高田さんの最後の「まとめ」を読むと、高田さんも地方での運動に確かな手応えを感じたように思われます。反面、現地報告の時間を取ったため、講演及び質疑の時間が制約されることになりました。

(3)これからの運動と「市民ネット」の役割

「戦争法を廃止、九条改悪を阻止するために」これから伊東でどんな活動をしていくことが必要でしょうか。私は講演から二つの運動の課題を導くことが出来ると思います。一つはそれぞれの市民・市民団体が分裂して運動するのではなく、安倍政権を追いつめるという目標に向けて、幅広い共闘=共同行動を組織していくことです。「総がかり行動実行委員会」ができたことの教訓に学んで、1+1を5にも6にもしていかなくてはなりません。選挙が絡むと共闘が困難になるのは経験則ですが、しかし、今度の選挙こそ共闘が必要です。幅広い市民と市民団体が結集できるような基軸が作れないものでしょうか。

二つ目は、個人の自立した活動を広めることです。誰がどんな活動をしているか、どんな工夫をして署名集めをしているかといった情報を広め、一人でもできる行動を励ます。そして、一人できることと、仲間と一緒にやることでより強力になる運動の両方を宣伝・広報しながら、反安倍の動きを広げていきたいものです。

このような運動のために「市民ネットワーク」はどんな役割を果たすことが出来るでしょうか。市民ネットの基本的な立ち位置は情報伝達の媒体となることです。直接に行動を提起するとか、運動やイベントを主催するわけではありません。しかし、例えば、個人の創意ある活動を紹介して、ネット賛同者の共有財産にすることができます。市民団体や政党が主催するイベントを報じて、運動を広める助けをすることも出来ます。時によっては、今回のように集会を主催したり、街頭署名などの行動を呼び掛けることもあり得ます。

市民ネットでつながる関係は、基本的には情報で媒介された関係ですが、イベント等を通して目に見える人的な関係へと発展させることが次のステップとなるかもしれません。

(以上)

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◆電力小売り事業参入社の紹介

安部川てつ子

2016年4月からの電力小売自由化まであと1週間となりました。パワーシフト キャンペーンで紹介している12社に2社追加して14社になりました。その14社を下記に紹介します。

①愛知電力

※新規 4月下旬より申込受付予定、6月より供給開始予定。

②水戸電力

※新規   2月18日より申込受付開始、4月より供給開始。

③泉佐野電力(大阪府泉佐野市)

※新規 4月より自治体施設に供給予定。一般家庭向けは未定。

④太陽ガス(鹿児島県日置市)

※新規 一般家庭向けは6月より予定。

➄みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)

※2/17より家庭向け申込開始(九州電力管内)

➅みんな電力(東京都世田谷区)

※2/26より家庭向け申込開始 2/26より家庭向け申込開始(東京電力管内)

⑦湘南電力(神奈川県平塚市)
※一般家庭向けは10月より予定
⑧Looop(東京都文京区)
※3月11日から一般家庭向け申込受付開始。
➈千葉電力(千葉県八千代市)
※一般家庭向けも検討中。
⑩エナジーグリーン(ネクストエナジー代理店)(東京都新宿区)
※一般家庭向けは2016年秋ごろを予定
⑪うなかみの大地(パルシステム電力)(東京都新宿区)
※組合員対象。2016年秋より予定
⑫生活クラブエナジー(東京都新宿区)
※組合員対象。2016年6月より首都圏1500世帯、10月よりその他地域。
⑬中之条電力(群馬県吾妻郡中之条町)
※一般家庭向けも2016年度中には開始したい。
⑭エヌパワー(愛知県清須市)
※一般家庭向けは準備中、2016年度中もしくは2017年4月。

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◆私の主張-電力自由化に向けて-  

安部川 てつ子

2016年4月から一般家庭や小規模な事業者でも電力会社を選べるようになります。電気料金だけでなく電源構成や温室効果ガス排出や会社のビジョンなどで選ぶことが出来るようになります。

電力の自由化は電気料金が高いか安いかを選ぶものではない。クリーンで安心して暮らせる日本を子孫に残すかという重大な選択なのです。

自然エネルギーを中心にする新しい電力会社(現在12社)も準備中です。ただ、大手電力会社(旧電力会社)に比べて資本力や宣伝力が圧倒的に不足しています。

私たちが自然エネルギーを重視する電力会社を選ぶことは「原発を卒業したい」、「日本にもっと自然エネルギーを」という気持ちを行動に移すことです。

4月からの開始はごく少数で、規模も限られていますが、準備中の会社は早くても秋頃もしくはそれ以降になります。

電力業界は大手バイヤーからは利益を取れず、9電力会社平均で家庭から7割、東京電力に至っては家庭から9割の利益を得ています。いかにして東電以外から電力を買うかが当面の課題です。

電力会社を選ぶために重視するポイント

1.電源構成などの情報開示をしている。

2.自然エネルギーを中心として電源調達する。

3.原子力発電や石炭火力発電は使わない。(常時バックアップ分は除く)

4.地域や市民による自然エネルギーを重視。

5.大手電力会社と資本関係がない。(子会社や主要株主でない)

パワーシフト宣言(自然エネルギー買いたい宣言)に登録して電力 会社の情報を各自入手しましょう。

パワーシフト 検索  http://power-shift.org/